96 修学旅行①
ああ、14人も連れて行かなきゃよかった・・・・・。
特急で約4時間。結構な長旅で、皆、少々たいぎ(疲れた)そうだった。
「夏休み以来ね・・・」
けいはちょっと沈んだような声で話しかけてきた。
「んだなぁ・・・」
私も、気のない返事で応じる。
函館駅は夏ほど人は多くない。真冬の平日、さほど利用客は多くないのだろう。車内もそれほどではなかった。
「じゃあ、タクシーで行くかい?」
鈴木洋子が、リーダーとして提案をする。
「いんや、湯の川さ行くんだ。電車に乗るべ。」
一応、元地元民として、最適な手段を告げる。
「そうね、それがいいわね」
御厨先生もそれにそれに同意する。
駅舎を出て、我々、14名は市電の停留所へ歩く。雪の少ない函館とはいえ、寒さはけっこうこたえる。
それなりに観光客が並ぶ中、市電を待つ。
「すぐに、向かわなくていいのかな・・・」
私の隣に並んだ鈴木かなが呟く。
「行きてーのもやまやまだけどもさ、なんの策もねーし、いったん落ち着くべ、な?」
「るみちゃんは・・・案外冷静よね・・・」
「いや、いきなり行って、「わかった」言うか?」
「そうね・・・。」
ガーーー、ガタタタタタン、ガーー。
路面電車がやってきた。
観光客の多くが、おりていく。
すっかり空いた車内に乗り込む。懐かしい市電のにおい。我々だけで14人。車内はけっこう混み合う。
ガーグウォーン。
この音も。久しぶりに聞く。あ、夏にも乗ったけども・・・・。
湯の川温泉駅に着き、下車。
14人で宿へと向かう。
15分ほど歩くと、温泉ホテルに到着。
「さ、女子の皆さんは、私と一緒の部屋よ。男子は、隣ね。さあ行くわよ。」
「男女別、なんです・・・・か?」
けいが不満そうに確かめる。
「当たり前です!一応・・・修学旅行なんですから!!」
「ちぇーーーー」
洋子が代わりに悪態を付く。
おめら、そんなにイチャコラしてぇんか?
「・・・るみちゃん・・・そういうものなのよ・・・特に付き合いたては・・・・」
「ふーーん。元カノの・・・いんや、経験者の言葉、ってことかい?かな・・・・」
「そうよ」
この女は勝ち誇ったように微笑んだ。腹立つ。こんの、「元」のくせして。
「はんかくせーこと言うな。おめも、もう、終わったんだべ。」
荷物を置いて、また市電で五稜郭までもどる。
全員で、風車が目立つレストランに入る。
「で、どうやって説得する?」
裕一が口火を切る。
「だよねー登ってば、こじらせてるもんなー。」
あんが皆の思いを代弁する。
「元カノちゃん、なんか、考えある?」
かなが緊張した声で尋ねる。
「・・・・・思いつかないわ・・・ごめんなさい・・・」
顔色一つ変えずにかなは答えた。
『・・・・・・・』
いい説得の仕方なんて、おもいつかね・・・。
あの「ほんずなし」に響く言葉なんて・・・。
考え込みながら、みな、食事をとる。
「やっぱ・・・あれかな・・・」
貴が唐突に口を開く。
『あれ・・・?』
「登の最大の弱点、あれだよ。」
「ああ、あれかー・・・」
裕一はわかったらしい・・・。
『あれかーーー。』
「え、なに?」
「なんだべ?」
「ちょっと、あんた、元カノでしょ?わからいの?」
五十鈴会長もわからない。
「なあでもいいわ、早く終わらして、観光したい。」
来島さんははなからどうでもいいらしい。そりゃそうだ。
「わたしは・・・何となくわかったわ。強力してもいいわ。」
『え!』
色めき出す佐藤と鈴木。
かなと私と五十鈴以外はわかったらしい。
意味わからんわ。
レストランを出ると、足早に皆歩き出す。田家町へ向かうのだ。
住宅街の一角。「佐藤」の表札。
「じゃあ、押すわよ」
御厨先生が、呼び鈴のボタンを押そうとすると、
「いや、待ってください。」
亮がそれを止める。
「おすのは・・・・そうだ、五十鈴会長がいい。」
「え、わ、わたし?」
「うん」
「え、ちょっとどうして?」
「いいからお願いします会長。」
貴が念を押す。
「え、そ、そう・・・わかったわ・・・」
ピンポーン。
何も反応がない。
ピンポーン
やはり・・・何も反応がない。
「留守かしら?」
と洋子がつぶやいた時だった。
「あら、あなたたち、登のお仲間さんじゃ・・・」
振り返ると・・・・
「あ、ゆりさん!」
裕一が真っ先に反応した。
「のぼちゃんに会いに来たの?」
『はい!』
「・・・・・そう・・・でもおそかったわ・・・・登はね・・・・・・その・・・・・・」
と、ゆりねえは、事の次第を僕たちに説明してくれた。
『え・・・・・・』
やっぱ、そう、うなくいくわけねかったか・・
ほら、真一、一回もしゃべってない・・・。
いるんだよ。ちゃんと。
脳内で登場させてね・・・・・。




