表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

73/160

72 取り戻される日常

生徒会長選挙終了。

生徒会長は誰だ?

わかりきっているけど・・。



 バス停から学校に向かって歩く。友人と語らいながら歩く生徒達。いつも通りの通学風景。だが、俺にとっては運命の月曜だ。昇降口前の掲示板に、選挙結果が掲示されているはずだ・・・。

 昇降口入ると、いつも以上にざわついているのがわかる。はやる気持ちを抑えて、ごくいつも通りに上履きに履き替える。平常心を保ち、昇降口から廊下へと進む。狭い廊下を多くの生徒が掲示板に群がっている。周りに悟られるぬよう、掲示板へ。ゆっくりと、目線を掲示板へと送る。




当選 五十鈴まどか



「あ・・・・・」



五十鈴が当選した。

間違いないか二度見した。間違いない。五十鈴が当選だ。俺はかなとの約束をはたした・・・・。


しかし、なんだろう・・・。俺の望んだ結果なのに・・・。素直に喜べない。

亮やけいの顔がちらつく。はじめや洋子に対して、勝った喜びも全くわかない。

学校祭や、夏祭りの時のような達成感は微塵もわかない。

HKでの思い出が走馬灯のように、頭の中を駆け巡る。

あの喜びや楽しさはもう二度と味わえないのでは・・・・。

そんな、寂寥感に包まれる。


「登・・・」

不意に声をかけられる。貴だ。

「あ、貴。おはよう・・・」

「ああ、おはよう。いや~亮、残念だったね~。」

いつもの笑顔を貴は浮かべている。

「ああ・・・・そうだな・・・・」

「まあ、女子の大半と普通の生徒は五十鈴さんに入れるよな~。だって、あんな色恋沙汰やイベサーみたいな演説じゃなー。」

ああ。そうだよ。その通りだよ。大多数の生徒にとって、色恋沙汰って無縁なんだ。カースト上位の陽キャは教室でも少数だ。その支持者も少数だ。だからこそ上位者なんだ。多くの生徒は、そうじゃない。五十鈴は上位者だけど、今回はそっち側へおもねらなかった。

亮とはじめは、少数のカースト上位者を食い合った。少数のを取り合ったので、当選するわけがない。柳川さんと手堅い責任者のおかげで、一般生徒や陰キャたちに安心感を与えることに成功した。

おれがそうした・・・。

おれが、亮とはじめを落選させたのだ。

おれとかなの全く私的な望みのために。


「どうした?登、なんだかふさぎ込んで?」

階段を上りながら、貴はう不思議そうにうかがってきた。

「あ、いや、亮になんて声かけたらいいかなって・・・」

「ああ。でも、まあ、きっと大丈夫だよ亮は。」

「ああ。だといいけど・・・」

「僕が心配なのは・・・そっちじゃない。」

貴は一気に暗い顔になった。


「あんたが!あんな話、しだすからでしょ!!」

「お、お、お、お互い様よ!」

廊下まで響く女子2名の声。

ああ。貴の心配ってこれか・・・。

教室に入ると、けいと洋子がにらみ合ってる。

「あんたの色ボケ演説のせいで、私たちまで被害を!!」

「よく言うわよ!何が幼馴染よ!どうせ夏休み中、いやらしくイチャイチャしてたんでしょ!!のろけ話を公開演説するな!!」

「はあ、あんただって、公開告白でしょ!全校に見せて恥ずかしくないの?あれじゃ亮だって断れないじゃない!!」

「なんでフラれる前提?言わなくても、私たちは両想いってわかってんです~」

「は、どうせ今だけでしょ?私たちには、17年間の思い出の積み重ねがあるんです~。格が違うわ!格が!」

亮とはじめは顔を真っ赤にして、うつむいている。それどころ、2-3全員が顔を真っ赤にして、聞こえないふりをしている。

「あ、あの、二人とも落ち着いて。取り合えず座ろうか?な、な。周りをよく見てくれよ・・・・」

と俺が話しかけて我に返ったのだろう。クラスメートの顔を見る2人。

「まだ、朝だし・・・あんまり大胆な発言は・・・・その・・・。なあ。」

と、貴も加勢してくれた。2人は顔を赤らめて、すごすご自分の席に戻っていった。

「なんで、あのまな板女に、負けなきゃならないの!」

「まったくよ。ああ、もう腹立たしい。」

二人して腕組みし、不満そうな顔を見せていた。



「えー。生徒会長選挙が終わりましたね。みなさん結果は確認したとおもいます。残念ながら・・というか、まあ、当然というか・・・。とにかく、終わったことをくよくよせずに・・・って、なんで2人ともそんなにのぼせた顔をしてるの?」

