11 悪魔の罠
次の家は青い家の屋根だった。
上から見た感じ電気は点いてない。
悪魔がこちらを見てくるので俺はしっかり頷き返す。
視界が白色に染まった。
目を開ける。
ピンクの花柄模様が描かれた壁。
棚に置かれたキャラクターの小物。
そこは女の子らしいファンシーなお部屋だった。
カーテンは薄紫色でなんだか良い匂いがする。
自身から犯罪の匂いも漂ってきた。
いかんいかん。今の俺はサンタさん。
変態紳士などでは決してない。
音を立てないように暗がりを見回すと、少し奥に少女がベッドで穏やかな寝息を立てていた。
すーっすーっという寝息が大変可愛いらしい。
思わずそちらに引き寄せられる。
近くで見ると更に―――。
ハッ! 危ない所だった! ギリセーフ!
いや違うんだ。これは誤解だ。
先輩たちがお弁当を食べながら娘の話を幸せそうにするもんだから、姪っ子俺にも出来ないかなとずっと妄想してた、本当にただそれだけなんだ。
自分に自信をなくしかけている俺に、隣に来た悪魔がプレゼントを渡してくる。
どうやら俺にやってみろということらしい。
ラッピングされたプレゼントをそっと少女の枕元に置く。プレゼントの大きさ、中身の軽さと感触からぬいぐるみであることが分かった。
少女を起こさないようにそーっと手を引く。
よし。上手く行ったみたいだ。
なんとも言い表わせない多幸感でいっぱいになる。
幸せそうに眠る少女の顔を見ると、こっちまで幸せな気分になったみたいだ。
悪魔と頷き合い、その家を後にした。
その後も着々と他人の家に不法侵入してはプレゼントを置いて回った。
悪魔から聞いた話では毎年10軒ほどの家々を周り、徹夜してプレゼントを置いていくのだとか。
サボったりして翌日の朝までにプレゼントを置けなかった悪魔には、それはそれは恐ろしいペナルティーが課せられるそうだ。
気になってペナルティーの内容を聞いてみたが、悪魔は震えるだけで決して口を割ろうとはしなかった。ブルってる悪魔が余りにも恐ろしい顔をするので思わずこちらもブルってしまう。チビッテナイヨ。ホントダヨ。
これ以上、この話題は避けた方が良さそうだ。
◆◇◆◇◆
そうこうしているうちに、残すところあと2軒になった。悪魔が鼻歌交じりで上機嫌だ。
「おい人間。だいぶ慣れてきただろう。どうだ? 次は1人で行ってみないか?」
突然何を言い出すんだこの悪魔は?
「1人で行ける訳がないだろう。誰が家からここに戻してくれるんだ」
「それは問題ない。俺はここからお前の状況を逐一観察できる。お前がヘマしそうになったらすぐ戻してやる。それに今のお前は界が曖昧だから、もし見られてもすぐに忘れられるだろう」
聞けばサンタとして働く前の新人悪魔の教育もこのような形で行われるらしい。
1人で行って帰ってきて初めて一人前のサンタクロースとして認められるとか。
一人前のサンタクロース……。
こんなチャンスは2度とない。
サンタっ子だと自負する俺はこの提案を受け入れるしかなかった。
そう、これが悪魔の罠だと知らないまま……。




