第1話:孤高の竜騎士
登場用語
冒険者
この世界で活躍する者達でモンスターの討伐や傭兵家業等の依頼を請け負って生計を立てている。
パーティ
冒険者が2人以上の者達と組んで活動するときの呼称。パーティ結成時はチームの名前を決めて活動できる。
ギルド
どの街にも必ずある施設で冒険者達の格付けやモンスター討伐の依頼を集めている。
ポンド
この世界のお金。現実世界のイギリス通貨と同じ呼び方であるが単価は1円=1ポンドである。
カテゴリー
冒険者やモンスターの強さを現す指針でⅠ〜Ⅹまでの階級があり、数字が高ければ高い方程強い。とくに冒険者はこの高さがなによりも重視される。名前の由来と設定のモデルはトランプの強さの順の呼び方から
スート
冒険者が所属する職業や属性を現す。職業欄には必ず騎士の名前が付いており、単純に騎士が職業の冒険者も存在する。属性欄はスペード、ダイヤ、ハート、クラブの4つに別れており、それぞれ水、火、土、風の属性を持つ。職業は変えられるがスートを変えることは出来ない。名前の由来と設定のモデルはトランプのスートから
「・・・あれがノルドタウンか。」
心地よい風が吹く丘の上・・・俺、ジークはやや遠くに見える街並みをじっと見つめた。見るからに賑やかそうな町だ。まぁ、暫く寛げる場所があるなら悪くはない。
前の街まで数日間も野宿しながら歩いてきた。そろそろ布団を被って寝たいところだが・・・
「先ずは魔物の討伐からだな。」
掌にある申し訳程度の小銭を見てそう呟く。ここまで来るのに手持ちの金を結構使った。旅をすると何かと消耗品が増える。
俺は冒険者としてこの世界を旅している。冒険者というとただただ旅をしているお気楽な連中という印象があるが実際は違う。俺達は【ダンジョン】と呼ばれる魔物の住処に入り、人間の住むエリアを侵している魔物を討伐して生計を立てているのだ。
中には複数の冒険者と組んで旅をする【パーティ】なんてもんがあるが俺はそういう仲良しこよしが大嫌いだから絶対に誰とも組まないようにしている。
・・・パーティを組んであの二の舞になるのだけは御免だからな!!
「よし、行くか。」
着慣れた甲冑の様な赤い鎧を揺らしながら歩みを進め、目的地のノルドタウンへ辿り着く。噂には聞いていたが冒険者が多いな。【冒険者の都】の異名は伊達じゃないらしい。
「先ずは軽く魔物を倒しに行くとしよう。ギルドは・・・あそこか。」
街に着くや否やモンスター討伐の依頼を斡旋している施設【ギルド】に向かい、賑わう冒険者達を他所に馬鹿でかいテントの中に入ると躊躇うことなく受付の前まで歩み寄った。
「いらっしゃいませ」
「すまない。魔物討伐の依頼は無いか?」
「希望のカテゴリーを伺います。」
「Ⅵだ。」
「・・・はい?」
俺の回答を聞くや否や受付の女性は先程までの淡々とした口調と共に眉間に皴を寄せ、こちらを睨んだ。まるで「お前、何言ってんの?」って感じの目だ。
「Ⅵ・・・って。貴方、一人ですよね?」
「だったらなんだ?」
「いや、カテゴリーⅥ級の魔物なんか一人で倒せる訳ないでしょ?初心者ですか?」
「・・・チッ」
舌打ちするも思わず腰にある刀を抜く手を止める。・・・落ち着け。こんなくだらない事で殺生する奴は馬鹿のやることだ。
「文句があるなら俺のステータスを見てから言え。」
「はいはい分かりました。どうせロクなステータスじゃ・・・」
俺の前に表示されたステータス表を確認した途端・・・受付の女性は暫く固まってから大きな声で驚愕する。
「え、ええっ!!カテゴリーⅤ!?しかもダイヤの・・・”竜騎士”!?」
彼女の放った職業の名にその場にいた冒険者全員が俺に注目した。チッ・・・この女。めんどくせぇことしやがる。
「お、おい!竜騎士だって!?」
「マジかよ!!初めて見たぜ!!」
冒険者達は一斉に俺を取り囲むと我先に我先にと話しかけてくる。
「お、おい!アンタ!一人なんだって?俺のパーティに来ないか?女もいるし生活にも困らねぇぞ!」
「いいえ!こんなスケベなおじさんじゃなくて私のところに来なさい!」
「いやいや!俺の所に来い!国王様ともパイプがつながってんだぜ?」
鬱陶しい・・・ダンジョン内なら全員斬り捨ててるところだ。俺の職業を聞いた途端これだ。しかしどうするか?こいつら帰してくれなさそうだ。やっぱり全員・・・そう思って刀に再び手を掛けた時だった。
「おい」
一人の男が俺の前に出てくると俺に詰め寄ってくる奴らを退かせた。
「お前達ダメじゃないの~人に迷惑かけたら冒険者失格だぜ?」
「あ、アンタは・・・!!バジルさん!」
