66金曜日の憂鬱と喧騒
登とかな、が進展するように、
他だって進展するにきまっいる。
それが「夏休み」。学生時代の
夏休みはそういうものです。(偏見)
「あんたがそんな奴だと・・・・・思わなかったわ!」
けいが泣きながら俺にくってかかってきた。
「登・・・なんで・・・?」
悲痛な顔をでうつむく貴。
「・・・・・」
亮と裕一は何も言わない。
「・・・登、もう、しまいだ・・・・うちとHKさ・・・・帰るべ・・・」
るみが悲しい目をし、俺を見つめる。
「あ、まって、まってくれ、」
「うわーあああ!!」
ベッドからはねるように俺は起きた。
枕元においてある、スマホをとる。
金曜 6:14
無機質なデジタル表示で確認した。
昨日は逃げるようにして、帰ってきた。自己嫌悪と罪悪感から、なかなか寝付けなかった。
思い切ってかなへ電話をした。
「だいじょうぶ・・・佐藤くん、必ずいい日になるわ。わたし、そう、信じてるから・・・」
気休めの言葉だと思う。でも、かなの声を聞いたことで何とか気を静めることができた。
「のぼるー!」
教室に入ったとたん、けいが叫んできた。
「おはよう、けい。何かあった?」
そういいながら、けいに近づく。となりの亮は青い顔をしている。
「お、おはよう・・・の、登・・・・」
今にも吐きそうな顔の亮。
「え、どうした?何か悪いものでも食べた?」
「ううん。緊張してるんだって・・・。」
珍しく心配顔のけい。俺も見たことない顔だよ。
「え、マジで、だって、演説会は6限だよ。」
「全校生徒の前で話すと思うと吐き気がするそうだ・・・」
と貴。
「え、おめ、それでよく立候補を」
「決心したな~!」
るみ&祐一のつっこみ。
机に突っ伏する亮。
「だ、大丈夫だ。演説会までには、立ち直る・・・」
顔を伏せたまま言われても説得力ないな・・・。
「ふふふ。どうやら、わたしたち、鈴木の勝利のようね!」
教室の入口から洋子の声が。
「やめなよ。洋子。それは、よくない。」
洋子の背後からはじめが現れた。
「え、でも、これで、敵は”ぬりかべ”だけでしょ。」
「体調不良の相手にかってもうれしくないだろう・・・・。」
はじめはたしなめるように告げる。
以前とは違い、なんか嫌味ぽさが消えている。なんというか・・・亮に対して。
「まぁ、そうだけど・・・・」
ちょっとシュンとする洋子。
あれ、ちょっと待って?そんな感じだったけ?あれ・・・。
「え、洋子、もう引き下がるの?もっとなんかこう、いつもなら。もっと勝ち誇って、
『しょせん、佐藤なんて多いばかりで、肝心な時には役立たずなのよ。はじめが当選した暁には、亮を庶務ぐらいには雇ってあげるわ、ほ~ほっほっほっほ~!』
とか言うと思ったのに」
けいの渾身の洋子の物まね。微妙に似てないのが何ともいい味だ。
「ふ、ふん。選挙の前にイメージダウンを避けたのよ。あ、は、はじめ、い、いこう・・・」
そう言って洋子ははじめの右手の袖をつまんで引っ張った。
『!!』
その時俺たち佐藤、いや、2年3組全員が同じことを確信した。
(よ、洋子がはじめに、いこう? 行くわよ! じゃなく ・・・・・ああ、とうとう、・・・・・そういうことに・・・)
とたんにクラスのあちこちでひそひそ話が始まる。
「あ、あれって」「やっぱ・・・その」「いや、まだ、まだわからんぞ」「まあ、やっぱり~?そういう」「ねね、どこまで進んでると思う。」「いやひと夏の体験的な?」「や、やめろ、俺泣くぞ。くそ~、洋子も彼氏持ちか・・・」「まあ、ぶっちゃけ、時間の問題だったし~。」「いんじゃねーの」
あんと真一もうわさ話に混じってる。おめたちは、知ってたんじねーの?
「そっか・・・・・うん、そっかそっか・・・・・」
穏やかに目をつぶって微笑むけい。けいは、それ以上口にしなかった。
そして、机に突っ伏して白目をむきそうな亮に近づく。
「亮!」
ちょっと机から顔を上げる亮。すると、けいは何事かを耳打ちした。
ガターン!!
座ってたいすを跳ね飛ばす勢いで、亮は立ち上がった。
「い、今何って」
そういってけいの方に顔を向ける。
「じゃ、HRはじまるから、座るね。」
そう言ってけいは席にもどっていった。
俺たち佐藤は、けいの背中からなぜか目を離せなかった。
気がつくと洋子もけいを見つめて微笑んでいた。
昼休み。ICT研究部にsugar Babesは集まった。決起集会だ。
「さあ、いよいよ決戦よ!」
『オー!』
「亮を生徒会長に!そして、私たちの明るい学校生活のために!団結して、ガンバロー!!」
『ガンバロー!』
なんなんだこれは・・・・。
「さて、亮、もう大丈夫よね?」
けいは微笑む。
「え、ああ、もう、だ、大丈夫だ・・・・。」
亮、なぜ、そんなに顔を上気させている・・・。
「ただいま。」
そういってドアが開く。
るみが来た。
「どうだった?」
「うん、やっぱ、文芸部さ集まってたわー。Bells。」
「やっぱりな~。」
「いい話聞けたか?」
裕一はすかさず尋ねる。そう、るみは密偵。文芸部を探りにいっていた。
「いんや。ただ・・・なんか・・・洋子とはじめの会話聞いてると・・・恥ずかしくなるわ・・・」
「ふーん、そんな感じなんだ・・・ほーう・・・」
けいは思案気に握った右手を顎につけた。
「どうかした?けい?あの二人が付き合うのなんて、俺たちからしたら、驚くことじゃないだろう?」
貴はさも当然のことのように言う。まあ、祭りでの様子(俺への嫉妬心とかその後の洋子の態度)から、まあ、既定路線のことだ。
「うんでも、なんか昨日まではそんな感じなかったじゃない?」
「んだ、いつもとかわらんかったな。」
けいとるみは不審に思ってるが、正直最近、ぬりかべ女王とその仲間のことばかり頭にあって、鈴木の様子は気にしてなかった。そういえば、かなから2人のこと報告はなかったなぁ。
ん?ってことは、Bellsにも今日まで気取られないようにしていた?
