91 故郷(ふるさと)ってどこですか?
新章突入。
真冬の函館に札幌から
車で行くのは・・・結構、
やだ!
お兄の友人たちが落胆して帰っていった日の晩。おばさんとおじさんと私が夕飯後の取り留めない話をしている時だった。
ピンポーン
呼び鈴が鳴った。
「誰かしら・・こんな時間に・・・」
不審に思うおばさんをよそに、わたしには、誰の訪問かおおかた予想はついていた。
「夜分遅くにすいません。登さんの担任の、御厨です。」
・・・・やっぱり・・・。
リビングに来た御厨先生は神妙な顔をしていた。ちらっと私を見て、何か言いたげだったが、すぐにおじさんたちを見据えていた。
「すいません、遅くに・・・」
平静を装いながら・・おばさんは応対する。
「いえいえ・・・あいにく、登は・・相変わらず、部屋から出てこなくて・・・」
「そうですか・・・・では、単刀直入にお伺いします。登さんは・・函館に帰ったのでしょうか?」
「え・・・」
おばさんとおじさんは声を詰まらせた。
このことはまだ誰にも言ってはいないから。
「あの・・・生徒から登さんが故郷に帰ったらしい、って、小耳にはさみましたので・・・・。事実でしょうか?」
顔を見合わせるおじさんとおばさん・・・。おじさんは私にも目くばせしてきた。
私は軽くうなづく。
「実は・・・一向に部屋から引きこもったままなので・・・、いったん親御さんのところに返すことにしたのです。その方がいいかと思いまして・・・。」
おじさんは苦虫をかんだ顔をした。責任もって預かると言っておきながら、実家に帰すことになり、悔しいのだろう。
「そうですか・・・事実なんですか・・・差し出がましいようですが・・・担任としてだけでなく、事情を知るものとして、いささか心配なんですが・・・」
「・・はい、函館に帰れば、また、以前のように・・・でも、ここで引きこもっているよりわ・・と思いまして・・・」
おばさんも沈痛な面持ちで、言葉をつないだ。
「・・・ふぅー・・・まつりちゃん・・・おめさも、そうおもったのかい?・・」
「・・んだ・・・」
函館弁で、小さな声で返事する。
「・・・‥また・・・転校さ、させるってことだべか・・・・」
御厨先生はため息交じりに言う。
「いんや、そこまでとは・・・思ってね。しばらく、親の元さ戻すべ、と思って・・・」
おばさんも自責の念にかられている。
「姉さんも、早めの帰省くらいに考えてる・・・。」
「それなら、いんだけども・・じゃあ、佐藤の家さ、電話してみます・・」
そう言うと、御厨先生は、「したら、また」と帰っていった。
11月ももう終わる。師走を迎え、奥地(札幌)雪も積もり始める。憂鬱な季節になる。おにいがいないせいもあって、ますます憂鬱さが増す。
とりあえず、るみちゃんに先生来たこと知らせておこう・・・。
ICT研究部の部室。PC準備室であるここは、ほかの準備室より、少々大きい。PC機材を収納するため、大きめに作ってある。とはいえ、ここに10人集まるとさすがに狭苦しい。
「ねえ、けい・・・となり(PC室)で話さない?」
「いやよ・・・人目に付くでしょ?ここなら、他の生徒の目には留まらないわ。」
洋子の提案をけいははねつけた。PC室は準備室と違い、廊下側のガラス張りだ。誰か通りがかれば、いやでも目につく。
学校祭、地域の夏祭り、生徒会長選挙と今や、2-3の「佐藤」と「鈴木」は学校内でも目立つグループだ。洋子とけいは、例の応援演説で知らないものはいない。当然その彼氏である、亮とはじめもだ。そのせいか、やはり登のことも話題になってしまう。九十九先輩とのP活疑惑、ギャルにお持ち帰り事件、学校祭許嫁襲撃事件、と、彼の話題は事欠かなかった。
その彼、登が学校に全く来なくなった。彼の起こしたこの新しい事件は、校内の耳目を集めるのは当然だった。私たち「鈴木」と「佐藤」の中で何かあったに違いない。(実際そうなのだが)そういう目で見られている。そして、うわさがうわさをよび、尾ひれがつきははじめている。「どうも、登がいじめられたらしい・・」「いや、登が二股かけて、修羅場があったらしい・・」「いやいや、九十九先輩に押し倒したところ見られたらしい」「え、ちがうだろ、けいにちょっかいかけて、亮と・・」「え、洋子だろ?」「俺はあんに手を出しかけて真一と?って」「いや、教室のやり取りを見るに、かなを妊娠させたって・・・」
わたしたちが集まるだけで、学校中にうわさが広まる。だから目につきにくいこの場所に。
「で、かな、どーすんの?」
え、わたし、わたしが考えるの?
「いや、どうするって言われても・・・」
「あ、洋子、元カノはたよりになんないべさ・・・・」
カチンとくる。るみは、ことあるごとに「元カノ」を強調する。何が何でも「終わったこと」にしたいらしい・・・・。でも、正式にお別れを言われたわけじゃない・・・。
「あ、いいかなみんな。」
あ、珍しく貴くんが音頭をとった。
「みんなは登を連れ戻すことに賛成なんだよね。」
異議を唱える者はいない。
だって、登がいると、なんだかなんだ、楽しいもん。彼氏としてじゃなくても。そう、仲間なんだよ。
「じゃ、迎えに行こう。」
近所の友だちの家に行くように、貴くんは言った。
裕一「いや、よし来た行こう!って言える場所じゃ・・・」
るみ「んだ、んだ」
真一「金ねーし・・」
あん「時間もねー」
貴「いや、実はその・・・一つだけ行く方法思いついたんだ・・・」
『え』
どうやって。この真冬に。旅費を出し合って、代表者が深夜バスで?それともヒッチハイク?
貴「来週の、あれを使うんだ。」
『あ・・れ?』
貴「だって、亮はさ・・・」
亮「・・・・?」
亮さんも何のことかわかってない。
「あの、いったいどうするの?貴くん?」
貴「それはね・・・」
『え!』
はじめ「いや確かに、そうは言ってはいた。でも・・・」
貴「そこは、何とか、拝みこんで・・・」
洋子「今から・・・・できるかしら・・・」
けい「根回しが必要ね・・・」
貴「そうだね。」
前回と違って、今回の貴は尻切れトンボではないようだ・・・。
洋子「じゃあ、S・S同盟ってことで。」
けい「そうね・・。」
すいません。
私は見切り発車で、尻切れトンボです。




