一夏の君
今の季節完全無視です(*´꒳`*)
これは、ただの一夏の出来事になる…はずだった。
毎年のように繰り返される、夏休み。
蝉がうるさく鳴いている、蒸し暑い夏。
長い休みは、好きだ。
でも、夏は嫌いだ。
エアコンは、リビングにしかない。
部屋に引きこもっている僕にとっては、とても辛いのだ。
扇風機がうるさく風を当ててくる。
まぁ、蝉の鳴き声よりかはマシだと思うが。
扇風機の風は、とても冷たいとは言い切れない。
ぬるい風になって僕に当たる。
ピーンポーン
チャイムだ。
午後1時。いつもの時間。
友達のいない僕と唯一、毎日のように遊ぼうとしてくる暇人。
そう。幼馴染の奈々川 夏美。
きっと、また 母さんは家に入れるだろう。
ほぉら。すぐそこまで足音が聞こえる。
僕は素知らぬ顔で、ゲームを続ける。
バン!と勢い良く扉が開き、夏美が入ってくる。
「あ!まぁた、ゲームしてる。 ほら、今日はプール行く約束でしょ?」
少しムスッとしているのは、いつものことだろう。
「約束なんてした覚えない。お前が勝手に決めたんだろ。」
僕はゲームを続ける。
プツッ
急に画面が暗くなる。
夏美だ。
「何してんだよ!?」
「ほぉら!早く行くよ!おばさんが水着用意してくれてるんだから!」
こいつ、余計なことしやがって!
母さんは、引きこもりの僕をどうにかしたいらしく、夏美にほぼ任せている。
「あぁ、もうわかったよ!行けばいいんだろ!行けば!」
僕はイラつきながら、言った。
「もう、最初からそう言えばいいのに」
また、今日も振り回される。
夏美は、ニィッと笑った。
近くの市民プールは、夏休み中の子供たちが たくさんいた。
泳ぐスペースもほぼない。
まぁ、僕はカナヅチなのだが。
「もう!全然泳げるトコないじゃーん!」
夏美は、浮き輪をつけながらアイスを食べている。
僕は夏美が買ってきてくれたアイスを食べながら、言った。
「お前も泳げねぇじゃん」
「うっさい!」
夏美は、アイスを齧った。
少し潜って終わったプールは、あまり楽しくはなかった。
まぁ、あんな蒸し暑い部屋にいるよりかは マシなのかもしれないが。
夏美は、少しムスッとしながら 僕より一歩前を歩く。
そして、交差点に差し掛かる時に僕の方を向いて笑顔でこう言うのだ。
「じゃあ、また明日も迎えに来るからね!バイバイ!」
「はぁ。バイバイ!」
笑顔で手を振る夏美を背に、僕は無愛想に返事をした。
夏美の涙も見ずに。
夏美が嘘をついていたことなんて、気づかなかった。
明日なんて来なかった。
夏美は…自殺した。
僕は夏美のことを考えていただろうか。
こんな、友達のいない僕と遊ぶ。
それはどういう意味か。
こんな、いじめられっ子の僕と遊ぶ。
これはどういう意味なのか。
僕は、考えていなかった。
これは、ただの一夏の思い出になる…はずだった。
もう、この部屋にあのうるさいくらいに明るい声はもう聞こえない。
もう、僕が家から出ることもない。
夏美の引き出しに入っていたと言っていた手紙には、僕の宛名以外 何も書いていない白紙だった。
なぁ、夏美…
夏美は…この紙に何を書こうとしたんだ?
僕は、この一夏に閉じ込められたまま もう戻ることのない君を想って、また明日も過ごすのだろう。




