記憶
僕は月岡斗真17歳。昔のことは覚えていない。記憶があるのは僕が彼女に初めて出会った14歳のころからだ。その時両親が優しく微笑んでいたのを思い出す。
何故僕が記憶が無くなったのかは分からない。彼女は絶対に知っているはずだが
「ご両親の命令ですので」
とこの一点張りだ。従姉弟の皐月と颯馬に聞いてもうまくはぐらかされるのがオチだ。僕は自分の記憶を取り戻したいと思う。自分のことを知りたいのは当たり前だ。だから別に変なことではない。何故そうみんなして隠そうとしているのか僕は知らない。僕は知らないこと、分からないことが多すぎる。周りに聞いてダメなら僕自身で調べるしかない。彼女は何故僕に過去を教えてくれないのだろう。僕の両親が口止めしてるだけではないと思う。
あとそれと僕にとって重要な事がもう一つある。僕がしないといけない事、僕の両親を殺したヤツらへの復讐だ。おおよそどこのどいつらが両親を殺したか検討は付いている。あとはどう実行するかだ。僕の検討ではIDEALという両親が務めていたMilagroのライバル会社だ。どちらもロボット会社である。この時代ロボット開発の競走が盛んで自分たちの会社で作ったロボットで戦争を起こすという会社もなくはない。恐らく両親は感情プログラムを作ることに成功したためその成果を奪おうと奴らに殺されたんだ。殺してもそのデータを手に入れることは出来ないのに馬鹿な奴らだ。そのデータこそ彼女であると言うのに。そんなことを考えていると
「斗真、昼食の時間ですよ」
突然部屋の外から声がかかった。時計をみるともう12時半を回っている。
「分かった、すぐに向かうよ」
と返事をしながら扉をあけ。そして彼女と一緒に薄暗い階段を降り、食堂へと向かう。まだ雨が降り続いている。さっきよりも激しくなったのではないかと思うくらい雨音がうるさい。彼女はさほど雨音を気にしているようではなく淡々と階段を降りている。
彼女の名前はロディス、ロボットである。しかも感情プログラム付きの。今までの技術では感情プログラムが作れるはずがなかった。でも僕の両親がそれ実現した。容姿はとても美しく10人中10人が美人と答えるであろう。しかも僕の両親は何故か彼女の構造を人間に近くにしてある。肉を切られれば血ではないが赤い液体が出る。その切られた皮膚も人間ように回復する。そんなことも出来る世の中だ。彼女は母好みの和装だ。しかし何故か見た目は日本人であるが外国人のような名前である。僕の真っ黒の髪と正反対の透き通るような白髪をしていて長さは肩甲骨あたりまで伸びている。先に言ったように僕の記憶は彼女が出会ったところから始まっている。両親曰く僕を守るためだそうだ。何故僕が守られなければいけないのか僕は知らない。ほんとに僕は知らないことが多すぎる。どれも記憶がないせいだ。
「はぁ、ほんとに嫌になるよ…」
つい本音が漏れてしまった。彼女はきちんとその声を拾い
「どうしたんですか、斗真また自分の記憶についてですか」
「それ以外に何があるって言うんだよ。」
「どんなに知りたくても私の口からは何も言えませんよ。」
微かに微笑みながら彼女はそういう。
「…知ってるよ。僕だって学習しない訳では無いからね、最近君に聞くのは諦めたよ。」
「左様でございますか」
そんな他愛のない話をしているうちち食堂へ着いた。
僕はいつも通り一人で席につき一人で食事をする。今日は和食だ。どんな野菜を使っているかいつもと味付けが違うことについて彼女に聞いていた。それがいつもの風景だ。
食事を初めて少したった頃僕の電話が鳴り出した。相手は皐月だ。電話に出ようとすると
「お食事中に電話をなさるのですか?」
と怪訝な顔する。
「まあ少しくらいいいじゃないか」
そんなことを言って席を立ち食堂から廊下に移動し電話に出る。
「もしもし?皐月か?」
彼女はいつも通りの口調で
「えぇそうよ、貴方が知りたかった情報、ゲットしたわ」
「本当か?、それで、僕の検討通りIDEALのやつらで間違いないのか?」
「yes、そしてあなたの両親殺害の指示した張本人はIDEALの社長石田洋一郎」
「社長が根本に関わるのか…面倒だな…」
