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14 最終話:クリスマスプレゼント

 残すところもあと一軒。

 が、最後のプレゼントが何故か見当たらない。

 ここに来てもしや発注ミスか?

 悪魔に聞いてみる。


「おい、悪魔。最後のプレゼントが見当たらないが。発注ミスとか大丈夫なのか?」

「ああ、問題ない。大丈夫だ。」


 悪魔はニヤリと笑ってこちらを見る。

 コイツの笑顔も随分見たが、何度見ても凶悪な顔が歪むと迫力がある。そう言えば最初にコイツの笑顔を見たときは失神してしまった。

 思い出すとなんだか可笑しくて笑えてくる。


「ところで、最後の家はどの地域にあるんだ。」

「東京都品川区とかいう場所だ。」


 俺は安心して胸を撫で下ろす。俺の住む家もその区にある。最後の家付近で降ろしてもらう予定だったが、もう終電がない可能性もある。どのくらい歩くのか心配していたのだ。

 ソリで家まで送ってもらうのはなんだか気が引ける。悪魔も仕事が終わったら早く帰りたいだろう。


 しばらくすると見慣れた景色に出くわした。

 俺がいつも使っている駅だ。もう夜だからか人の気配はない。

 あの少し薄汚れた白い建物は駅前のスーパーだ。俺はコンビニにしか行かないので入ったことはないが、住宅街では少し目立つ5階建の建物には、店のロゴの入った看板がでっかく取り付けられている。

 このやけに目立つ看板を必ず見てから出勤するのがいつの間にか朝の日課になっていた。


 どんどん見慣れた景色が増えてくる。もしやご近所さんか?訝しむ俺に悪魔が話しかけてきた。


「おい、トビオ。お前のおかげで今年のクリスマスイブは楽しかった。その礼だ。」


 礼?なんのことか分からない。

 困惑する俺に悪魔がソリの外を指し示す。

 俺にソリの外を見てみろということだろう。

 なんだ、I LOVE YOUの言葉でも書いてあるのか?

 半ば冗談のようにそう思って俺は下をのぞいた。

 俺の住むアパートらしき建物が目に入る。

 

 いつのまにか俺の家の上に来ていたようだ。

 どうやら家まで送ってくれたらしい。

 家の住所は言ってないはずだが。

 これが悪魔の超パワーかもしれない。


「なんだ、家まで送ってくれたのか。最高のプレゼントじゃないか、ブロゴリー。ありがとう。俺も楽しかった。」


 明日には記憶が消えてるんだ、少し恥ずかしいが素直に礼を言う。今言う必要があった。もう俺がこの悪魔に会うことはないだろうから。


「何、気にするな。では達者でな」

「ああそちらこそ元気で」


 俺たちは互いに笑い合う。

 出会いは奇妙だったが別れは驚くほどあっさりだ。

 あいつの顔が少し寂しそうに見えたのは気のせいか。

 

 白い光が優しく俺の体を包む。



 「さらばだ。友よ」


 悪魔が凶悪な笑みを浮かべるのが最後に見えた。



◆◇◆◇◆◇

 

 時計は24時を回っている。

 気づくと俺は自分の家に1人で佇んでいた。

 いつ着けたのか電気がついている。

 どうやって家に帰ってきたか思い出せない。

 ずっとパソコンで書類を打ち込んでいたからか、

妙に尻の当たりが痛かった。

 それにいつにも増して足も疲れている。

 俺はすぐさまベッドに倒れ込んだ――――。

 

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