「『友達』」
◆ ◆
「ん? ……おいお前、もしかしてビージか?」
(……なんで見つかンだよ。こうして目立たねーようにしてたってのによ)
――そう思うのはビージ・バディルオン当人だけかもしれない。
いくら体を縮こませようと、その大柄な体躯では目立たない方が難しい。
それでも、見つからないことを祈ってしまうほどに――ビージは彼らのことを意識していた。
「……おう。久しぶりだな、アンシェル」
「やだ、うそ。ホントにビージ君じゃん」
(……ンでアンタまでいるんだよ!)
心の中で盛大に舌打ちながら、目を丸くして驚きを取り繕う。
近寄ってきた精悍で整った顔立ちの男子の横には、垢抜けた茶髪の長髪を揺らす小顔の女子の姿。
その少女も、ビージにとっては顔なじみだ。
「ペザリアじゃねーか。二人とも無事だったか、ホッとしたぜ」
「俺らもびっくりしたよ。お前がこんなとこにいるもんだからよぉ」
「ホントにーっ。ここにいるってことはビージ君もあれ。なんだっけ。プロペラみたいな」
「ばーか。プレジアだよニコラ」
「そうそう、プレジア。それの兵士だってことでしょ? ビージ君も」
「ま、まあそうだ。義勇兵コースに入ったからな」
「へぇー。まあなんだっていいけどよ。あれ、てことはテインツとかチェニクとか、あの辺も一緒じゃねえのかよ」
「や、あいつらは……いねえよ」
「いないの?」
「なんで? プレジアの奴ら、みんな来たんじゃねえの?」
「違げーよ。本来なら俺達学生は、戦場になんか出してもらえねーんだぜ。今回は国の危機だってことで色々あって、特別にここに来てるんだ、俺は」
「とか言ってよぉ。実はビビッて来れなかっただけなんじゃねーのか?」
――――始まった、とビージは頬をひくつかせた。
それを覆い隠すように苦笑いする。
「違げーっつってんだろ。色々あんだよ」
「『眼鏡なくした』とかか?」
「――そういうこと言ってんじゃねーよ」
「ちょっとマティアス、そんなこと言ったらチェニク君かわいそうよぉ」
「いーんだよ、ちょっとくらい強めに言うくらいで。都合が悪くなるとすぐメガネ言い訳にして逃げ出すのはあいつの悪いクセなんだからよ」
「そのへんにしとけって、いつの話してんだよ……つか、共闘決まったな、俺らとお前ら。仲悪りィって言われてるプレジアとアルクスだがよ、いっちょよろしく頼むぜ」
マティアス・アンシェルの放言にも努めて笑顔を保ちつつ、ビージは話題を転換する。
しかし、そんな彼の苦慮などお構いなしにマティアスは続けた。
「『よろしく』って、お前が言うことじゃねーだろビージ。なんだよ、いっちょまえによ。カッケーとでも思ってんのか?」
「そういうことじゃねえって……」
「見栄張んのはよ、やめとけってビージ。お前らはそういう器じゃねえって、もう解ってるはずだろ? ヘヴンゼルに入学できなかった十二年前に、とっくによぉ」
「――――――――今、」
〝ビージ君達じゃん、久しぶりぃ! どう? そっちの学校は〟
〝聞いてやるなよニコラ。滑り止めに受かった気持ちくらい想像できるだろ〟
〝あっ……ごっめーん、ごめんね? 悪気はないんだよ?〟
「今その話関係ねえだろ」
「あん? なんだよ、もしかしてムカついてんのか?」
半笑いで、マティアスが石垣に腰かけているビージの肩に手を置き、顔を覗き込む。




