雪解け
その形を美しいと思った。
欲しい。手に入れたい。
手を伸ばして掴んだ瞬間、それは脆く崩れ去った。
後に残ったのは湿った手の平と、仄かに冷たい感触だけ。
手に入らないと分かると、前よりもずっと欲しくなった。
何度も、何度も、空へ手を伸ばして。
溶け消えていく感触に、虚ろを感じだ。
それでも、諦めるという選択肢は浮かんでこない。
夢中になってそれを続けた。
どれだけの時間が経ったのだろうか。
冷たい空気に晒され続けた手の平は、いつの間にか周囲の温度に近付いていた。
今なら。なぜだか、確信があった。
そっと差し出した手の平の上に、それは形を持ったまま静かに舞い降りた。
まるでそこが、最初から決められていた自分の居場所であったかのように、キラキラと輝く結晶を見て、ようやく悟ったのだ。
・――――――――――――・
大切なのは、合わせる事。
そして、無理強いしないこと。
『あるがまま』を受け入れること。
・――――――――――――・
大切なのは、導くこと。
そして、相手を騙すこと。
『あるがまま』を操ること。