「だ、誰もそんなん言ってませんよ?」
「おお~、でかっ!!」
ようやく辿り着いた商業都市アリスベルの第一印象はその一言に尽きた。
「ご主人様は未だ村にしか行った事しかありませんでしたからね」
「私もエルムから出た事無かったから地味に初めてだけどね」
「まぁ、私もですけど」
「実はボクも」
「勿論アクアもゴブ」
「我は初めてじゃないのじゃ」
「私もカリグから来てるので」
うん、このパーティーの人間、ほとんどお上りさんです。
「じゃあな嬢ちゃん達」
「ありがとね」
皆で話をしていると御者のおっちゃんが挨拶してくるのでそのまま返す。
それから私達はアリスベルに入り、まずは結衣ちゃんの仲間と合流しようという話になった。
「えっと、フロストさん達との合流場所は……。確かアリスベルの南地区にあるキャットテイルと言うお店です」
「キャットテイル……」
「獣人族の人は居ないと思うよ?」
ビクッ!
「だ、誰もそんなん言ってませんよ?」
「ハクア……」
「ご主人様……」
「流石ゴブ」
「うむ流石主様じゃ」
ヤバイどっちの反応も傷付く……。
〈自業自得です〉
サーセン!
「すぐ見付かるのかな?」
「えと、キャットテイルは南地区の唯一の酒場兼宿屋らしいので多分大丈夫です」
「なら早く行こっか」
「はい」
そんな訳で私達は南地区へと歩き出す。地味に商店などを見ながら歩いて行くとさして時間も掛からず南地区に辿り着き、誰かに何かを訊ねずともキャットテイルの場所はすぐに分かった。
「あそこみたいですね」
「あれか~、ご飯美味しいと良いな!」
「ご主人様? ご飯食べに来た訳ではないですよ?」
「大丈夫! 気にしない!」
「私も気にしないから平気だよ。アリシア」
「二人共少しは気にして下さい」
「ボクもお腹が空いたとは言えない空気かな?」
「ゴブ」
「我一人で入って注文しても良いのじゃ」
「全員さっさと行きますよ?」
「「「はい」」」
キャットテイルに入るとエレオノの言う通りネコミミは無かった。残念です……。
「ご主人様?」
「何でもないです」
結衣ちゃんが受付に行き仲間について聞いている間、私は辺りを見回す。
何か視線感じるんだけど何処からかな?
「どうかしたのかな?」
「いや、特に……」
「お待たせしました」
「分かったの?」
「はい、二階の四号室だそうです」
「私達も行く?」
「はい、是非紹介したいので」
「わかった」
結衣ちゃんの先導で私達は全員で結衣ちゃんの仲間が待つ部屋へと向かい、仲間である結衣ちゃんが代表してドアをノックする。
「はい。どちら様で…………」
「フロストさん!」
「ユイ無事だったんですね!」
「はい、この方達に助けて貰いました」
「そうですか。皆さん私の大切な仲間を助けて頂きありがとうございます」
「……どういたしまして、私はハクアと言います。どうぞよろしく」
「ええ、よろしく」
私達は互いに挨拶をした後、下の酒場で一緒にご飯を食べる事にした。
結衣ちゃんの仲間はリーダーであり結衣ちゃんを連れ出した張本人のフロスト。更に大柄な男のディグセム、神経質そうな男のセイムの三人だった。この三人は教会騎士と呼ばれているらしく、騎士国の人間とは違い殆どが魔法も使える魔法戦士で構成された騎士団員らしい。
「それではハクアさん達はエルム村の方から?」
「はい、まぁ私とハクアさん、アクアの三人は更に辺境のシソ村からです」
「私とアクアはシソ村で暮らしていて近くにアリシアが薬を作りながら生活をしていました」
「なるほど。お若い女性だけでの旅は大変でしょう」
「そうでもないですよ。幸いアリシアの薬は評判が良くて、遠方から買い付けに来る方もいたので資金の方はかなりあります。竜車で旅をするくらいなら何の事はありません」
「それは羨ましい。私達は清貧を心掛けているがゆえ、余りそのような贅沢は出来ませんからね」
「素晴らしい考えだとは思います。私には出来ませんが」
「……そうですか。考え方は人それぞれですからね」
「そうですね」
因みに先から会話をしているのは私とフロストがほとんどで、ディグセムとセイムは殆ど喋らず食事は終了した。
「貴方達は今、冒険者をしてるんですよね?」
「ええ、そうですよ」
「じゃあもうこの都市での登録も?」
「済ませてあります」
「そうですか。じゃあ結衣ちゃんをもう少しお借りしても良いですか? 勿論結衣ちゃんが良ければですけど」
「私は大丈夫ですよハクアさん」
「何故かお聞きしても?」
「何、ただ単に私達が冒険者ギルドに行くので一緒に行って登録を済ませようと思っただけですよ」
「それなら私達も」
「見た所依頼を受けている訳ではなさそうですし、結衣ちゃんも着いたばかりだからすぐには依頼を受けませんよね? それなら私達が一緒に付いているので大丈夫ですよ」
「……そうですか。ではよろしくお願いします」
「ええ」
話が終わった私は皆を連れてキャットテイルを出ていく。
「先輩?」
「強引にごめんね」
「大丈夫です。それより何かあったんですか?」
「さあ、でもさ結衣ちゃん」
「はい」
「用心するに越した事はないからさ、いろいろ気を付けた方が良いよ」
「それは──フロストさん達を疑った方が良いと言う事ですか?」
「あ~、ほら、結衣ちゃん可愛いから男のパーティーだけだと寝込み襲われたりするかも知れないって事、宗教関係者なら禁欲とかもしてるかもだしね」
「なんだ。そういう事ですか」
「うん、だからいろいろ気を付けてね?」
「心配しすぎだと思いますけど、分かりました!」
こうして私は結衣ちゃんに警鐘をならしつつギルドに向かった。