「それは仕方ないわ…それで貴方、いや貴方達は石田殺すの?」
「貴方達?…あぁロディスのことか、方法は殺すに決まってる。ロディスはロボットだからある程度の格闘技術を持っているし、僕も銃をそれなりに扱えるから問題ないよ。ついでにこれは僕のただの興味があるだけだからだけど他の会社のロボット開発の情報を見ようと思う。」
軽く笑いながら皐月へいう。
「確かにこのご時世他の会社の情報は知っておきたいわね。」
僕らは一応Milagroに務めているといか所属している。だから少しでも他の会社の情報を知っておきたいところだ。
「今更言えないけどあんまし女の子をこき使っちゃダメよ?」
「分かってるよ、それで日はいつ頃がいいのか?」
「えっと、来週の水曜日、今日は木曜日だから…もう一週間も無いわね。その日なら彼はずっと社長室に居るわ。秘書さんをよくパシリのように扱っているから一人でいる時が多いわその時に狙うのが一番だと思うわ。」
「了解、じゃあその日に向けて俺達は準備を始めようと思う。情報、ありがとうな」
僕は皐月に礼を言うと皐月は
「いいっていいって、長年の付き合いだし、殆どの情報は颯馬からだから礼を言うなら颯馬に後で自分でいいなさいって」
「ははっそれもそうだな、じゃあまたなんかあったら宜しくな」
そういって僕は通話をオフにする。
「長年の付き合い、か…」
実質彼女ら美馬姉弟との思い出は三年分しかない…彼女は何気なく言ったことだろうけど僕には結構心にくる。まあそんなものにはもうそろそろ慣れてきた。そんなふうに自分の心に整理をしていると
「斗真、早く戻らないと冷めてしまいますよ。」
食堂のドアを超えて彼女が僕を呼ぶ声が聞こえる。
「わかった今からそっちに戻るよ」
その返事を合図に僕は食堂に戻りまた席につく。
「それで、皐月とはどのようなお電話を?あのことについてですか?」
真剣な目でこちらを見る。ロディスの目は何故か両方色が違う。右は普通の黒だが左は少し赤みをおびている。黒い瞳はどこかへ吸い込まれそうに、赤黒の瞳は少し狂気を感じさせる。
「斗真?どうしたのですか?」
ふと我にかえり
「あぁそれについて今から話すよ」
そういって僕は皐月から教えて貰った情報をロディスに教え、嫌な顔一つせずロディスは僕と一緒に暗殺という名の復讐の計画を練った。
そしてロディスは
「了解しました。それでは6日後頑張りましょう」
と簡単に承諾し食事の後片付けにと入る。
後はもう日を待つだけだ。
6日後僕の人生で一つ大事なイベントがはじまるんだ。
私が別れの挨拶もせずに向こうは電話を切ってしまった。
「あーあ、それにしてもよく情報をしぼりだすことができたわね」
パソコンに向かって黙々と作業をしている私の可愛い弟に話しかける。
「別に、これくらい大したことない。あと姉さん『長い付き合い』って言うのは言わない方が良かったんじゃないの?」
あっ…と私は声を漏らす
「うわー申し訳ないっ!ごめんね斗真ちゃん!あーまた今度きちんと謝ろ」
私はしゃがみこんでうーうーと唸る。ちなみに一見クールぶってる弟だが以外にドジっ子で人見知りだ。
「まあ姉さんまえにも同じようなことがあったから斗真もそろそろ慣れたんじゃないの?あと斗真ちゃんって気持ち悪いからやめなよ」
実は本人の前ではもう言わないようにしているが前までちゃん付けしていた癖が颯馬の前ではでてしまうのだ。
「私の弟が私に冷たい…そんなに言わなくても…」
私は涙声に近い声で颯馬に言う。そしてさっきまでパソコンに向かっていた弟がギシッと椅子の音を立てながらこちらへ振り向いてきた。
「それにしても斗真も変わったよね不謹慎だけど記憶がなくなる前と比べて」
突然空気重くなった。私は顔を上げすっと立ち上がりふと外を眺める。まだ雨が降っている。
「そうね…前はもっと…」
息をするように出したその言葉は雨音でかき消されてしまった。
はい、1日二回も投稿失礼します。(ノ)ω(ヾ)モキュモキュおはこんばんにちは弓削です。だれも気にしないと思っていますがアプリで名前を制作しました。(だからなんだ)
こんな拙い作品を読んでくださりありがとうございます。よろしくお願いします。