自信なくなってね?
「で、次はなんだ?」
「えっと次はね」
【傲慢なる搾取】
死した魂の尊厳を奪い使役する事が出来る。
「まあ、傲慢といえば傲慢だな。しかし使いどろこが微妙だなこれ」
「そうだねぇ。結局魂の状態で使役した所で生前の強さを維持できるかも怪しいし、何よりそれで無理矢理使役してもめんどくさいよね。現状、死に逃げしようとした奴を逃がさないようにする位しか思い付かぬ」
「想像以上に使い方がクズだが、確かにそれは有用だな。ちなみに実際のところどうなんだ? 使役した奴の強さってのは?」
「わからん!」
私が素直に答えるとその視線は自然と元々の七罪の持ち主であるルシェに集まる。
「あの……すみません。大変申し訳ないのですが、私にも分かりません」
「ん? どういう事だ?」
「それがその……私が七罪を持っている時は全く違う権能だったんです。唯一同じなのは【傲慢なる邪神体】のみ。しかもそれも私の場合はHPの四分の一以下の場合ではなく、二分の一以下のそのダメージを無効化出来るものでした」
「なん……だと……私もそっちの方が良い」
「ハーちゃんは置いておいてそんな事あるんですかテアさん?」
置いとかれた!?
「そうですね。十分有り得る事かと……」
「その心は?」
「神の持つ権能とは自身の根幹を表す権利と力の証明でもあります。なので世界に必ず現れる七罪と言えど十分可能性はありますね」
「それって私の資質がこの三つの権能だったって感じ?」
えっ、死んだ奴を従えたい願望が私にあるって事?
「必ずしもそうとは言えません。特に白亜さんの場合は」
私の場合は?
「……ああ、他の七罪の影響か」
「はい。それに加えて白亜さんの中の力、白亜さん自身の特異性、そして白亜さん自身が神に至りつつある事が関係していると思います」
問題しかない件に就いて……。
ほぼほぼ私を構成する要素の全部じゃねえか!?
「今更そんな分かりきった事で驚くなよ面倒臭い」
「面倒臭いとな!? 結構真剣ですのよ!?」
とは言え、私以外は澪と同じようにその言葉に納得しかしていないようだ。
唯一、仲間になったばかりの天使組だけはどう反応した方が良いか迷っているが、私の反応に迷っているだけで内容自体には納得している雰囲気が漂っている。
み、味方が誰もいない。
天使組は多少オロオロしているが、流石私を今まで覗き見ていただけの事はあり、今までで最速の向こう側行きである。
くっ、いつもはもう少し向こう側の住人になるまで時間があるのに、今回ノータイムで向こう側の住人だった。
最初の頃は皆、流石にそれは言い過ぎみたいな空気出してくれてるのに、なんで付き合いが長くなるとすぐにテア達の言葉を鵜呑みにするようになるのだろう。
ハクアさんはとっても悲しいです。
「全員お前のデタラメさを痛感するからだ。バカタレ」
「理解してくれる人が増えるのは多分良い事ですよハーちゃん」
「だからサラッと頭の中の考えを読まないでくれますかねぇ!?」
「わかりやすいお前が悪い」
ド畜生。
「じゃあルシェ達かテア達のどっちか、予想でいいから教えて」
「恐らくは生前の能力をフルに使うのは難しいと思います。スキルもステータスも魂に紐づくものとはいえ、肉体という枷が無くなるとそれはそれで問題がありますので」
「そうですね。私もテア様の意見に賛成です。恐らくハクア様が権能の力を十全に扱えるようになればまた変わるでしょうが、今現在全ての力を引き出すには相当力が下の相手でないと無理だと思われます」
テアとルシェの意見はどうやら同じようだ。
「難しいのは強い相手だと力を引き出すのが難しく、弱い相手はそもそも戦力にならない点ですね。魂になってから強化は可能なのかにもよりますが現状は難しいと思います」
「なるほど」
ルシェの言葉に少し考えるがやはり有効な手段は現在思い付かない。
となると、やはり最初に考えたように死に逃げ防止と折檻、そして情報を引き出す為位にしか使えなさそうだ。
まあ、それはそれで有用だとは思うが、スキルよりも強力なはずの権能が思ったよりも使い道がないのが残念でならない。
「まあ、一言で言えばお前らしいだな」
「使えないものが多くて悪かったね!?」
私だって使い勝手が良くて副作用もない超有能スキルとか欲しいわ!
「で、残りはさっきも話題に出てた【傲慢なる邪神体】か。こっちはわかりやすいが……」
「やめて。その先言わなくてもわかるからやめて」
私が懇願にも似た声で言うと澪はニコリと笑う。
おお、わかってくれたか友よ。
「現状こいつのクソザコな紙防御じゃ大抵の攻撃は意味をなさないな」
「言うと思ったよこんちくしょう!?」
なんだ? 私を虐めるのがそんなに楽しいか!?
「もう……ダメですよみーちゃん。ハーちゃんの事をそんなに虐めたら」
「瑠璃……それをそんなに嬉しそうな顔で言わなければちょっとは感動出来たと思う」
「あれ?」
あれ? じゃねえのよ。
満面の笑みで、良いもの見れたみたいな感じの空気出しながらそんな事言っても全く説得力ねえんだよ!?
「と、まあ、とりあえずはこんなものか?」
「そうですね。後は明日にでもまた続きをしましょう。そろそろですので」
「ん? そろそろとは……っ!?」
「ご主人様!?」
「ハクア!?」
テアの言葉に疑問を抱いた私はどういう事か聞こうとしたら、急に力が抜けて椅子から崩れ落ちてしまった。
ギリギリの所でわかっていたかのようにテアに助けられたが、突然の事態に全員慌てている。
「あの……テアさん。これはどういう事でしょうか?」
「今まで無理矢理体を操っていた反動ですね。つまり簡単に言えばオーバーヒートです」
「なんと!? えっ、早くない?」
「そうでもありませんよ。何せずっと力が垂れ流しになっている状態で、無理矢理体を動かす為にも力を馬鹿みたいに使っていましたからね。白亜さんと言えど快復仕切っていない状態では枯渇しますよ」
「……それ最初からわかってたよね?」
「はい」
「なんで教えてくれなかったの?」
「白亜さんがそんな事を食欲より優先すると思えと?」
無理ですね。
その一言で納得する自分がどうかと思うが、確かにそれで動くなと言われても、垂れ流しの状態ならいつ倒れるか分からないのに食事を我慢しろと言われても納得しないだろう。
とても納得のいく回答である。
しかもテア達からしたら、いつ倒れるか分からないよりは、そうそうに力を使い切ってくれた方が楽というのもあるのだろう。
私の場合、なんか知らないけど枯渇してからのほうが治り早いし。
じゃあとりあえずやることだけさっさとやっとくか。
「瑠璃」
「なんですかハーちゃん?」
「起きたら鉄扇弄らせて、面白そうな事思いついたんだよね」
「えっ!? ハーちゃんが面白そうな事ですか?」
「うん」
「……わかりました。じゃあ起きたら渡しますね」
「えっ!? いいの瑠璃さん?」
「そんなに心配しなくても大丈夫ですよ千早ちゃん。あの感じの言い方なら今よりも弱くなる事は絶対ないので」
「そうなの?」
「ええ、多分今より強力になるか今より凶悪になるかのどっちかですよ」
「それは大丈夫って言って良いの?」
「……多分大丈夫です」
自信なくなってね?
薄れゆく意識の中、瑠璃と千早の会話にツッコミを入れることが出来なかったのが心残りだった。
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