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王都のお一人様カフェ SOLITAIRE ソリテール  作者: yuruhuwa回路


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48/50

エミリの疑問

 エミリが来て二ヶ月が経った。


 コーヒーはかなり上達していた。常連客数人が「最近美味しくなった」と言うようになった。エミリ本人はまだ気づいていなかった。


 その日、開店前にエミリは聞いた。


「カインさん、ずっと聞けなかったことがあって」

「どうぞ」

「カインさんって、なんでこの仕事を始めたんですか」


 カインは豆を量りながら答えた。


「居場所が必要だと思ったからです」

「居場所を、作りたかった?」

「自分が一番ほしかったものを作ろうと思いました」

「カインさん自身が、居場所がなかったんですか」

「昔は、そうでした」


 エミリは少し間を置いた。


「どんな仕事をしていたんですか、前は」


 カインは挽いた粉をドリッパーに入れながら言った。


「今は話せないことが多いですが、居場所を作ることとは遠い仕事でした」

「遠い仕事……」

「エミリさんはなぜこの仕事を、と聞いたとき、お母さんの話をしてくれましたね」

「はい」

「私の理由も、似たようなものです。自分が経験したことから、必要だと思ったことを作った」


 エミリはカウンターを拭きながら考えた。


「カインさんの居場所が、今はここですか」

「そうです」

「それは、お客さんが来てくれるから?」

「お客様がいてくださるから、ここが居場所になります。私一人だったら、ただの部屋です」


 エミリはしばらく考えた。


「じゃあ、お客さんとカインさんが、互いに居場所を作ってるんですね」


 カインはお湯を注ぎながら、少し間を置いた。


「そうですね。そう思います」

「私も、それがやりたい」

「どういうことですか」

「ここで働いていて、お客さんが帰るときの顔を見るのが好きになった、って前言いましたよね」

「はい」

「あれ、ずっと続けたいと思ってる。カインさんが言ったように、互いに居場所を作り合う仕事を」


 コーヒーが落ちていった。


 カインはカップに受けて、エミリに差し出した。


「飲んでみてください。今日の一杯目」


 エミリは受け取って、一口飲んだ。


「……美味しい」

「今日は良い粉の状態でした。この感覚を覚えておいてください」

「はい」


 エミリはコーヒーを飲みながら、窓の外の秋の路地を見た。


 石畳に光が落ちていた。


「カインさん」

「はい」

「私、いつかこういう店を持つかもしれないけど、しばらくはここにいていいですか」

「もちろんです」

「良かった」


 エミリは笑った。


 開店のランプに火が入った。


 今日もSOLITAIREが始まった。

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