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第4話:ドジっ娘騎士アイン

 朝・・・俺はふかふかのベッドの上で目を覚まして起き上がる。何週間ぶりの布団だろうか?よく眠れた気がする。昨晩もしっかり魚料理は食べられたから良しとしよう。寿司ではなかったが。


「・・・にしても。」


部屋を見渡しながらしみじみ思う。まさかあの女とパーティを組むことになるとは思いもしなかった。これから大変になると思うがまぁいい。せいぜい楽しみに・・・と思っていた矢先、下の階で何かが爆発したような音と共に黒煙が上がり始めた。・・・おい、まさか。


嫌な予感は的中した。キッチンに入ると全身真っ黒なススを浴びて呆然としているアインがフライパンの上に食材だったであろう炭をじっと見つめていた。


「お前・・・何してんだ?」

「あはは・・・朝食作ろうとしたら失敗しました。」

「どんな料理したらああなるんだ・・・。」


照れるアインに呆れた表情を浮かべると彼女はとんでもない事を口走る。


「あはは・・・揚げ物を作ろうとしたら油入れすぎたのでお水を・・・」

「そんなもん揚げ物に入れんな!!!」


揚がった油に水を入れたと言い放ったアインに俺は驚きを隠せなくなる。コイツ・・・本当に大丈夫なのか?


「兎に角、怪我がなくて良かった。」

「あ、はい。すみません。心配してくれて・・・」

「勘違いするな。俺達はパーティを組んでいる。そんな相手がダンジョンに行けなくなったら元も子も無いだろう。もういい。俺が料理するから座ってろ。」


俺はいつもの調子に戻り、アインを退かせると厨房に立って今ある食材を確認する。今あんのはジャガイモ二つにパン一斤、ソーセージが数本と卵、そして一尾の魚か・・・料理は人並だが経験が無い訳じゃない。・・・やるか。


慣れた手つきで包丁を巧みに扱い、魚を捌くとじっくり煮込んで出汁を取り、それを卵と一緒に溶いてフライパンで焼いていき丁寧に形を整えていく。その間、ソーセージをグリルで焼いていき、ジャガイモを蒸して潰すと野菜と一緒に混ぜていく・・・。


「できたぞ」


料理を終え、出来上がった朝食をアインに持っていくと彼女は目を輝かせる。パン二枚と野菜が入ったポテトサラダ。グリルしたソーセージ二本に魚の出汁で作っただし巻き卵・・・朝食としては申し分ない献立だ。


「す、すごい!いただきます!・・・んん!美味しい!」


アインは料理を口に運ぶや否やそう言って次々と口に運んでいく。コイツ、見た目の割に良く食うんだな。まぁ、良いことだが・・・やっぱりコイツと居ると調子が狂う。悪い気はしてないが・・・。


「ご、ごちそうさまでした!!」


俺の分を少しだけ貰って平らげたアインは満足げな笑みをこちらに向ける。口に合って何よりだ。


「ジークさんって料理が上手いんですね・・・。」

「ジークで良い。これでも料理の腕は人並だ。」

「えっ?そんなことないと思いますよ?」


アインは珈琲を飲み終えて割賦をテーブルに置きながら言った。


「ジークの人を気遣ってる優しい味がしました。特に卵焼きは!」

「そうか・・・あとあれは出汁巻き卵だ。」


出汁巻き卵を気に入ってくれたアインに少し嬉しくなる。あれ、俺が世話になった人が大好物だったからな・・・腕を磨いた甲斐がある。と心の中で呟いているとテーブルの隅に置いてある写真が目に映った。


幼い頃のアインだろうか?そんな彼女を笑いながら肩車している老人は誰だろうか?


「それ、私のお祖父さんです。」


写真を見たことに気付いたアインが俺にそう答える。


「私、お祖父さんの様な強い冒険者になりたくて冒険者になったんです。お祖父さん、ああ見えて結構凄腕の冒険者だったので。」

「成程な。それがお前が冒険者を始めた理由か?」


俺の言葉にアインは静かに頷いた。祖父は如何にも強そうだが孫のコイツはまだまだと言ったところだろう。・・・お祖父さんか。そういえばこの爺さんの姿を今まで見てねぇな。


「そう言えばお前の爺さんはどうしたんだ?」

「・・・二年前に亡くなりました。」

「・・・そうか。悪いことを聞いたな。」

「ううん。大丈夫です。」


アインは優しく微笑みながら俺に顔を向ける。


「きっと天国で私の頑張りを見てくれている筈ですから。」

「・・・あぁ、そうだな。」


健気な彼女の笑みに俺もまた微笑みを返す。パーティを組んだ相方と初めて過ごす朝は何処か焦げ臭くも心地の良い時間となるのだった。


◇◇◇


 朝食を食べ終えた俺は早速アインを連れてギルドへと向かう。理由は勿論、彼女に冒険者の知識を叩きこむ為だ。強くなりたいと言って声を掛けてきたのだから望み通りにしてやろうと思う。


「お前には先ず冒険者の基本を教えてやる。先ずは依頼だ。お前は依頼を受けるとき何を基準に受けている?」


俺の問いにアインは思い他、直ぐに答えを出した。


「えっと・・・カテゴリーです!」


ほう?意外とよく分かってるじゃないか!と関心するも束の間・・・


「カテゴリーが同じだと戦いやすいので!!」


次に出てきたその答えに俺は落胆する。・・・前言撤回だ。お前は何も分かっちゃいない!


「自分と同じカテゴリーの魔物を倒しても無駄だ。依頼で選ぶのは自分よりカテゴリーが上の魔物を選ぶんだ。」

「えっ・・・それは私怖いです・・・」

「じゃあ、なんでお前は冒険者になったんだ?」


自分より格上の魔物を怖がるアインに溜息を吐く。はぁ・・・冒険者としての歴はそんなに深くないがこんな臆病な冒険者、後にも先にもコイツだけだろう。


「そもそもカテゴリーが一つ上になってもそうそうやられることはねぇよ。」

「えっ?そうなんですか?」

「寧ろ魔物の格付けは敢えて高く付けられている。だからお前はカテゴリーⅠのゴブリンを倒すよりもカテゴリーⅡの魔物を倒したほうがいいってことだ。」


そう言いながらギルドに着くと中に入ってロビーで足を止めた。


「取り敢えず今回はお前のカテゴリーを上げる事にしよう。Ⅰのままじゃ戦闘もロクに出来ねぇからな。」

「じゃあ・・・Ⅱの魔物を倒すんですか?」

「いいや違う。」


不安げな表情をするアインに俺は悪意のある笑みを浮かべて言った。お前を強くする為だ。悪く思うんじゃねぇぞ?


「・・・Ⅲだ。」


俺の放ったカテゴリーの階級を聞いた途端、彼女はまるで死刑宣告を受けたような顔を浮かべて大声で喚き出した。


「いやぁーっ!!無理無理無理無理ッ!私そんな魔物倒せましぇーん!!!」

「逃げんな馬鹿!あとデカい声で吠えんじゃねぇ!!!」


今にも逃げだしそうなアインを捕まえて制止するも余りにも大きな声で叫ぶせいか受付と他の冒険者達が一斉にこちらへ目を向けた。


あぁもう・・・めんどくせぇこの女。なんで俺がこんな奴のお守りをやんきゃならねぇんだ?本当にコイツ、強くなりてぇのか?全く手のかかる奴だ。・・・なのに悪い気はしねぇ。なんでだろうな。


兎に角先ずはコイツを落ち着かせて・・・


「おや?誰かと思えば昨日の竜騎士じゃないか。」


ふと、誰かに声を掛けられて顔を上げると昨日、俺を勧誘に失敗して凹んだあのキザ男の姿が視界に映った。

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