81 その結末をだれも望んではいない⑧
体調不良で投稿できませんでした・・・・
まあ、好きで書いているだけなので。
座り込んで泣くかなを、僕は、加害者、というか、半ば被害者のような目で憐れんで見ていた。彼のことを思い起こすと、そういう気になってしまう。
「あの、かなさん、別に君を責めたいわけじゃない。今回のことは登が進んでやったんだろう?君のために。」
「・・・・・・」
問いかけには、全く反応しない。それでも、僕は言葉を続けた。
「あのさ。登と僕が出会ったのは・・・・去年の5月。君たちより、ずっと彼のことを知っている。かなも、入学前の僕のこと知ってるだろう?だって、隣の中学校だもんね、かなは・・・」
僕は柄にもなく自分語りをしようとしている。でも、これは話さらないとだめだ。僕は彼の最古参の友人として、彼のことを伝えなければならない。
「僕は、中学時代、野球部でエース。そして3番打者だった。誰もが俺をちやほやしてくれたよ。野球の強豪校からも誘いが来た。無論、もてたよ。月1くらいで告白された。いやもっとかもしれない。でも、中3の夏に、部活を引退するとき思ったんだ。」
静まり返るこの空間で、僕一人の声がする。柳川さんも来島さんも黙って聞いている。
「みんなが好きなのは、佐藤じゃなくて、エースで3番の佐藤なんじゃないかって・・・・」
気が付くと、かなは泣き止んでいた。振り乱した髪もそのままに、静かに床を睨んでいる。微動だにせず。
何か言いたげな感じもしたが、かまわず続ける。
「それで、野球強豪校でもない、公立の、この高校へ来ることに決めた。野球部からはもちろん誘われたけど、故障してもうできないと告げた。」
「そっかー・・・・あんた、あの佐藤だったんだ・・・」
来島さんは、目をつむって、独り言のような合いの手をつぶやいてきた。
「ああ、その佐藤さ。でも、野球をやめた今はどうだい?僕に話しけてくるやつ。告白してたくるやつ。そいつらは皆無になった。エースで3番の佐藤くん。俺の価値は、その二つなの方に価値があったんだ。ただの「佐藤」なんて、誰も求めていなかったんだ。でも・・・・」
俺は言い淀んでしまった。ここから先は登について、僕の主観。いわば、独断と偏見だ。そんな自己中心的な意見を述べていいのかどうか・・・。かなりの時間を共有してきた「かな」ならまだしも、柳川さんや来島さんに、聞かせていいものだろうか・・・。
(貴、たすけてくれ・・・)
登の声が聞こえた気がした。
きっと、言いたかったんだと思う。高校に入って、いや、生まれてから今日まで・・・。
「去年、野球やめた俺に、誰も寄ってはこなかった。そしたら、後ろに座っていた登が「一緒に昼食べない?」って声をかけてきたんだ。登の人懐っこい笑顔と楽しい話、何よりお互いぼっちどうしってことで、馬が合ってね。気が付けばいつも一緒だったうよ。思えば、あれが、最初のsugar Babesだったんだ思う。」
「sugar Babes?」
柳川さんが腑に落ちない顔をしているが、かまわず続けよう。
「でも、彼の言動をつぶさに見てきた僕は・・・彼の、特異な力を発見したんだ。ここ半年でそれは確信に変わったよ。」
かなは、ゆっくり顔を上げ、僕の方に目を向けた。
「登は・・・わかるんだ。相手が自分に何を期待しているのか。どう、ふるまってほしいのか。相手の声色や目線、表情から瞬時に把握する。」
「え、そんな、とても、そうとは・・・」
柳川さんは疑問を呈している。
「僕も最初は半信半疑だったさ・・。でも、2年になって今日までの彼の行動は、この仮説を信じるに足るものだったよ。極めつけは、「白い爆弾」。」
「え、あの狂暴系ロり娘?」
柳川さんの合いの手もタイミングよくなってきた。
「ああ。彼は幼い時から、いや出生時から一緒だった。あの、狂暴な女王様と四六時中過ごすんだ。彼女のご機嫌や気持ちを汲むことで身を守ってきたんだろう。相手の期待をすぐに察すること。知らず知らずのうちに彼はその力を育ててきたんだ・・・。」
「・・・・・」
かなは、僕の顔をじっと見つめていた。僕の話がまるでたわごとだといわんばかりに。
「かな・・・。僕らはその力を、最初から目の当たりにしていたんだ。」
「・・・え・・・」
力なく答えるかな。
「僕と登、そして君が初めて邂逅した去年のことを思い出してほしい・・・」
僕から目線を外し、かなは去年のあの日。かなが僕と登と縁が作られた日。彼女は目をつぶって思い出そうとしていた。
あの日、小麦粉が舞い散ったあの日のことを。
さて、私も「あの日」の出来事
読み返そう。




