表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

83/180

82 その結末をだれも望んではいない⑨

ああ、主人公でてこないなあ~。

貴くんとかなさんの話、

終わるかな?

 高1の学校祭の2日前。僕と登が教室に残って看板制作をしていた・・・。2人でしゃべりながら楽しさに浮かれて、だらだらとやっていた。気が付くと教室には誰もいなかった。


バターン、ガッチャーン!!

誰もいないと思っていた教室に突然響いた音。

散乱する机や黒く塗られたダンボール、カセットコンロ。そして、クレープづくりの道具や材料。

誰もいないと思っていた教室。

しかし、俺たちの他に1人女子生徒がいたのだ。

田の字に並べた机の上にダンボールが3個くらいの高さで壁のようにのせてある。その壁が黒板前に3,4m続いていた。俺たちは教室の最後方だったので、全く気づかなかった。

「え、なにがあった?」

登は言うやいなや、立ち上がった。

黒板の前で呆然と立っていたのは、鈴木かな。

僕たちは顔を見合わせた。ほとんど話したことのない、女子だったからだ。

でも、登は話しかけた。

「だいじょうぶ?けがはない?」

とても、落ち着いた口調で登は話しかける。

「あ、え、だ、大丈夫・・・・・。」

「こんな時間に何してたんだい?」

「あ、わたし、作るの苦手で練習してたんだけど・・・。つまずいちゃって・・・・」

「どうしよう・・・・。これ・・・」

「元にもどすのは大した手間じゃないよ。3人でやればすぐさ。」

「でも貴くん、その小麦粉どうしよう・・・・・」

米袋のように大きい業務用の袋がひっくり返って、黄色みがかった粉がぶちまかれていた。

「どうしよう、これ、もうほとんど使えないよ・・・わ、わたしのせいだよね・・・・」

「とりあえず、そうじして、元に戻そうぜ。」

彼は、とびっきりの笑顔で言ったね。

冗談を言いながら、俺たち3人は楽しんで片づけたっけ。




「よし、いいだろうこんなもんで。なあ、貴。」

「お疲れさま。じゃあ、帰るか。」

「え、ちょっとまって。小麦粉はどうするの?」

「あ、そうだったね。先生に頼んで新しいものを注文してもらおうか?」

「だめだよ、貴。明後日には必要なんだ。間に合わない。それに新しく注文するとその代金も貸付金として計上される。借金が増えるってことだ。」

「じゃあ、どうするの・・・」


その時彼はいったよね。



()()()()()()()()()()()()()()()()


そして、最後にこう言ったんだ。


()()()()()()()()()()()()()()()俺、何とかしてくるから。」




思い出話を、柳川さんと来島さんに聞かせるのは、気恥ずかしかったが、かなにはしっかり思い出してほしかった。

「あのとき、登は最後に、僕にかなを送っていくように言ったよね・・・・」


こくりとうなずく、かな。


「あの時・・・登は気づいてたんだ・・かなが教室にいた、本当の理由を。」


「え・・・」

小さくかすかな声で答える鈴木かな。


「かなが、のこっていたのは・・・待っていたんだよね僕を・・・。」


「・・・・・まって・・・そんな・・・」

彼女の目が、また、潤んでくる。


「クレープの練習が目的じゃなかったんだろ?僕が1人になる機会を伺っていた。そうだろう?」

「・・・・・・」

「君の目当ては、僕だった。登は、それを察して、君を送るように僕に言ったんだ・・・」

再び涙をためた目で準備室の床を見つめる、かな。

「じゃあ・・・私が、告白したことも・・・」

「それを、彼に伝えるほど、僕は無神経じゃないさ。駅まで送ったことだけ教えたよ。でも・・・きっと気づいてたと思う。その結果もね。」

「・・・・・」

ピクリとも動かず、彼女、鈴木かなは、床のタイルをじっと見ていた。

「あの時も、今回も一緒さ。君の望むことを察したんだろう。そして、登がそうすることを薄々わかってたんじゃないか?」

「・・・・・・・」

「で、かな、君からいったんだろう?」

「・・・え・・・・」

「「今のままでいいから、つきあって」ってさ・・・」

はっとした顔をして、かなは、僕の方に顔を向けた。

「・・・え、なんで・・・なんで?・・・・貴くん・・・なんで・・・・」

「そうでも言わないと・・・登は決めないさ。みんなの期待と望みがわかるから・・・」

「あ・・・・」

「つばささん、るみ、りおさん、そして、かな。きみたち4人の望みや期待が、すぐわかるだけに、誰か一人に決めて残り3人の期待を裏切ることは、登にはできない。」

「・・・・・・」

「だから・・・・」

座り込んだまま動かない、かな。目をつぶって窓辺に寄りかかる来島さん。壁一面に広がる棚の扉。生徒用の机に脚を組んで静かに僕たちを見据えている柳川さん。

それらを見回し、意を決して、僕は言う。最後通告を。


「いっけん、何も選んでないようにさえ見せかければ、彼は簡単に納得する。」


「ふーん。だから隠れて付き合うんだ・・・。」

あきれたような声で柳川さんは声をあげる。

「ああ。そうさ。今のままがいい。今を継続する。それが何より最優先なんだ。登もそして、かなも。」

「なんかよくわかんないなぁ~」

来島さんはたまらず声を出す。

「だって、今ってなに?チーム佐藤と鈴木がある生活?でもさ、そんなのここ半年くらいの話でしょ?どうせあと一年ちょいで卒業だし。そうすればバラバラ。仲良し、って思ってたって、次の人間関係の中で埋没しちゃうもんでしょ?どうして、「今」、にそんなにこだわるの?」

「来島さんは強いな。でも、それは・・・ぼっちを知らないからだよ。」

『?』

「言ったろう、野球をやめた僕。許嫁のせいで孤立を深めていった登。ぬりかべに目をつけられて腫れ物にされた、かな。みんな、いやというほど学校で孤独感を募らせていった。そんな人間たちにとって、「今」はかけがえのない時間なんだよ。」

『・・・・・』

「それは、「彼女」っていう存在以上にね。登はだから選ばなかった。「今」を失うくらいならね。」

佐藤貴くんは、賢い男です。

あ、故障は嘘です。ばりばりです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