第3話:一人(ソロ)を好む竜騎士とドジっ娘騎士がパーティを組む!?
私はグリフォンを難なく倒した少年を見る。その背中はとても大きく勇ましくそして誰も寄せ付けない畏怖さえも与えていた。
凄い・・・!こんな冒険者が身近にいたなんて。私なんて・・・。
そう思いながら掌を見つめる。冒険者を始めてからやや数週間・・・新品だった鎧は泥と傷だらけおまけに槍も使い物にならなくなった。
いつまでもこんな自分でいいのだろうか?そんなの絶対に嫌だ!だから・・・!
「あっ!ちょ、ちょっと待ってください!」
意を決して私は立ち去ろうとする少年に声を掛けた。
「なんだ?」
ギロッと睨んでくる彼を恐れそうになるがそれでも怯まずに尋ねた。
「どうしたら貴方みたいに強くなれますか?」
◇◇◇
俺は力無くそれでも勇気を振り絞って声をかけてきた少女を見る。あれだけ逃げろと言ったのに聞かなかったのはこの為か?だとしたらとんだ命知らずだ。
まあいい。質問には答えてやるか。だがどう答えようか?そこは適当に返そう。
「お前は強くなりたいのか?」
「は、はいっ!強くなりたいです!」
「だったら何故、俺にその質問を聞いてくる?」
「えっ?」
俺の答えに少女は戸惑いの表情を浮かべた。
「俺は強くなりたくて強くなったんじゃねぇ。一人でダンジョンを潜りたくて強くなっただけだ。お前はそうじゃないだろう?俺にその質問は野暮じゃねぇか?」
「それは・・・そうですけど。」
自信を無くした少女は目を逸らして力無く呟くと俺はふと、彼女の腰にある剣が目に入った。
あの剣・・・なんだ?如何にもただものじゃ無さそうだ。剣にはそんなに詳しくないが俺も鬼丸国綱という名刀を使ってる位だ。普通の剣じゃないってことは火を見るより明らかだ。
お前、何者なんだ?なんでそんな代物を?
「・・・まあいい。とりあえずここを出るぞ。長居してたらまた厄介な魔物と戦う羽目になる。」
「は、はいっ!」
少女は立ち上がってそう返事をすると俺は彼女を連れてダンジョンを後にするのだった。
◇◇◇
ダンジョンを脱出し、ギルドから報酬を貰った俺は夜のノルドタウンの街を見渡す。今日は疲れたな。ただグリフォンを倒すだけだと思っていたがとんだ人助けをしちまった。・・・アイツ、ダンジョンを出ても頑なに俺に付いてきたから無理矢理振り払ったが・・・大丈夫だろうか?
「何、人の心配してんだ。らしくねぇ。」
首を横に振っていつものペースを取り戻す。人の心配するなんて俺も焼きが回ったな。いや、疲れているだけかもしれない。早く美味い寿司でも食って休みたいところだ。
「とは言えギルドの連中に聞いたら宿は全部満室とか言ってたが冒険者の都ってこれが普通なのか?どうするかな・・・。」
泊まる宿が無くなり途方に暮れてしまう。今日もまた野宿か?どうするか?そう思い詰めていた時だった。
「あ、あのっ!」
声を掛けられ振り返ると思わず目を見開いて驚いてしまう。そこにはなんとあの少女がやや息を切らしながら立っていた。なんでコイツいつの間に!?いつから付けられていたんだ!?・・・しつこい奴だ。
「何の用だ?そろそろしつこいぞ。」
「あうぅ・・・ご、ごめんなさい。でも・・・わ、私・・・どうしてもお願いがあって・・・」
たどたどしい口調ながらも頑張って俺に話す少女は自分のお願いを告げてくる。その内容はとても驚くべきことだった。
「わ、わ、私と!パーティを組んでくれませんか?」
耳を疑った。コイツ正気か?俺とパーティを?何の冗談だ?・・・ふざけるな!
「チッ、なんで俺がお前とパーティを組まないといけないんだ?俺はそんな気は無い。他をあたれ。」
「い、嫌です!私・・・貴方と組みたいんです!」
「それは俺が竜騎士だからか?」
ギロッと少女を睨みつけ畏怖させる。俺を勧誘してくる奴は大抵、職業の竜騎士目当てだ。そんなろくでなしは幾らでも見てきた。こいつもその馬鹿の一人だろう。と嘲笑い諦めの言葉を待った。
「あの・・・私、竜騎士がどれだけすごい職業か分からないんですけどそういうのじゃなくて・・・私、貴方みたいに強くなりたいんです!本当です!だって・・・竜騎士が何なのか分かってないですから!」
あぁ・・・そうだった。お前は冒険者の基本の「き」の字も知らない馬鹿だったな。・・・だが、その馬鹿に俺は今、初めて信頼の二文字を覚え始めている。本当に強くなりてぇんだなお前。その気持ち、俺にも伝わってくる。後は・・・そうだな・・・
「・・・そうか。お前、住む場所は?」
「ふえっ!?え、えっと・・・あります!お祖父さんが昔住んでた家に・・・住んでます。」
よし、交渉成立だ。微かに微笑んだ俺は颯爽とした足取りで歩き出す。
「あ、あの!どこ行くんですか?」
「決まってるだろ?お前の家だ。パーティを組んでやる。その代わり家に上がらせろ。」
そう答えた途端、少女はパーッと笑顔を浮かべて元気よく頷いた。
「は、はい!ありがとうございます!あっ・・・私、アインです!」
「・・・ジークだ。早く行くぞ。アイン。」
「はい!・・・ってうわあっ!?」
アインが歩き出した次の瞬間、彼女は何もない地面で派手に転んでしまい、俺は唖然としながらこう思うのだった。
コイツ、本当に冒険者をやれるのか?・・・と。
こうして一人を好んでいた俺はドジな騎士・・・アインとパーティを組むことになる。明らかに正反対な俺達・・・だが、この時はまだ知る由もなかった。
コイツが俺の運命を大きく変えてくれる切っ掛けになるということを・・・。




