9 残念悪魔
俺たちはいつの間にかソリの上に戻っていた。
「危なかったーー!! 死ぬかと思ったわー!
おい人間、お前の尻餅を着いた時の顔!
あれは最高だったぞ!!」
目の前の悪魔がゲラゲラと笑い転げている。
息を吸う暇もないのか、顔が赤らんでいる。
ムカついたのでヘッドロックをかましてやろうかと手を伸ばしたが角が邪魔で上手くできない。
代わりに右足を思いっきり踏んでやった。
「痛ッッッ! 痛い痛い痛い! 人間っ何をする!」
「痛いだと? 理由が分からない様ではこの足をどけることはできないなあ」
ギリギリギリギリ。なるべくダメージを通すために体重をかける。
「分かった。悪かった。私が悪かった」
悪魔が謝罪してくる。
俺は怒りと疑問を悪魔にぶつけた。
「おい、悪魔。なぜ家の中に俺を置き去りにしようとした。家の外に帰すくらいしてもいいだろう」
「いや、無理だ。配達が終わるまで私たち悪魔はこのソリ内部と配達先の子供部屋以外に行くことはできない」
どうやら悪魔には行動制限があるらしい。
「だったら、先使った転移する魔法みたいなのを俺にかけて家の外にだせばいいだろうが」
「いやそれも無理だ。転移は魔法ではなく神が与えた奇跡だ。子供部屋とソリ内部の空間をつなぐことしかできない。これは私たち下級悪魔が仕事をサボることができないように、上から施された対策なんだ」
なんか悪魔も世知辛い。コイツが急に可哀想になってきた。俺は足をどけてやる。
「人間に踏まれたのはこれが初めてだ。中々貴重な体験をした。仲間に自慢しよう」
コイツなんだか残念悪魔だな。
優しくしてあげよう。
俺は立ち上がる悪魔に手を貸した。
「む、すまないな。助かる。ん? なんだ? その生暖かい目は?」
俺は何も言わずにただ首を振った。
ヤニ臭い悪魔っていうより残念悪魔になりました。
最初はcv.津田健次郎意識してたんですけどね。
副題を「ヤニ臭い」→「残念」に変更します。
タバコシーン冒頭しか入れられてないし。
戻して欲しい人いたら感想欄で教えてください。




