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王都のお一人様カフェ SOLITAIRE ソリテール  作者: yuruhuwa回路


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11/49

英雄と剣聖、店の外で

 その日、アレンとミレイアは奇妙な形で鉢合わせた。


 SOLITAIREの扉の前で、二人同時に手を伸ばしたのだ。


 二人は一秒間、互いの顔を見た。


「……先にどうぞ」とアレンが言った。

「いや、あなたが」とミレイアが言った。

「いや、本当に」

「私もそう思ってる」


 沈黙が続いた。路地に風が吹いた。


 結局、二人とも扉を開けずに、壁際に少しずれて立った。


「……満席か」とアレンが言った。


 中を覗くと、六席すべてに客がいた。SOLITAIREが満席になるのは珍しかった。


「待つ?」とミレイアが聞いた。

「待つ」とアレンが答えた。


 二人は並んで、路地の壁にもたれた。


 しばらく無言だった。お互いに相手が誰か知っている。でも声をかけることには慣れていない。ここでは客同士は干渉しないのが暗黙のルールだ。


 ただ、ここは店の中ではなかった。


「……何年ぶりだろう」とミレイアが先に言った。

「冒険者ギルドで会って以来か」

「三年くらいか」とアレンが答えた。

「あのとき、ミレイアは依頼書を半分ちぎってギルドマスターに投げつけてたな」

「あれはギルドマスターが悪い。報酬の計算が間違ってた」

「そうだったな」


 また沈黙。


「……ここ、よく来るのか」とミレイアが聞いた。

「まあ」

「私も最近よく来る。なんか……落ち着く」

「わかる」


 二人は、それ以上説明しなかった。説明しなくてもわかった。同じ理由でここに来ているとお互いに察していた。


「俺は最近、本を持ってくるようになった」とアレンが言った。「何も考えずに本を読める場所が、意外となかったから」

「私はコーヒーを飲みながら、次の大会の相手のことを一切考えない練習をしてる」

「練習」

「意識しないと、考えてしまうから」


 アレンは少し笑った。


「英雄のくせに、なんか普通だな」

「剣聖のくせに、あなたもな」


 二人が苦笑したところで、中から客が一人出てきた。席が空いた。


「どうぞ」とアレンが言った。

「ありがとう」とミレイアが扉を開けた。


 アレンは壁にもたれたまま、もう一人出てくるのを待った。


 二分後、また扉が開いた。アレンは中に入った。


 ミレイアはいつもの席で紅茶を飲んでいた。アレンはいつもの席でコーヒーを頼んだ。


 二人は仕切りで区切られていて、互いの顔は見えなかった。


 でも、同じ空間にいることを、それぞれ知っていた。


 それだけで、なんとなく、十分だった。


 カインはその日の閉店後、特に何も考えずにカップを洗った。


 ただ、洗い物をしながら、少しだけ口元が緩んでいた。

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