夏の終わりに
八月の最後の週、SOLITAIREには夕暮れの光が長く差し込んだ。
その夜、珍しいことが起きた。
アレンが来た。ミレイアが来た。シルヴィアが来た。エルナが来た。
四人が同じ時間に、六席のうちの四席を埋めた。
誰も誰かを誘ったわけではない。ただ、その夜、それぞれがここへ来たかった。
カインはいつものように動いた。コーヒーを出し、紅茶を出し、静かにおかわりを置く。
しばらくして、エルナが言った。
独り言のような声だったが、仕切りがあっても聞こえた。
「夏が終わるのって、少し寂しいですね」
誰も答えなかった。
でも、その言葉は、四人全員に届いていた。
アレンは本を閉じた。
ミレイアは窓の外を見た。
シルヴィアはハーブティーを一口飲んだ。
エルナは言葉の続きを言わなかった。
カインはカウンターで、静かに次のコーヒーを淹れていた。
しばらくして、アレンが言った。
「……そうだな」
それだけだった。
ミレイアが言った。
「でも、また来年も夏は来る」
シルヴィアが言った。
「花は来年も咲く」
エルナが言った。
「そうですね」
四人はそれきり、また黙った。
でも、その沈黙は最初の沈黙と違った。最初は四つの別々の沈黙だったが、今は一つの、同じ沈黙だった。
カインはコーヒーを一杯持ってきた。
誰の席にも、おかわりを静かに置いた。
誰も礼を言わなかった。
でも、誰もがそれを受け取った。
閉店の時間が近づいた頃、四人はそれぞれ立ち上がった。
偶然ではなく、なんとなく、同時だった。
代金を払って、扉を出た。
路地に出ると、夏の終わりの夜風が吹いた。
四人は別々の方向へ歩いていった。
振り返った者はいなかった。
でも、全員が少し、歩き方が軽くなっていた。
カインは閉店作業をしながら、今夜のことを思った。
何も起きなかった。何も解決しなかった。何も変わらなかった。
でも、何かが確かにあった夜だった。
それが何かを言葉にする必要は、カインには感じられなかった。
ただ、ランプを一つ消した。
また一つ消した。
最後のランプを消した。
丸窓の灯りが消えて、路地に秋の気配が漂い始めた夜だった。




