⑦メイドと冥土
気がつけば・・・⑦までかけました!
がんばったなあ・・・。
「ちわー。」俺たちSugar BabesはPC準備室に顔を出すのが日課になった。情報処理同好会改めICT研究部は(情報処理部は硬すぎてやだ、というリーダーたっての願いで、この名前になった。)Sugar Babesとして一応軌道に乗ってるといえる。形の上では。
今日の参加者は、俺を入れて4人らしい。るみとけいはおしゃべりに夢中だ。といってもるみは「うん」とか「はい」とか言ってるだけだが。
「今日はけいとるみ、貴だけか?」というと
文庫本から顔をあげて
「ああ、亮は生徒会、祐一はラグビー部に拉致された。大会の助っ人に来てほしいらしいよ。」
「ああ、いつものやつか・・・。」
「あ、ねえねえ、登」
唐突にこちらに話しかけてくるなぁリーダーは。
「学校祭でクラスの出し物、なににしたい?」
内容も唐突だな。わがリーダーは。
「いや、特にないけど。ってか何もしたくない。できれば2日間ここにいてダラダラしていたい。」
「はぁ?何言ってるの。学校祭よ学校祭。みんなで楽しまなきゃ。」
陽キャとかギャルはどうして学校行事大好きなのかね。そんなの適当にお茶を濁しておけばいいじゃん。
「いま、適当にお茶を濁しておけばいい、って思てたでしょ?」
「え、いやあ、そんなぁ」こと思ってました。すいません。
あ、そうだ!
「いやでも、俺たちICT研究部も何かするんだろう、学校祭。そしたらクラスの方は無理だろう?」
「心配ないよ登。」文庫本を読みながら貴は
「同好会時代から、うちは何もしないよ。ICT研究部になっても同じさ。」
とういうと、口角を少し上げた。俺が困ってるのを楽しんでますね。貴くん。
「いや、でもさ。」
「九十九先輩もそのつもりだって。」
追い打ちをかけてきやがった。
るみはなんだか楽しそうにこっちを見ながらにやにやしてやがる。あ、こいつさっきまでこの話をリーダーからされてたんだな。お前がこっちにリーダーを押し付けたんだな!
俺は今まで文化祭とか学校祭とかなるべくかかわらないようにしてきた。去年は仮病で2日間欠席して過ごした。陽キャたちの思い出作りに手を貸すなんてまっぴらだぜ。
「いい、わたしたちSugar Babesの結成目的、忘れたわけじゃないわよね?」
「え、と互いに助け合いを・・・」
「それもあるけど、『楽しく充実した学校生活を送るため』、だったでしょ?」
えーと、そうだったかな?うーんそんなこと言ってた気もする。
「まあ、そうだけど・・・。」
うん、どうしよう。ここで正直に、「いやそんなの、俺どうでもいい。困ったときに助け合ったり(夏休みの課題とか)補いあったり(テスト前とか苦手な教科教えてほしい)ができればいいので」などと言おうものなら・・・。リーダーの逆鱗に触れるだろう。ここは、リーダーにあわせるの吉だ。
「それなら、ひとつ、考えてみるか・・・・。」
「そうこなくっちゃ!」けいは満面の笑みを浮かべた。
「ふふふ・・・」貴は文庫本に目を落としながら、笑っていた。
「で、けいはなんか考えたの?」
「うーん、さっきまでるみと考えてたんだけど・・・。」
そう言ってルーズリーフを一枚わたしてきた。
・たこ焼き ・クレープ ・喫茶店 ・焼きそば ・ホストクラブ
・メイド喫茶 ・占いの館 ・スーパーボールすくい ・射的
まあ、妥当なところだ。(ホストクラブはのぞいて)
「あとはせいぜいお化け屋敷かな~?」
おれは何の気なしに言うと。
「それはだめ。」けいは血相をかえた。
「え、なんで?」
「私がだめなの。お化け屋敷。苦手なの。え、何その意外だって顔は」
