70戦後処理
手芸部の秘密とは・・・。
まあ、何となくわかるけどね。
演説会が行われた次の日。土曜日、快晴だ。例のものを携え、待ち合わせ場所へと自転車をとばす。
待ち合わせの公園内の東屋へと向かう。犬の散歩やジョギングする人たちとすれ違う。
東屋が見えてくる。
近づくにつれて、中にいる人が確認できてくる。
柳川さんと来島さん、と、え、なんで?彼女もいるんだ?
「ごめん、待たせたかな?」
努めて冷静に俺は話かけた。
「いいえ、さほどではないわ。」
いつもの落ち着いた口調で柳川さんは答える。
「定刻よりは早いので気にしないでいいわよ。」
来島さんもいつもの通り。
「で、どうして彼女がいるのかな?」
「ごめんなさい。私が呼んだのよ。だって、知らせないのは、なんだかフェアじゃないから。」
「柳川さんがそう言うなら・・・・」
「あなたと話すなんて久々ね。実行委員会以来かしら。」
彼女・・・五十鈴まどかはそう言って意味深げな視線を投げてきた。
「ああ、そうだね。」
「あなたには聞きたいことが山ほどあるんだけど・・・まずはこっちの話ね。」
と来島さんに目で合図をおくった。
「で、持ってきてくれた?あれ。」
来島さんはあれが気になるらしい。
「ああ。これだろ。」
俺はリュックを下ろして、ジッパーを開ける。
取り出したのは・・・薄い本。いわゆる同人誌ってやつだ。内容はかなりきわどいBL。しかも生もの(現実の人物をモデルに書いたもの。しかも実名。)それが3冊。これが手芸部の秘密だ。彼女たちは、手芸部を隠れ蓑にして、BL同人誌を書いていたのだ。漫研が廃部されたため、3年生しかいなかった手芸部に入部し、執筆活動を再開したというわけだ。
「ありがとう。ちゃんと返してくれるのね・・・」
来島さんは心の底から安堵した顔を見せた。
ちなみに漫研廃部の原因は、過激描写の同人誌が学校に露見してしまったためだ。
「もう、俺には必要ないさ。でも、知り合いの名前が登場するBLは・・・ちょっと複雑な気分になる。」
「は、あんた、ひょんだの!」
来島さん噛むくらい恥ずかしいんだ・・・。
「あら、わたしのは、TLよ。」
「え・・・。あの俺とそのるみがその・・・」
「ああ、緊縛されてるみちゃんに襲われるやつ?わたしが描いたの。評判よかったわよ。」
「勘弁してくれ・・・・」
「あ、責めるのわたしがよかった?」
「やめて・・・」
「でも、使ったでしょ?」
「・・・・・・・」
柳川さんは大人だ・・・・。
ごほん。と女王のせきばらい。
あ、五十鈴さんの存在忘れてた。
「でさ・・・」
五十鈴さんが口を開く。
「どうして、こんなことしてるの?あんた。」
まあ、そうだよな。彼女の姿を見つけた時から覚悟はしていた。
「・・・答えなきゃだめかな?」
「そうね。あんたのせいで、立候補して、身を削って演説したんだから。」
「そうよ。私もあんな恥ずかしい演説したんだから。」
五十鈴と柳川は非難の目を向ける。
「たしかに。でも・・・・言えないね。人の口に戸は立てられない。俺が仲間を裏切って、あまつさえ対立候補を陰で擁立したなんて、知られるわけにはいかないからな。」
おれは取り合わないことに決めている。本を返してこの話は終わり。そいれが既定路線。
「じゃあ、悪いけど、これで。」
踵を返し、東屋をあとにしようとする。
「まって!」
ぬりかべ女王はさすがに女王だ。そんな簡単に引きさがらない。
「それで、納得できるわけないでしょ。あんたみたいなゲスケベにのせられて、立候補したなんて、考えただけでもおぞましいわ。ちゃんと話して。じゃないと、黒幕はあなってこと、話すわよ。」
ゲスケベ・・・。最低な称号をいただいたな・・・。そうか。ここで引き下がってくれればいいのに。仕方ない。俺はスマホをポケットからとりだした。
「そう・・・・あ、ところで、この画像なんだけど・・・・。3冊のうち、一冊だけ生百合本あるよね。」
「え、そそそそうね~」
うわ、ぬりかべ、わかりやすい。
「これ、まどかって五十鈴さんだよね。相手のかなって鈴木かなのことかな?けっこう過激だよね~」
「わ、そっちも使ったの?は、捗ったの?」
「やなちゃん、そこ食いつかないで・・・」
来島さんの鋭い突っ込み。
「そ、それが・・なにかな~」
明後日の方を向いて目線を会わさないぬりかべ。
「いや、この作者名50winって五十(鈴)まど(か)ってことだよね。」
「は、そんなのぐうぜんよ!わたしがそんなもの書くわけ・・・」
あ、だって、裏表紙のとこにフルネームで記名されてたよ。ほら」
と画像を見せる。
「あ、ちょ、まどか、なんで書くのさ!しかもマジック!売り物にならないでしょ!」
突然目くじらを立てる柳川部長。
「あ、いや、自分用にと思って・・・」
たじたじのぬりかべ。
「ばか、もう・・・ごまかせないでしょう。」
頭を抱える来島さん。
「やっぱり、五十鈴さんは手芸部の幽霊部員・・・いや、影の部員かな?あなたも裏の漫研部員なんだね。」
勝ち誇る俺。
「くぅ~。どうして気がついた。手芸部、いや裏の漫研が3人だと・・・」
心底悔しそうな五十鈴さん。
「あ、夏休み準備室漁ったとき、2人にしては道具が多いなって、思ってね。まあ、記名を見つけたから、どっちにしろわかったけどね。さて、手芸部あらため、裏の漫研部の皆さん。みなさんの性癖がつまった同人誌、すべて撮影しておきました。おれ、うっかり、SNSに投稿?いや流失させてしまうかもしれないね。作者の顔写真入りで・・・」
「く、き、汚いわね。返すと言っておいて・・・」
来島さんは唇をかみしめていた。
「約束は守ったよ。返しただろ?撮影禁止とは聞いてなかったし。」
「っく・・・・。わかったわ。あなたのいう通り、このことは黙っておくわ。」
「ありがとう女王様。」
「・・・・あ~、五十鈴みたいな子に責められたのね?あのいいずなけもつるぺたちゃんだったし。ああ、そういう趣味なのね~」
「・・・・じゃ、今日で俺たちの赤の他人だ。もうかかわることもないだろう。じゃあな。」
そういっておれは今度こそ東屋を出ようとした。
「のぼるくん」
柳川さんに呼ばれ、振り向く。
「なぜ、今まではここまで手の込んだことしてこなかったわ。今回は取引、脅迫、手段を全く選んないわ。ここまであなたにさせる目的はなに?まったく、登くんらしくないわ。」
「それは、言えない。お互い、秘密は守り合おう。じゃあ。」
再び歩きはじめる。その時。
「女でしょ?ねえ、登くん・・・」
来島さんがボソと呟くように言った。
「さあね。ご想像にお任せするよ。」
振り帰りもせずに答えた。
次回選挙結果と新生徒会結成。
sugar BabesとSuper Bellsはどうなるんでしょう?
最近この名前出てこないけど。




