15 エピローグ
〈ヴーヴーヴーヴー〉
スマホの音で飛び起きた。スマホを見て安心する。良かった。上司からの連絡じゃない。
いつも通りの目覚ましだ。
今5時か? 冬は朝も暗くて時間が分からない。
寒さのせいか頭が少し痛む。
いや、慢性的な睡眠不足のせいかもしれない。
昨日の夜どう帰ったかどうしても思い出せない。
(もしかして酒を飲みすぎて頭が痛いのか?)
痛む頭を押さえながら俺はシャワーを浴びに浴室へ向かった。
浴室から出て、急いでシャツを羽織る。
風呂上がりはとにかく寒くて叶わない。
着替え終わったらひげを剃る。水が冷たい。
朝ご飯を何かしら食べるのは大切だ。
朝のニュースを見ながらいつも通りパンを食う。
焼いてる時間が勿体無いので、そのままマーガリンを塗りたくってかぶりつく。
今日もどっかの誰かが自殺したニュースが流れてきた。関係ない赤の他人が死んだはずなのに、ザラリとした舌が俺の心臓を無遠慮に舐め上げる。
テレビを消して朝飯をとっとと食い終わる。
洗面所に行き歯を磨く。
時計も忘れずにつけた。
昨日上司から押し付けられた書類もしっかりカバンに入れた。
あとは靴下を履くだけだ。
そう思って靴下の引き出しを開けた俺の前に、
何かで膨らんだ大きい靴下が出てきた。
(こんな靴下俺持ってたっけ?)
訝しみながらその靴下の中を除いてみると、俺名義の辞職表とよく分からない封筒、そして一本のタバコが出てきた。
そう言えば昨日はクリスマスイブだったなと思い出す。
酔っ払った俺が昨日何かしたのだろう。
苦い気持ちで封筒を開くと、中の便箋にはこう書いてあった。
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なぜ大人はクリスマスプレゼントを貰えないのだろう?
大人が金を持っているから?
大人になると現実を知るから?
違う。
大人になると本当に欲しい物は自分で手に入れるしかないからだ。
誰かに頼めば簡単に貰えるものが欲しいんじゃない。
自分でしか手に入れることができないものを、
大人は心の底で欲しがっている。
中々手に入らないかもしれない。
手に入れるまで時間も労力も必要かもしれない。
だから欲しい物を諦める大人もいる。
欲しい物が分からなくなってしまった大人もいる。
そんな大人は気づいていない。
既に沢山のプレゼントを誰かから貰っていることを。
あなたが1番欲しい物ではないかも知れない。
けれどどれも大事なプレゼントだ。
そのプレゼントを大事にすれば1番欲しい物に手が届く日が来るかもしれない。
大人はプレゼントを与えることもできる。
もし1番欲しい物が手に入らなくても、
あなたの贈ったプレゼントの連鎖は巡り、
やがてあなたが1番欲しかったプレゼントを世界中の子供たちに届けることになるだろう。
今日私は君に勇気というプレゼントを贈る。
使い方は君次第だ。
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―Merry Christmas―
タバコには誰かの文字でそう書かれていた。
これにておしまい。
最後まで読んでくれてありがとうございました。
初めて小説書いてみて、ルールとか読みやすさとか全然分からなかったけどなんとか書き上げました。
結果途中でルールを知って改稿するという情けないことになってしまいました。読者からすれば気持ちの良い行動ではなかったと思います。すみませんでした。
このあと活動報告で制作に至った経緯などを上げるので良かったら見てください。それではよいお年を。




