79 その結末をだれも望んではいない⑥
不登校。
引きこもり。
ニート。
逃避。
登が学校に来なくなって、一週間たった・・・。洋子やはじめはいつも気を使ってくれている。だって、私はゲス野郎にダマされて、都合のいい女にされそうになった悲劇の女だから・・・。
あれ以来、佐藤達は話しかけてはこない。るみに至っては露骨に避けられていた。
でも・・・。
昼休憩に突然るみに声を掛けられ、ICT研究部部室へ連れられてこられた。急なことに驚いたけど、
正直、いつかは呼ばれるだろうと思っていた。覚悟はできていた。
「ねえ、かなさあ・・・・ほんとに・・・・つきあってたの?・・・」
私は、るみの問いかけに、何と答えたらいいかも、わからなかった・・。
付き合っていたといえば、確かにそうだ。でも・・・・・彼は・・・私をほんとに好きだったのだろうか?自信をもってそうだといえない・・・・。
「ねえ、かな・・・。」
「あ、えっと・・・うん・・・。」
「・・・・・そうなんだ・・・・。」
沈黙が支配する。
ふたを開けた弁当箱を二人して、見つめている。
「・・・なして?・・・」
るみちゃんはとても小さな声を発している。
「・・・・・あの時、やくそくしたっしょ・・・・。」
胸のあたりに痛みが走った。
るみちゃんの目から涙が流れ落ちる。
「・・あんときにさ・・・・」
(るみ「誰が選ばれても・・・・わたしと、友だちでいてね・・・・」
かな「・・・え・・・あ・・・うん、もちろんよ・・・」)
八幡丸の2階に泊まった時。私はそう約束した。
なにも答えられない。交わされた約束を手放したのはわたし。彼女の気持ちを踏みにじったのは・・・・わたし。
ガチャリ
不意に部室のドアが開いた。
「取り込み中だったかな?」
入ってきたのは貴と裕一。
「あ、悪いけど、かなに用事があってさ・・・あ、俺じゃなくて・・・貴が。」
「え、わたし?」
ちょっと驚いた。貴くんがこの件で話したいなんて、あまりに意外だから。
「でも、ここじゃちょっと・・・放課後、時間ある?」
「ええ・・」
「じゃあ、帰りに声かけるよ。」
そう言うと、貴と裕一は足早に出ていった。
「・・・・おめとの話は、・・・・また、・・今度がいいみてーだな・・・。」
るみちゃんはごしごしと目をこすって涙をぬぐった。
そして、弁当を黙々と食べはじめた。
「あの・・・まつりちゃんはなんか言ってなかった・・・?」
沈黙に耐えきれない私は、思わずきいてしまった。
「ああ、なんか、部屋から出てこねーんだと。具合悪いって言って。それしかきいてね。」
「そう・・・。」
すると、るみちゃんは不意に箸をとめた。
「なんか、ほかにもあるのかな・・・登・・・・」
落ち着いて・・・・落ち着いて!動揺してはいけないわ・・・。何かあることを悟られては・・・。
せっかく、登が残してくれたもの、最後の一つをなくさないために。
「・・・そんなこと・・・・」
でも、そういってやり過ごすしか私にはできなかった。
HRが終わる。教室を出ようとした御厨先生は、ちらっと登の席をみて、一瞬、顔を曇らせた。気を取り直すようにして軽く唇をかんだ先生は、教室から出ていった。
先生に気を取られている間に、貴くんは私のすぐそばに来ていた。
「じゃあ、ちょっといいかな?」
「ええ。」
連れだって出ていく私たちを、佐藤たちと鈴木たちは訝し気に見つめていた。
「ねえ、かなをどこ連れてくの?」
と、教室を出ようかというところで、駆け寄ってきた洋子が告げる。立ち止まった貴くんは、洋子に向かって微笑む。
「そう、睨むなよ。なにもとって食おうってわけじゃない。ちょっと話すだけだよ」
「ほんとに?言っておくけど、かなは被害者なのよ。」
「そのこともしっかり償うからさ。佐藤として。登の友人として。」
登の名前が出たことで、洋子も気おされた。
「・・・・・わかった。でも、かなに無理させないでね・・・。」
「話をするだけだよ。」
そういって貴くんは私を連れて教室をあとにしていった。
貴くんは、無言で廊下を進む。階段に差しかかる。
すると貴くんは階段を下り始めた。
「えっ・・・」
私は思わずつぶやいた。
そのかすかな声に気づいたのだろう。貴くんは振り向いて優しい口調で言った。
「ああ、3階には行かないよ。でも、安心して。おかしなところへは行かないから。校内だし。」
私はちょっと不安になった。どこで、何をきく気なんだろう。
「まあ、そう警戒しないで。僕は・・・味方になりたいと思っている。」
私の様子を感じとったのか、そう、告げる貴くん。
校舎2階。西側の奥。まっすぐ東西一列のこの校舎。その一番端。
防火扉の出っ張りに隠されるように、その部屋はあった。
家庭科実習準備室
そう書かれていた。
貴くんは、扉の前に立つと、軽く2回ノックする。
「はい、どうぞ。」
聞きなれない声・・・でも、たぶん・・・。
あっと、土日は諸事情で、投稿できませんでした。
貴くんに活躍してもらお。
この章は・・・。




