「軍備再編」
◆ ◆
「連絡があったわ。共闘の手はずが整ったって」
『!』
「やったんだなガイツ、ペトラ……!」
「王女殿下もね」
「魔術師長殿も、だよ。皆が私情を抑えた賜物さ」
パーチェからもたらされた朗報に安堵するアルクスの面々。
アティラスも何かに感じ入るかのように目を閉じている。
教師連中が呼ばれていた理由はこれか。
「ってことは、また戦場に行くんですか? すぐ??」
「なァにビビってんだよマリスタおめーは。見てやがれテロリスト共、今度は俺も大活躍してやんぜ」
「ロハザー。油断」
「落ち着きなさいな二人とも。そう今すぐ出られるワケないでしょ? 具体的な作戦立案はこれからなんだから」
「あ……な、なるほどそっかっ」
『フェイリー。応答を』
「お。噂をすれば連絡だ――」
フェイリーの藍色のローブにちりばめられた金砂が光り、ペトラの声が聞こえる。
かなめの御声の織り込まれた、敵の攻撃に耐えられるローブ……つくづく面白い作りだ。
「こちらフェイリー、話は聞いた。イフィとゼインも傍にいる、指示をくれ」
『フェイリーはプレジア軍の被害状況の確認を。ゼイン、あなたはパーチェ・リコリスとも連携して負傷者の治療を急いで』
「了解」
「了解だよ。ではリコリス先生」
「ええ。行きましょう」
『イフィ、あなたは偵察部隊を招集して学園周辺の再警邏をお願い』
「了解! じゃあね、学生さんたち。ゆっくり休んでおくのよ」
『義勇兵コースの学生達がそこにいるのね? フェイリー』
「ん? ああ、いるぞ。何か指示があるか?」
『いくつか。まず一つに――今から言う教師を軍議室に招集してほしい』
「誰だ?」
『三人よ。アドリー・マーズホーン、サイファス・エルジオ。そしてシャノリア・ディノバーツ』
「解った。――学生達、聞いての通りだ。彼らに今すぐかなめの御声を」
『了解』
「え、えっとどうやって使……」
「うん、何もしなくていいと思うよ。役立たずは」
「なんかその笑顔ムカつくんですけど???」
『他に手の空いてる学生はいる?』
「ああ、いるぞ」
『では、他の学生に――』
――ここで出てきた名前だけは、俺の予想外の人物だった。
『――ビージ・バディルオンを軍議室に招集してほしい』
「ビージ……何だって?」
フェイリーが聞き返す。
つい先日、あんたの前で両膝を着いて俺の拘束に異を唱えた人物なんだが……記憶に残っていないか。
しかし何故だ?
ビージの奴、何かヘヴンゼル学園と関係が――
『ビージ・バディルオン。ガイツ・バルトビア兵士長直々の招集だと伝えてくれ』




