トールの報告
新人冒険者のトールが、笑顔で来た。
「パーティに入れてもらいました」
「そうですか」とカインが言った。
「Cランクのパーティです。先輩三人と。俺は見習いで入れてもらって、先週初めての依頼を一緒にやって、成功しました」
「それは良かったですね」
トールはコーヒーを頼んで、席に座った。嬉しそうだった。ここ最近で一番顔が明るかった。
「最初に来たとき、帰ろうかどうか迷ってるって言いましたよね」
「はい」
「あのときカインさんが、もう少しいてみてはと言ってくれた。それを思い出して、踏ん張れました」
カインは静かに言った。
「もう少しいてみた結果が、今日のトール様です」
「なんかそう言われると照れますね」
コーヒーが来た。トールは一口飲んだ。
「相変わらずうまい。このコーヒー、好きなんですよ。なんか、一口飲むと落ち着く」
「ありがとうございます」
「先輩たちにも教えようかと思ったんですけど、お一人様専用だから、連れてこられなくて」
「そうですね」
「一人で来るのが条件って、最初は不思議だと思ったんですけど、今はわかる気がします。一人じゃないと、ここの良さが感じられない気がして」
「よく気づきましたね」
「何回も来てたら、なんとなく」
トールはコーヒーを飲みながら、窓の外を見た。
「カインさん、俺、これからも来ていいですか」
「もちろんです」
「強くなったから卒業、みたいなのはない?」
「ありません。強くなった方も、そうでない方も、お一人様であればいつでも」
「良かった。ここ、好きなんで」
トールは代金を払って立ち上がった。
「あと、エミリさんって方がいますよね、今日教えてもらって」
「はい」
「コーヒー、美味しかったです。カインさんに似てきてる気がする」
「そうですか」
「師匠に似るって、そういうものですよね」
「どうでしょう」
「では」とトールは扉を開けた。
振り返らずに路地へ出ていく背中は、最初に来たときとは全然違った。
まだ若くて、まだ途中で、でもちゃんと前を向いていた。
カインはその背中を見送って、カウンターに戻った。
エミリがカップを洗いながら聞いた。
「さっきの方、嬉しそうでしたね」
「そうですね」
「こういうとき、カインさんはどんな気持ちですか」
カインは少し考えた。
「コーヒーを飲んだときに近い感じです」
エミリは少し笑った。
「じゃあ、良い気持ちですね」
「はい」




