第1話 普通に歩ける!!!
私の名前は、エミだった。
生まれつき病弱で、学校にも行けず、ほとんどベッドの上で過ごしてた。
同い年の子が部活だの恋愛だのって騒いでるのを、私はただスマホで見てた。
そんな私の命は、16歳の春に終わった。
この記憶が蘇ったのは、ちがう世界のベッドの上。
小さな村の、小さな家の、埃っぽい布団の中。
たぶん、"異世界転生"ってやつだ。
でも... やっぱり体は弱かった。
窓を開ければ咳が出るし、寝ているだけでも熱が出る。
病弱の運命からは逃げられないんだなって、諦めてた。
そして次の日。16歳になった朝。
「おっはよー!リナ!やっと会えたね!!」
何!?声が、上から?
天井からひょこっと顔を出したのは、銀髪ツインテールの小さな女の子だった。
びっくりして心臓が止まりそうになる。
目が合った瞬間、その子はニッコニコになって、私の周りをハエみたいに飛び回った。
「なっ、なに!?」
「あたしはノノ! 天使だよ☆」
混乱する私に、ノノは色々と教えてくれた。
・私は転生して、前世の記憶が蘇ったばかりということ
・16歳になったことで、”覚醒”が始まったこと
・これから”全ステータス∞”のチート能力が発動すること
「え、ステータスが∞...? それって、どういうこと?」
「さいきょーってことに決まってんじゃん!でも、リナにはそのくらいが丁度いいんだよ!だって、ずーっと我慢してきたもんね!」
なんだか、泣いちゃいそう...。
同い年の子たちからは、ずっとバカにされてきた...。
こんなふうに言ってくれたの、今までパパとママだけだった...。
「16年間、ずーっと待ってたんだよ!!それじゃ、ステータスが∞になるのを見届けよう!」
「え?ああ、うん。ステータス、オープン」
種族: 人間
HP: 12/24
攻撃力: 2
防御力: 5
魔力: 10/10
魔法攻撃力: 2
魔法防御力: 5
敏捷性: 2
「もうすぐだよ!!やっとだね!!」
そう言って、ノノは私に勢いよく抱きついてきた。
ちょっ... 待ってっ... ゴホッゴホッ。
HPが2/24になった。
あっ... 危ない...。
次の瞬間―
「わ!ほんとに全部∞になった!」
「でっしょぉ〜?やったね!!」
体が、軽い。
窓を開けても咳が出ない。熱もない。
むしろ、力がみなぎってる。
魔力の奔流が、体の内側から溢れてくるのが分かる。
「なに... これ... すごい...。ふふふっ」
あれ、私... 笑ってる?
笑っても、肋骨が折れないなんて...。
「この私が... 最強...?」
私は布団から立ち上がった。
普通に歩ける!
いつもより、ずっと速い!!
急いで服を着て、玄関から飛び出した。
外に出るのは何年ぶりだろう。
広がる空、村の道、綺麗な湖...。
窓から見るより、ずっとおっきい!!
そしてきっと、その先にはもっと大きな世界が...!
「私をバカにしてきた人たちを... 見返したい!」
「さぁ、リナ!」
ノノがぴょんっと私の肩に乗る。
「これからいっぱいバカにされて、いっぱい無双して、いっぱいざまぁしようねっ!」
「うん!一緒にいこ!」
こうして私は、ベッドから抜け出した。
“最強魔法使い”としての冒険が、ここから始まる!
次回:旅立ち