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王都のお一人様カフェ SOLITAIRE ソリテール  作者: yuruhuwa回路


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25/65

王女と縁談の続き

 エルナが次にSOLITAIREに来たのは、縁談の返事をした翌日だった。


「断りました」


 扉を開けるなり言った。


 カインは静かに言った。


「そうですか。紅茶をお持ちします」

「ください」


 エルナは席に着いた。いつもより表情が晴れていた。


「父はかなり怒っていました。外交的な意味があったから。でも私、ちゃんと話しました。あの人とは結婚したくないと。理由も説明しました」

「お父上は聞いてくださいましたか」

「最終的には。すぐには無理でしたが、三日かけて話しました」


 紅茶が来た。エルナは一口飲んだ。


「ここに来てから、少し変わった気がします、私」

「どのように」

「前は、嫌なことがあっても、まあいいか、と思っていた。王族だから仕方ない、と。でも最近、仕方なくないことと仕方ないことを、ちゃんと分けて考えるようになった」

「それは良い変化だと思います」

「ここのせいだと思う」

「ここが何かをしたわけではないと思いますが」

「でも、ここに来ると、自分のことを考えられる。誰にも邪魔されずに」


エルナはカップを置いた。


「王族って、一人でいられる時間が少ないんです。常に誰かがいて、常に何かを求められる。一人になれる場所が、本当にない」

「それは大変ですね」

「カインは、一人でいる時間、好きですか」

「好きです」

「羨ましい」


 カインは少し間を置いた。


「エルナ様は、ここにいる間は一人でいられますか」


 エルナはしばらく考えた。


「……そうですね。ここにいる間は、不思議と一人でいられる気がします」

「それであれば、ここが少しはお役に立てているかもしれません」


 エルナは笑った。


「もっと大袈裟に喜んでもいいのに」

「性格上、難しいです」

「知ってる」


 エルナは紅茶を飲み終えて、本を取り出した。今日は長居するつもりらしい。


 カインはそれを見て、新しい紅茶をポットごと持ってきた。


「長くなりそうだと思いまして」

「ありがとう。気が利く」

「それが仕事ですので」


 エルナは本を開いた。


 窓の外に春の光が差し込んでいた。


 王女は、王都の片隅の小さなカフェで、誰にも邪魔されずに、ただ本を読んだ。


 それが今日の彼女には、何より大切なことだった。

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