「あのフォーカードを率いるバジルさんだ!!」
バジル・・・聞いたことがある。確かカテゴリーⅦ級のパーティ【フォーカード】を率いる凄腕の冒険者だったか?コイツもノルドタウンに来ていたのか。
「ご機嫌よう。俺はバジル。フォーカードのリーダーだ。・・・ほう?一人でカテゴリーⅤ、それにダイヤの竜騎士か・・・いいねぇ。」
バジルは笑みを浮かべると俺の前に手を差し伸べてくる。
「俺はこいつらとは違う。でも欲しいものは手に入れたい性分なんだ。お前、一人にしておくのは勿体ない。どうだ?俺の所に来ないか?」
そう言って俺を勧誘したバジルにその場の誰もが驚愕し始めた。
「おい嘘だろ!あのバジルさんが勧誘!?」
「バジルさん本人はパーティの勧誘は滅多にしねぇのに・・・流石は竜騎士だぜ!」
「負けたぜ!バジルさんに譲るしかねぇな。ありゃ」
多くの冒険者が羨望と悔しさを滲ませて俺とバジルを見守る。フォーカードに入れば一生食っていけることが約束され、名声も同時に手に入れる可能性がある。正に冒険者の登竜門と言えるパーティ・・・誰もがこの誘いに俺が乗ると確信した。・・・だが、俺の答えはいつも同じだ。
「・・・くだらねぇ。」
差し出された手を振り払い、俺はキョトンとする馬鹿を睨んだ。
「竜騎士だからなんだ?所詮それ目当ての勧誘だろ。そんなので誘われんのはまっぴらごめんだ。仲良しこよしがしたけりゃ他所でやれ。俺は誰とも組まねぇって決めてんだ。」
「なっ・・・お、俺が・・・勧誘失敗?嘘だろ?えっ・・・?えぇ?」
「まずいぞ!バジルさんが!!」
無様に崩れ落ちたバジルを周りの人達が介抱しているのを他所に俺は受付に顔を向ける。・・・時間の無駄だ。とっとと済ませよう。
「おい、依頼を出せ。」
「えっ・・・あ、はい!どうぞ!」
受付は戸惑いながらも依頼の書いた紙を渡してくると俺はそれを受け取り、喧騒が未だ響くギルドを颯爽とした足取りで出て行った。
◇◇◇
「えぇ~これだけしか貰えないの~!?」
ギルドの外にある換金所・・・そこで傷だらけの少女の声が響いた。よく見ると彼女の前には何とも言えない高さの小銭の山があった。
「これだけ頑張っても900ポンドって・・・」
「仕方ないですよ。カテゴリーの低いゴブリン数体に一人じゃこれが相場なんです。」
落胆する少女に受付はそう言った。
「やっぱりアインさんもパーティに入ってはどうですか?」
「うーんそうしたいのは山々だけど・・・断られるんですよ~」
パーティに入る事を進める受付にアインと呼ばれた少女は不貞腐れた表情で愚痴を零す。
「まぁ・・・確かに最下位のカテゴリーⅠですと難しいですよね。ギルド直結のパーティはどうですか?多くの冒険者はこの制度を使ってカテゴリーを上げてるんですよ?」
「そうだけど・・・自由が利かないし何より・・・」
アインは自身の腰にある神々しい剣を見る。
「こういうやつとか預けないといけないから嫌なんだよね。」
「それって確か・・・お祖父さんの形見でしたよね?」
「うん。でも鞘から抜けないの。でも凄い剣だし形見だから取ってるんだよ。」
受付にそう言うとアインは気を取り直して両手で拳をつくった。
「でも諦めない!もう一回ダンジョンに行きますッ!!じゃあ!そういう事で・・・ほわっ!?」
「あっ!アインさん!!」
歩き出した途端、アインは何もない所で何故か派手に転んで地面に倒れてしまう。そんな彼女を見て受付はやや呆れた様子でこう思うのだった。
・・・本当に彼女は一流の冒険者になれるのだろうか?と。
登場人物紹介
ジーク
所属スート:ダイヤ【火属性】
職業:竜騎士
カテゴリー:Ⅴ
好物:白米、味噌汁、刺身や寿司等の魚料理
イメージカラー:赤
モデル国:日本
本作の主人公。年は18歳。寡黙で他者を寄せ付けない性格だが大抵のモンスターは単独で倒せる程、冒険者としての実力は高い。
赤を基調とした現実世界でいう日本の鎌倉武士のような甲冑を着ており、和弓と刀をメインに扱うが薙刀や槍、剣、斧、銃も巧みに扱える器用さをもつ。今は無き竜の血を引く特別な出自であり、その証拠に祖先であるファフニールの力を扱うことが可能でその力も強大である。またファフニールの再生の炎の力も持ち、大けがを負っても直ぐに回復する。
過去にとあるトラウマがあり、多くの冒険者がパーティを組む中、彼はスカウトされても断るほど一人での活動を好んでいる。
普段は他人には関心がないが実力が乏しい冒険者達を助けたりするなど根はかなりのお人好しである。
名前の由来はゲルマン神話に登場するジークフリートから