御厨先生の一言で、うつむく亮とはじめ。

「ああ、いいわねー、生徒会長にはなれなくて、誰かの一番になれた人は・・・・。」

そういって頭をわしゃわしゃとかきむしる先生。

「幸そうなところ悪いけど・・・洋子さんけいさん、そして、亮さん、はじめさん。放課後、生徒指導室に来るように。」

『え!』

「・・・・なにを意外そうに・・・あ、あなたたちのせいで、先生がどれだけ、恥ずかしい思いをしたと思ってるの!!」

『ひぃー!!』

「どちらも先生のクラスですよね~、とか、いや~最近の生徒はすごいですなー、とか、どんな指導したんですかー?とか、散々職員室で言われたんですけど!!」

『は、はい!!』

「あげく、校長に呼ばれたわ。」

ごく・・・。

「御厨先生・・・学業に影響しないよう、適切な指導をお願いします、まかり間違って、問題行動につながらないよう、健全な男女交際の指導をお願いします、って言われたのよ!!4人ともいいわね。こなかったら・・・内申、大幅減点するわよ!」

『・・・・はい・・・』

さっきまでのウキウキラブコメ空間が、うそのように空気が凍っていく。

まあ、問題になるだろうな~。なんせ、のろけ話に公開告白だもんな~。





「つかれた・・・」

部室に着くなり、けいは倒れこむように座り込んだ。

「ふー・・・・・・長かった・・・・」

亮も座るなり、遠い目をした。

「だいたい、私怨を交えるからよ、御厨先生!」

「いやそうだけど、あれは・・けいと洋子も悪いだろう。火に油を注ぐから・・・」

「だってさ・・・・」

裕一「なにがあったんだ?」

こくこくうなずくるみ。

けい「え、いや、ねー、ほら、好きな人ができら、これくらい、その、盛り上がるでしょう、っていったらさ、「そんわけありません」とか言うから、いや、同じ女子として、わかるでしょって言ったの。」

亮「その、あとがあるだろう・・・」

けい「え」

『何言ったの?』

けい「え、「あ、そういう経験ないんだぁ~」って・・・」

『は?』

亮「しかも、そのあと洋子が「ああ、だから・・・独身なんですね」って・・・・」

『なっ』

んてことを言うんだよ。御厨先生、気にしてるんだぞ・・・。

貴「・・・で、長引いたんだ・・まあ、」

るみ「自業自得だべさ・・・まったく、うわっついてるからさ。はんかくせーなー」

けい「はぁ~・・・・これだから行かず後家の話しききたくなかったわ・・・」

「だれが、い、行かず後家ですってぇ~!!」

『え…』

御厨「ちょっと付き合ったからって・・なに、浮かれてんだー、このほんずなし!!」

あ、だいぶお怒りですね先生・・・。

「おめたち、うかれて、受験さ失敗すなよ!!」

貴「あ、先生、どうしましたか?」

「あんたたちにも釘刺しに来たの、特に・・・」

「登!おめさにな」

ギク!鋭いな先生は。

「いい?今度、何か男女のいざこざがあるとしたら・・・・」

『登だな!』

一斉に俺を見る。

「い、いや・・・俺とは限らないんじゃ・・・」

裕一「いや、ほかに可能性のあるやつがいるか?」

『・・・・・・・』

「いないか・・・」

ぽつりと俺はつぶやいた。

「いい?今度何かやらかしたら、廃部よ。廃部!」

そう、言い捨てると御厨先生は帰っていった。

と、いうわけで、

まあ、あれです。次回からのネタはないです。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