93 喧騒は他人事
修学旅行って、楽しい?
団体行動嫌いなんで、あまり好きではなかったです。
観光は好きなんですけどね。
教室内はすごい喧騒に包まれている。「よー、お前ら、どのコースにする?」「やっぱ東京でしょ?」「沖縄はどう?」「京都だろ、やっぱ。」「わたし、大阪いきたーい!」
月曜の6時限。ロングHR。この日は、年明け早々に予定されている、修学旅行のコース選択。事前に伝えられたいくつかのコースを選ぶ。選択制がとられている。とはいえ、毎年同じ、コースで、変わりばえしないのだが・・・・。
「亮くんたちは何処にするの?京都?沖縄?」
隣の席に女子にきかれ、答えようとすると・・・
「うちらは、もう決まってるの~、ねえ、亮・・・」
と横目でキッと睨まれた。けいに・・・・。
けいはかなり独占欲強めらしい・・・。女子と関わろうとすると、最近はこの調子だ・・・。僕はそんなにモテないよ・・・。登じゃあるまいし・・・。
(「・・・・・・・・修学旅行などにも、生徒の自主性を図るため、生徒代表として意見を反映させるよう、 学校側に働きかけていきたいと考えています。」)
僕が会長選で述べた公約。これを実行する。名目上は。
無論、約一カ月前に選択肢を増やすのは現実的にはかなり厳しい。学校側だけではない、旅行業者にも了承を得る必要がある。学校がわは御厨先生のおかげで何とか了承を得た。旅行業者の方は、生徒会に丸投げ。だが、五十鈴総統閣下の強力なリーダーシップと交渉術で。旅行業者を説き伏せることに成功した。
例年、沖縄、東京、京都の3つだったが・・・あと2つ追加することに成功した・・・。一つは大阪。これは簡単だった。京都とほぼ同じだからだ・・・。しかし、あと一つ、我々が最もほしかったコースには難色を示された。そりゃそうだ・・・。普通、高校で設定される目的地ではない。中学校では、メジャーだが・・・。
「いや、このコース、希望する人いないでしょ?」
亮「いえ、行きたい人もいるはずです!」
「いやいや、高校生はここ選ばないでしょ。」
はじめ「それでは、おうかがいします。何人集まれば、このコース設定できますか?」
「20人は必要です。」
亮「20人・・・・」
五十鈴「10以上・・・10人以上集められたら、開設していただけませんか?」
「いや、それは・・こちらが赤字になります。」
五十鈴「その代わり、3泊4日の日程は全てフリープランということで、いかがでしょう?」
「いや,
だとしても・・・」
亮「宿泊場所さえ、かくほしていただければいいです。食事の手配もいりません。寝場所だけ確保してく
れれば・・・」
「簡単に言いますが、人気観光地なだけに宿泊場所の仮押さえも難しいんですよ。」
はじめ「人数は早急に確定できるとおもいます。ですから・・・」
「いや、でもね~・・・。」
応対する20代ぐらいの担当者はかなり渋っている。そりゃそうだ。仕事増やしているんだから・・・。もうほぼ決まっていることを変えてるんだから。
五十鈴「・・・・ちょっと電話させてもらっていいですか?・・・・」
突然総統閣下は離席すると、店舗の外へ出ていった。
「もうしわけありません。」
いすずは、いつもの顔でもどってきた。
「それでは、お話の続きですが・・・」
「失礼しますよ。」
応接ブースに店の奥から40代ぐらいのナイスミドルが現れた。
「あ、支店長、なにか?」
「金山君、すまないが彼らのために骨を折ってくれないか?」
「え、しかし・・・」
「こちらの生徒の方々が、ここまでこだわるのは、何か事情があるようです。大部屋2部屋あれば15人は泊まれるだろう。何とか見つけてあげてくれないかな?」
「支店長・・・」
「15人で絶対大丈夫だ。」
「わかりました・・・ホントに大丈夫なんですかね・・・」
「支店長の私が責任をもつから。」
そう言うとしぶしぶ担当者は立ち去っていった。
「まどか、こういうのはこれっきりだぞ。」
担当者を見送ると支店長はそう言った。
亮「会長お知り合いで?」
「そりゃそうよ。親戚だもの。」
『はあ?』
五十鈴「この旅行会社も、うちの会社の一部門。と、いっても、大手とうちと半々の出資だけどね。」
『・・・・』
「しかし、おじさんを使ってごり押しは勘弁してくれよ・・」
五十鈴「はあ?さんざん、遊びほーけて、働き口もなかったあんたを、父のコネでここに入れてあげてんでしょ、感謝なさい!」
「・・・かなわないなあー・・・まどかには・・・」
はじめ「五十鈴さんって、いいとこのお嬢さんなんだ・・・・」
支店長「ISZコーポレーションの社長令嬢だよ。まどかは。」
『はぁ~』
亮「札幌じゃ、かなり大きな企業ですね・・・」
五十鈴「それほどでもないわ。・・・じゃあ、頼んだわよ、おじさま・・・」
支店長「はい、はい・・・そっちも、ちゃんと14人集めてよ。」
五十鈴「ええ、もう行く人は決まってるから。」
店舗を出る。晩秋から冬へと移り変わる外の空気は凛として寒かった。
意気揚々と歩む総統閣下の後ろに、僕たちは静々とついて帰校した。
で、週明けの月曜。コース決めと班決めだ。それが今。でも、僕たち「佐藤」と「鈴木」は誰一人この喧騒の中に入ろうとはしない。
なぜなら・・・・・。
僕たちの行くコースは決まっている。
「函館・青森、周遊3泊4日」
だからだ・・・。
夏休みにも行った。中学の修学旅行でも。そして、高校の修学旅行だ。
だが、今回は・・・修学のためでも、思い出作りでもない。
彼を連れ戻す。それが真の目的だ・・・。
次回、主人公が帰ってくるといいな。
いろいろな人物の目線で書くの・・つかれたよ・・・。