今日、この日に情報解禁してきたってことか?それも2人だけで・・・・。
裕一「でも、付き合いたてのカップル二人で壇上に登ってのは、盛り上がるかもなー」
貴「うん、そうだね。」
るみ「いっそのこと、夫婦漫才でも見せてくれれば、ええのになぁ~」
亮・けい・登『それだ!!』
けい「今日朝から急ににおわせるのなんて、おかしい!!」
亮「まったくだ。おそらく、演説会で何かするつもりだ。」
登「しかし、全くそんな気配はなかったがな・・・」
けい「きっと、お隣同士ってところを最大限にいかしたのよ!い・・・いやらい!!」
『え、なんで?』
けい「だって、きっと毎日のように、お互いの家を行き来して、相談と称して、お家デートしてたのよ!!」
亮「うん。いや、まったく!ふしだらな!!」
登「いや、別にお隣さんと会うくらいで、ふしだらなんて・・・」
裕一「登、高2の男女。幼馴染。」
貴「同じクラス。同じ部活。」
るみ「立候補者と責任者。」
けい「この状況証拠から」
亮「登はどう判断する?」
「・・・・・・お家デートを毎日してたのか!」
なんて羨ましい。俺とかななんて、変装した上に、わざわざ他市町村で待ち合わせているのに。
なんか腹立ってきた。
裕一「くそー、リア充め~!夏休み中、毎日、行き来してたんだな!あいつらは!!」
なぜか信じられないくらい怒ってる。そんなに羨ましいのか・・・・まあ、羨ましいよな。高2だもん。彼女くらいほしいのよな。・・・・ごめん。落ち着いたら、伝えるよ。うん。たぶん。
亮「まったく。生徒会長候補ともあろうものが、毎日女子と。」
あきれる亮は、手を広げて首を振る。
「え?・・・・あ、りょ、亮は、そういうのは、あ、あまり、い、い、いいとは思わない・・の?」
けいが急に顔を赤らめて言い出した・・・・。今、その話いいだろう。
「え!・・っと。・・・・ぼ、ぼ、ぼくは・・・その・・・ま、まあ・・・あれだ・・・。」
おまえもテレてどうすんだ!選挙当日だぞ。はよ、もとにもどれ。
貴「で、演説会は大丈夫かな?亮。」
「あ、そうだった。無論大丈夫さ。」
「期待してるよ、亮。佐藤の面子がかかってるからさ。」
るみはこぶしを握り、精一杯の励ましした。
「まあ、鈴木たちが何かしても、きっと亮とけいなら何とかするさ。じゃあ、おれは、ちょっと購買に行ってくる。」
そう言って、部室を出ると、足早に購買へと向かう。
昼休みも後半になると、あまり人はいない。とりあえず、自販機で紙パックのコーヒーをかう。
ウイーン・・・ガララ。
取り出し口に手を伸ばす、と同時に自販機の影から声がする。
「どういうこと?あの胸キュンラブコメは?」
自販機の横に隠れるようにして立つ彼女の前を通り過ぎ、少し間をとって床に座る。でも、決して顔を合わさずに明後日の方を向きながら彼女、柳川さんと話す。
「すまんが、まったく知らないうちに進展してたらしい。まあ、選挙には関係ないだろう。」
と言ってストローを紙パックに刺す。
「ほんとに?なら、なんで今日、あんなににおわすの?っていうか大半は付き合った、って認識よ。」
「まあ、それが狙いだろ。みんなにアピールできるからな。」
「ちょっとだいじょうぶでしょうね?」
「五十鈴さんは、僕たちが思うより、ずっとしっかりしてるよ。大丈夫だ。」
そう言って、紙パックの中身を一気に吸い上げる。
「ふーん・・・・変に信頼してるのね・・・」
「ああ、一応、元クラスメートだからな。彼女の力はよく知ってる。ああそうだ・・・・・例のもの、落ちても受かっても返すから。」
「あら、いいの?」
対面の壁を見つめたまま、柳川さんは不思議そうに答える。
「ああ、もちろん。ここまで茶番に付き合ってもらったしね。」
ずずずず。どうやら飲みきってしまった。
「あれをネタに、何かやらしいことでも、言ってくるかと思ったわ。」
「ああ、それ、いいかも、って、間に合ってるよ。」
「ふふふ。前も言ったけど3人ではいやよ。」
「マンツーマンでもやめとくよ。これ以上厄介ごとは、増やしたくないんでね。」
クシャっと紙パックを握りつぶす。
「じゃあ、応援演説、頼むよ。学級委員長。」
「ええ、まかせて。」
柳川さんは、何事もなかったようにその場を立ち去っていった。
彼女の後ろ姿を一顧だにせず、ゆっくり立ち上がり、部室へと歩みを進める。
3階へ続く階段の一段一段が、カウントダウンのように感じる。
さあ、うまくやれ。佐藤登。
いよいよ立会演説会
そして、投票です。
首尾よく五十鈴まどかさんを
生徒会長にできるでしょうか?




