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入学試験

プロローグの少し前の話です。

 二〇六二年。二月某日。

 東京地区江東区有明のとある会場。

 様々な学生服を着た多くの中学生が広大な会場の至る所で霊力試験や霊力検査を受けていた。

 その中の一角。霊力適合率を測定するエリアには、張り詰めるような緊張感が漂っていた。


「適合率六〇(ろくじゅう)%!! はい、次の人!」


「適合率三五(さんじゅうご)%!! 次!」


「適合率五二(ごじゅうに)%!! はい、次!」


 三ヶ所から次々に数値が飛び交う。

 効率的に測定していくため、次から次へと受験者たちを捌いていくベテランの試験官たち。

 突然、一ヶ所から「うおぉ」というどよめきが起こる。


「適合率な、七八(ななじゅうはち)%!!」


 例年でも稀に見る適合率の高さに、これまで何万と見てきたベテラン試験官の思わず驚きの声をあげる。

 周囲から羨望の眼差しを向けられる一人の少年。しかし少年の表情はこれと言って嬉しそうでもなく、どこか冷めているようにも見えた。


「・・・」


 どよめきが落ち着いたのも束の間、別の一ヶ所からざわめきが起こる。

 周囲の学生たちはどこかニヤけた表情で測定結果を見ていた。


「適合率・・・い、(いち)%!!」

「はあ!? 何言ってんだ! ふざけてんのか!!」

「ほ、本当なんですって!」

「そんなわけ・・・」


 機器の測定結果には『一%』と確かに表示されていた。


「こんなの過去最低値だぞ・・・」


 機器のバグかもしれないと、再度測定を試みたが、結果は同じ。

 ある少年が出した適合率一%は公式記録として確定した。

 霊力という異能が体系化されて約一世紀。その長い歴史の中で、一%という適合率は未だかつて誰も見たことがない数値だった。

 その後、少年がひどくガッカリした様子で試験会場を出ていったのは言うまでもない。

 

 この日、『過去最低の適合率を出したヤツがいた』という噂は試験会場に広まり、誰もが不合格だと言って笑いのネタにした。


 合格発表日。

 適合率一%の少年の受験番号は、何度見ても載っていなかった――。

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