「いや、けいみたいな陽キャは進んで入っていってウエィウエィってやってそうで。」
「あんたの陽キャの基準てどんなの?誰でも苦手なものはあるでしょ?とにかく私は嫌なの!」
「ふーん。じゃあ、喫茶店かメイド喫茶ってとこかね。」
「い、いやらしい・・・登・・・」るみがぼそりという。
え、なんで?なんで?喫茶店が準備簡単そうじゃん。メイドさん出せば繁盛してもうけが出てきそうじゃん。
「やらしくない。合理的に考えて、メイド喫茶だ。」
おれは自信込めた声で告げた。
「あ、メイド喫茶に絞った・・・」るみは呆れた顔で言った。
「だって、他の出し物準備たいへんじゃん。メイド喫茶なら、メイドさん出しとけばメニュー少なくても許されるし、女子目当ての客がきて、利益も出しやすいだろ。」
「うん、確かにそうだね。」
「ほら貴も納得してる。」
「・・・な。なんか無駄に説得力が・・・・あるね。時々すごいね登は。」けいは目を見開いた。
「え、そう?」
「だって、Sugar Babes結成のときも、一番に賛成してくれたじゃん!」
「あ、そういえばそうか・・・・。」おれは結成時のワックを思い出していた。
「じゃあ、われわれの学校祭出店候補はメイド喫茶に決定!」
「え、っと亮と祐一に意見はきかなくていいのか?」おれは一応リーダーにきいた。
「文句は言わないっしょ、あの二人。てか言わせない!」
「そうだね。」貴も同意した。
頼もしいねうちのリーダーは・・・。
金曜日の6限目。早く帰りたい一週間の最終の授業。その日はロングホームルームが行われた。クラス委員の2人、小森くんと柳川さんが司会進行だ。
「それでは、7月に行われる学校際で、私たち2年3組が何を出店あるいは出展するのか決めたいとおもいます。」
今日は柳川さんが進めて小森君が板書するらしい。
ここぞとばかりにわがリーダーは手をあげた。
「はい、メイド喫茶がいいと思います!」
『おー』教室に歓声があがった。お、これできまりか?
「はい!」
歓声を押しとどめるように挙手の声がした。
「洋子さん、どうぞ。」
「お化け屋敷がやりたいです。」
『あーそれなー』
こちらの提案にも歓声が。ってか、どちらも定番だよね?みんな何も考えたくないの?早く帰りたいだけ?
「他にありませんか?」
え、他ないの?みなさん?どっちかでいいの?
結局何もでなかたったのだが・・・どちらにするかでその後もめにもめた。
わがリーダーがお化けが苦手ときいてしまった以上、がらにもないが俺も意見した。
メイド喫茶のメリットをこれでもかと話すけいと俺。
お化け屋敷がいかにみんなの思い出作りになるかを話す洋子とはじめ。
多数決かという段になって、それまで黙っていた亮が手を挙げた。
「僕はどちらも十分学校祭にふさわしいものだと思います。そこで、今度の文化祭実行委員会で各部各学級の出し物が集まります。」
「ええ、だから、この後実行委員も決めなければならいのよ。」柳川さんは静かに言った。
『げ、』
その場のだれもが声を出した。クラス全員の気持ちは「もう終わってくれよ。帰りたいよ」だ。長引かせると空気が悪くなる。
「そこで、我々は少ない方にしたらどうだろう。同じコンセプトの店が多いと利益が出ないだろう。知っての通りうちの学校祭では、各学級の予算はあくまで生徒会からの貸付金。赤字の場合は学級で補填することになる。すなわちカンパだ。」
忘れてた。うちの学校祭のシステム。生徒が学校祭に真剣に力を入れるよう、資金は貸し付けだったことを。
「・・・なるほどですね。では、そのようにしてよろしいですか?」
『いいです』
これほどうちのクラスがまとまって返事したことがあっただろうか?
「では、学校祭実行委員を決めますが・・・先ほど言った通り、クラスの出し物は実行委員に一任されます。責任もって引き受けていただけるかたいませんか?」
シーン。だれもがそんなめんどくさいこと引き受けたくない。特に部活に入っている人間は。
俺もそうだ。
「のぼる、登。」後ろ席から亮が小声で話しかけてきた。
「なんだ亮。」
「お前やってくれないか?」と耳打ちしてきた。
「え、亮かけいがやればいいのでは」
「僕は生徒会だからできない。リーダーを委員に出したら学級内での俺たちの動きが悪くなる。けいには出店の責任者をしてもらうことで話がついてる。」
おれはおどろいた。いつの間にそんな相談を。
「さっきこっそりラインで話した。」
そう言って机の下からスマホの画面を見せてきた。
「でもなんで俺・・・」
「リーダーが出せない以上、サブリーダーに行ってもらいたい。」
亮は力強く耳打ちしてきた。
「は、俺が!」
「どうしましたか登さん?」
柳川さんは聞き逃さなかった。
「え、いやなんでもな・・・」
「はい委員長。」
亮はとっさに手を挙げた。
「登君が引き受けていいと言っています。」
オー、パチパチパチ。教室から拍手が沸き起こった。
「え、え、えー、」
早く終わろうぜという空気に俺は耐えられなかった。
「あ、はい、やります・・・。」
すると
「じゃ、もう一人はわたしやります~」
矢庭に声がした。見ると鈴木かなが手をあげていた。え、まじ、まじ。
内心喜んでいると、視線を感じた。振り返って、佐藤列の一番後ろの席を見る。あきれ返った、能面のような顔でるみは声を出さずに口を動かした。
「ほ・ん・ず・な・し」
いいじゃないか。これくらいの楽しみがなければ実行委員なんてやりたくないよ。
ところで・・・俺ってサブリーダー?だったの。
放課後、生徒会がある亮をのぞいて、俺たちはPC準備室へ集まった。
「いや、白熱したね。HR。」けいはなぜかご機嫌だ。
「いやいやいや。あんなにもめることじゃないだろう。で、なんで俺が実行委員?」
「うむ、いいではないか。にあってるぞ!登」といつもの調子で祐一は言う。
「で、でも、大丈夫なのかな?」恐る恐るるみはつぶやく。
「なにがだい?るみ」貴が穏やかに聞き返す。
「え、だって・・・もう一人は・・・かなさんでしょ?登いいなりになりそう・・・・。」
「うん、そうだね~。あんなにでれでれだとね~、リーダーとして心配だわ。」
「は?は?は?俺そんなにでれでれだった?」
おれは驚いてその場の佐藤全員にきいた。
『うん』
「たぶん、・・・・クラス中・・・・気づいているよ・・・・。」
るみはジトっとした目で俺を見てくる。
「そうだな、『よろしくね』ってかなささんに言われて握手した時の登の顔・・・ふふふ。」貴は思い出し笑いをした。
「くれぐれも、手なずけられないようにね!」けいは厳しい口調で俺を睨んだ。
「それはむずかしいな、登には、なあ!」
「え、祐一も信用してないのか、俺を」
「九十九先輩にもいいようにされてただろう?」と貴。
「う!」痛いところを・・・つかれた。
「ああいう、髪が長くて・・・・清楚な感じで・・・・その・・・・きょ、きょ・・・」るみが言い淀んでる。まあ、確かに女子には言いにくい単語だろう。
「登は、巨乳に弱すぎだ!」わがリーダーは女子でも口に出すのは恥ずかしくないらしい。
「いやそんなことは・・・ないぞ・・・多分・・・。」
「まあまあ、男子はみんなかわいい子には弱いんだよ。」
ありがとう貴。いつもフォローしてくれて。いつもいつもありがとう!
ガチャ
準備室の扉が開いた。入ってきたのは九十九先輩だ。
「あ、先輩まってました。」
「貴くん、要件は何かしら?」
いつの間にか貴は先輩を呼び出していたらしい。
「ああ、登としばらく一緒に行動してもらえませんか?」
「あら?どうして?」
そこで祐一もけいもるみもピンと来たらしい。
『女子に慣れるためです!』
「あーぁ、登くんが?」
『はい!』
「これから昼食はここで二人で食べてください。放課後、時間あるときは2人一緒で部活動を。できれば下校も一緒がいいです。」
「そんなことでいいなら、力になるわよ。」
『ありがとうございます!』
俺の意思は誰も確かめてはくれなかった・・・。
「いいかい、登、九十九先輩ほどの美人でグラマー(死語だろそれ)な女子に慣れれば大丈夫だ。」
貴は真剣な顔で俺を見つめてきた。
「なかなか役得ではないか、登!」
じゃあ変わってくれよ。祐一。
「わたしたちで・・・・ようす・・・見てるから・・・・ね・。ち、ちらちら見てたら・・・・。」
るみは俺を睨みつけてくる。
「おしおきだー!」リーダーの決定で、美少女巨乳に慣れないと罰ゲームが課せられることになった。
⑧も何とか書きたいですが・・・仕事も多忙になってきてます。
毎日更新を頑張って続けたいなぁ・・・。