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王都のお一人様カフェ SOLITAIRE ソリテール  作者: yuruhuwa回路


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42/52

マッテオ、来店

 クレインの元部下、マッテオが初めてSOLITAIREに来たのは、秋の晴れた日の昼過ぎだった。


 二十三歳の騎士。巡回の途中で、路地に入ってみた。丸窓の光を、以前から気にしていた。


 扉を開けて、看板を見た。お一人様専用。


 中に入ると、カインが顔を上げた。


「いらっしゃいませ」


 マッテオは少し周囲を見回した。静かだった。


「一人でも入れますか」

「お一人様専用ですので」

「あ、そういうことか」


 席に着いた。メニューを開いた。コーヒーを頼んだ。


 コーヒーが来た。一口飲んだ。


「……うまい」

「ありがとうございます」


 マッテオはきょろきょろと店内を見た。


「前から気になってたんですよ。この路地、巡回のルートなんで。でも、なんか入りにくくて」

「なぜですか」

「お一人様専用って書いてあるから、一人でここに来てるって、なんかそれ、寂しいみたいじゃないですか」


 カインは少し間を置いた。


「一人でいることと、寂しいことは、別のことだと思いますが」

「そうですか?」

「お客様の多くは、一人でいたくてここに来ています。寂しいからではなく」


 マッテオは少し考えた。


「じゃあ俺も……一人でいたかったのかな。今日」

「どうですか」

「団長が退役して、新しい団長になって。なんか、職場の空気が変わって」

「クレイン様のことですか」


 マッテオは目を上げた。


「知ってるんですか」

「お客様のことは外に話しませんが、こちらから確認することもしておりませんので」


 マッテオはしばらく考えてから、言った。


「……あの人のこと、怖かったです。ずっと。でも、退役式で泣いてしまって。なんで泣いたのか、自分でもよくわからなくて」


 カインは静かに聞いた。


「怖い人がいなくなる寂しさと、慕っていた人がいなくなる寂しさは、同じ言葉でも違う感じがします。どちらでしたか」


 マッテオはしばらく黙った。


「……両方だったかもしれないです」

「そうですね」

「あの人、今は何をしてるんですか」

「お客様のことはお話しできません」

「そうか……そうですよね」


 マッテオはコーヒーを飲んだ。


「でも、元気でいてほしいな。あの人らしくやってれば、それでいい」


 カインは何も言わなかった。


 でも、クレインが孤児院で子供たちに剣を教えている話を、心の中で思った。


 元気でいる。それ以上に、元気でいる。


 マッテオは代金を払って立ち上がった。


「また来ます。次の巡回のときに」

「お待ちしております」


 マッテオが出ていった後、カインは少し考えた。


 師を思う弟子と、弟子を思う師が、同じ空気を吸ったことがある場所。


 それがSOLITAIREだとしたら、それはこの店の大切な部分だと思った。

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