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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

言論弾圧スキルで世界を救ってみた

作者: 流星万華鏡

 俺の名前は石垣(いしがき)文也(ふみや)

 割と何処にでもあるような中小企業で働いていた社会人だ。

 働いている、ではなく働いていた、という過去形である理由は簡単だ。


 どうやら俺は、既にこの世の者では無くなってしまったらしい。


 目の前に居る、シルクで作ったポンチョのようなモノを身に纏った、自称神様を名乗る少女の話を鵜呑みにするのであらば、そういう事らしい。


「貴方に、異世界を救って欲しいのです」


 とは、神様自称の少女の弁である。

 しかしながら、吹けば飛ぶような会社で営業をしていたしがない社会人にそんな事を言われても困る。

 そう少女に伝えた所。


「貴方に一つだけ、世界を救う鍵となる力を与えましょう」


 と言われ、何やら生暖かい光が身体を包み込む。

 自らに与えられたという力の使い方を説明され、それを頭の中で反芻している最中――そこで意識を失った。




 耳に届く喧騒によって目を覚ます。

 目が覚めると、俺は特に何も見当たらない草原の中に横たわっていた。 

 近くには草木しか見当たらず、人の文明らしき姿は何処にも見当たらない。

 行く当てなど、先程から耳に届く音の元位しか思い付かない。

 身体に付いた千切れた草葉を払い、音の発生源へと向かう。



 音の正体は、激しい戦闘音であった。

 元々は金髪であったであろうその長髪にべったりと血を付着させ、額から血を流しながら、白銀の鎧に身を包んだ女性がたたずむ。

 手にした剣は中程で折れており、既に剣としては機能を失いつつあるというのに、尚も剣を構え目の前の脅威と相対する。

 対するは、まるで神話から出てきたかのような人と牛が混ざり合った――そう、正にミノタウロスであった。

 体躯は優に5メートルを超え、屈強な豪腕はまるで丸太の如く太く、その腕で殴られれば容易く命は吹き飛ぶであろう。

 だというのに、その手には巨大な戦斧が握られており、大岩ですら両断しかねない程の破壊力を持つと言われても納得しそうな程の威圧感を放っていた。


「このタウラス様を相手に良く戦ったと褒めてやろう小娘」


 どうやら女性とこのタウラスと自称する牛男が戦っている音が、先程まで聞こえていた音の正体だったようだ。

 だとすれば、戦況は圧倒的に女性の方が不利なのだろう。

 女性は既にかなりの血を流しており、荒れた息を整えようとはしているが、既に息も絶え絶え、手にした剣にも震えが走っていた。

 対し、牛男は擦り傷程度は負っているようではあるが、手傷と呼ぶような傷は何処にも見当たらない。


「それだけの力を持つ者を殺してしまうのは惜しいな――よし決めた。貴様はこの俺の性奴隷として一生飼い殺しにしてやる。命だけは助けてやろう、喜ぶが良い!」

「誰が……貴様などに――ッ!!」


 不適切な発言を確認。

 確かあの神様によると、これで力が使えるって話だが。

 教わった通りに力を行使する。


 その直後、タウラスという牛男は氷の棺によって閉じ込められた。

 エターナルフォースブリザード。相手は死ぬ。

 死んだという結果に付随し、その肉体全てが決して解ける事の無い永久氷結に包まれる。


 これが、世界を救う鍵。

 この世界の救世主として遣わされた、俺の力であった。



―――――――――――――――――――――――



 助けた女性はどうやらこの国に仕える聖騎士、しかもかなり偉い地位の人物だったようだ。

 助けたお礼としてお城に招待されたり、この世界における大金を貰ったりした。

 衣食住足りて礼節を知る、という言葉もあるので衣食住の確保はとても大切である。

 なのでお金は有り難く頂いておいた。



 神様によると、どうやら俺はこの世界を救わないといけないらしい。

 それを女性に話した所、この世界には魔王と呼ばれる絶対悪が存在するらしい。

 この世界を襲う貧困や悲劇はその全てが魔王と呼ばれる人物がもたらすモノだとの事だ。

 魔王を倒す事が、きっとこの世界を救う事に繋がるのだろう。

 なので、俺は魔王を倒す為に旅に出る事にした。




「くっ、クソがァ! テメェ! 絶対にぶっ殺してやる!!」


 殺す、殺し、という単語はもう文句無しのNGワードです。

 その単語を口にした野盗はその生命活動を停止させ、その場で永久に氷像として残り続ける末路を辿った。


「フミヤ様、流石です」


 旅に出るにあたって、最初に助けた女性の聖騎士が同行してくれた。

 名前はアリシャと言うらしく、俺の能力ではどうしようもない相手に対し、その身を粉にして戦ってくれている。


「これから先はいよいよ魔王の領域に入ります。襲ってくる魔族も強力な存在が多数現れる事でしょう」

「そうか、気を付けないといけないな」


 気を引き締める。

 俺の能力は完全無欠などではない。

 旅の中、少しずつ芽生える世界を護りたいという気持ちを胸に、決意新たに俺は魔王の領域へと脚を踏み入れるのであった。 



―――――――――――――――――――――――



「我は炎魔将、サラマンド! 我が真紅の業火にて焼け死ぬが良い!」

「私は氷魔将、キュートス――苦しまずに安らかに死ぬと良い……」

「世は地魔将、グラン! 大地の槍にて串刺しにしてくれようぞ! 死して屍を晒すが良い!」

「俺は風魔将、シルフ! 良くもまあ俺の身内を殺してくれたな! 推して参る!」


 長く苦しい旅が続いた。

 魔王に仕えるという四天王とも出遭い、その全てを凍結させてきた。

 そして俺達はいよいよ、魔王の居城たる魔王城の扉を開けた。

 迫り来る殺意。響く怒声。凍り付く魔族達。

 魔王城の中心部へと進み、いよいよ魔王の住む中心点、玉座の扉を開く。


「ほう、良くぞここまで辿り着いたな異世界の勇者よ」


 玉座に座した、漆黒の禍々しい装飾を施した鎧に身を包んだ巨人。

 目の前から強風の如く叩き付けて来る威圧感が、この者こそが正に魔王であるという存在感を主張してくる。


「気に入った。勇者よ、私の仲間にならないか? 世界の半分をお前にやろう」

「断る。俺には神様から言われた使命があるからな。それに、この世界に平和な世をもたらすのが俺の使命だ!」


 アリシャが勢い良く飛び出し、魔王へと斬り掛かる!

 その太刀筋をまるで目の前にゆっくりと舞い落ちる綿埃を摘まむかのような動作で、魔王はあっさりと止めてしまう。


「貴様が、貴様が私の姉様を! 貴様が居なければ、私の姉様が命を落とす事も無かったのに!!」

「ふふ……随分と慌てんぼうなお嬢さんだ……私と勇者の話の合間に割って入るとは躾がなってないようだな。貴様の相手は後でしてやる、下がっていろ」




 魔王は凍結され、魔王城は静寂で包まれた。

 こうして魔王は永久にその姿を氷像として世界に晒す事になり、世界に平和が戻ったのであった。

めでたしめでたし。

殺すだとか奴隷だとかそんな事をつぶやくと即座にアカウント凍結。

○witterのアカウント凍結が異世界での会話で適用されるときっとこんな感じになるんだろうなあ、と思いながら書いてました。


魔王様は一体何が原因で凍結させられたのでしょうか?

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― 新着の感想 ―
[一言] 相手の発言で即死させるという発想と、テンポの良さが相まってとても面白かったです。 タウラスが最初に死んだところと、魔王が戦闘を始める前に死んだところは笑ってしまいました。
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