ドグマ、再び
ドグマが二度目にSOLITAIREに来たのは、最初に来てから一ヶ月後だった。
前回と同じ奥の席に座った。椅子がまた軋んだ。
「コーヒー、また飲んでみたい」
「かしこまりました」
コーヒーが来た。ドグマは今度は砂糖を二つ入れた。一口飲んだ。
「……前よりましに感じる」
「慣れてきたかもしれません」
「舌が変わったのか、コーヒーが変わったのか」
「飲む状況が変わったのかもしれません」
ドグマは少し考えた。
「……そうかもしれない」
前回教えてもらったドルトン司祭のところへ行ったと、ドグマは話した。
「初めは追い払われると思った。でも、あの老人は話を聞いてくれた」
「それは良かったです」
「王都の外れに、異種族が集まっている区画があることも教えてもらった。そこに行った。同じ魔族が何人かいた」
「今はそちらで?」
「仮住まいをしている。仕事を探している。なかなか難しいが」
カインは少し考えてから言った。
「大工仕事はできますか」
「力仕事なら何でも」
「王都の東区で、倉庫の建て直しをしている業者が人手を探していると聞きました。力のある方を求めているようです」
ドグマは少し間を置いた。
「……なぜ、俺にそういうことを教える」
「困っているお客様に、知っている情報をお伝えするだけです。前も申しました」
「俺は元、魔王軍だぞ」
「今のあなたは、コーヒーを飲みに来たお客様です」
ドグマは長い沈黙の後、コーヒーを飲んだ。
「……俺は、人間がこういうことをするとは思っていなかった」
「どういうことですか」
「見返りなしに、助けることを」
カインは少し間を置いた。
「見返りがないわけではありません。お客様が元気でいてくださると、またここに来てくださるので」
ドグマは低い声で笑った。魔族が笑うのは珍しかったが、それは確かに笑いだった。
「商人のような考え方だ」
「商売ですので」
「……この店は、面白い」
ドグマはコーヒーを飲み干した。代金を置いて立ち上がった。今回は正確な金額だった。
「仕事が決まったら、また来る」
「お待ちしております」
「コーヒー、もう少し甘くしても良いと思う」
「砂糖を増やしますか」
「いや、豆の選び方で変えられないか」
カインは少し考えた。
「次来たとき、少し変えてみます」
ドグマは頷いて、扉を出た。
大きな背中が路地の向こうへ消えた。
カインは豆の棚を眺めた。
甘みの強い豆。少し探せば見つかる。
次に来るときまでに、用意しておこうと思った。




