53 Bonnie and Clyde
登くん、付き合っちゃいました。
だって、これ以上ひきのばしたら、人でなしだよ。
ま、やってることはサイテーだとは思うけど。
かなって女も大概だよね。自分で書いといてだけど。
帰省を終え、叔母夫婦の家へ帰宅した。Hkのお土産を叔母さんに渡すと、たいそう喜んでくれた。帰省しなければよかった。帰省前と帰省後では俺は大きく変わったしまった。
(「・・・こっそり付き合うの・・・誰にも言わないで、秘密の付き合いよ。・・・」)
その言葉がこびりついて離れない。
(「・・・だれも傷つかないわ。・・・・」)
頭の中に響く。かなの言葉。
おれは悪魔に心を売り渡した。この秘密を貫き通すことを決心した。普通の学校生活、楽しい学校生活を失わないために・・・・。
スマホをチェックする。俺とかなの連絡手段はメールだ。ラインやSNSは使わない。機密保持のためだ。絶対にばれないように、誰の目にも触れてはいけない。そこで、メールを連絡手段に選んだ。互いに架空のネット店舗名で送る。かなは「ゲームハウス K,A」俺は「ファンシー雑貨 S&N」だ。内容も暗号でつたえる。
例えば、8月15日にデートしたいとしよう。そうすると、
「お客様のご注文の品、8月15日に到着予定です。」
と送る。
Okなら「確認しました。」不可なら「17日に変更願います。」
と返事を出す。このように絶対に悟られないようにやり取りする。なんせ、まつりにもばれてはいけないのだから。まつりにばれることはるみにばれることだ。
会う場所もかなり気を遣う。学校周辺はもちろんAサブなど北区はもちろんO通りなど中央区も除外。もっぱらAT別の新saprなどが候補にあがる。北HRS市や千tos市なども候補だ。
とにかく万全の備えで臨まなければならない。なぜならこれは、他の3人への裏切り行為だ。
メールボックスには「本日到着予定」の文字。まじか今日か・・・・まあ、予定はない。思わずにやけそうになるが我慢だ。まつりにばれる。
「図書館へ行く」
と告げ、おれは叔母宅を後にした。
今日の待ち合わせは、新saprだ。駅に着くと、俺はトイレを探す。かなと会う時は、着替えるのだ。だれにも見せたことのない服に着替え、キャップを目深にかぶる。マスクをつける。服はバッグに詰めコインロッカーへ。デート用の服は、先日2人で選んだ。その時も新sapだった。
約束していた水族館の入口に彼女は立っていた。きれいなパステル調のピンク色のカットソーにロングのスカート。そしてバスケットハット。俺たちに帽子は必須だ。
「のぼ・・・、あ、佐藤くん!」
「ああ、鈴木さん。ごめん、まった?」
2人で会うときは、苗字を使う。何処にでもありふれた名前は、匿名性が高い。名前をよばなければ、特定されにくい。
「ううん。今着いたとこ。」
「ああ、よかった。」
「じゃあ、さっそく入ろう?」
「ああそうだな。」
かなはすぐに腕を組んでくる。バカップルのようだが、これも偽装だ。俺やかなが人前で絶対にしそうにないからな。かえってばれないはずだ。チケットを購入して、ドアをくぐる。小型の水槽がいくつか並ぶ回廊を観覧しながら歩く。歩く間もぴったり寄り添う。はなれるとかえって顔を確認しやくさせる。どこからどう見てもいちゃつくカップルそのものだ。まず気付かれまい。
回廊を抜けると大きな水槽が待ち受けている。二人で寄り添って魚を眺める。
「ねえ、のぼ・・・、佐藤君、今日はこの後どうする?」
「とりあえず昼を食べようか。食べながら相談したいな。」
「そうね!そうしましょう!!」
きれいな笑顔を見せるかな。正直心がときめく。最初は戸惑った秘密の会合。今ではその秘密そのものがこの関係を彩る一部なことを自覚してしまう。秘密の共有、それは仲間意識を強固なものにする。
2階へと続く階段を登る。
「あ、ねえねえ、ペンギンよ!行きましょう!!」
そう言ってかなは無邪気に笑いながら俺の腕のを引いていく。
昼食はファストフードでもファミレスでもなく、昔ながらの喫茶店だ。なぜなら、そうそう高校生が来ないからだ。ここで軽食を食べる。俺はナポリタン、かなはサンドイッチ。
「カラオケ行かない?」
かなは提案する。
「いいね。そうしよう。」
俺もそう答える。
秘密を保持するには、行ける場所など限られる。
カラオケボックスは誰にも会わずにすむ最高の場所だ。
駅から少し離れたカラオケボックスへ向かう。
もちろんぴったり腕を組んで寄り添う。目線を下げ、なるべく顔を見られないようにしながら・・・・。
「こんな風に歩くなんて、不倫カップルみたいね?」
クスっとわらうかな。
「俺にはボニーアンドクライドのような気がするよ。」
「なにそれ?」
微笑みながら俺の方をちらっと見るかな。
「・・・・犯罪者カップルさ。「俺たちに明日はない」って映画見たことない?」
「ないわ・・・」
「そう・・・・」
「見た方がいいかしら?」
「いや・・・見なくていいよ・・・」
不倫に犯罪者・・・。そう、俺たちを結んでいる共通の感情。「罪悪感」
俺たち二人にはそれがついて回る。後ろ暗いのと同時にひどく甘美だ。
秘密を共有する者同士。
「ついたわ!」
「あ、そうだな」
カウンターで手続きをして、教えられた部屋まで行く。
「はぁ~」
俺はソファーに座り込む。
誰の目も気にしなくていい場所にきたことで、ほっとする。思わず声が出る。
「ふふ、そんなに緊張してたの?」
「そりゃそうだ・・・女子とこんなに寄り添って歩いたことなかったし・・・人目も気にしなきゃなんないし。」
「ふふ、わたしはちょっと楽しいわ。」
そう言って俺の隣に座るかな。
そして、俺の方にそっと頭をよりかけてくる。
「いいじゃない・・・・かくれんぼみたいで・・・・」
「でも、おれは・・・」
「だいじょうぶよ。守り切って見せるわ・・・・」
そう言って俺に顔を向ける。俺たちはそっと口づけする。
そして、かなは俺に抱きついてくる。
「なれてきたわね・・・・」
「え、・・・ああ・・・そうかもな・・・」
そうして俺もかなを抱きしめる。こういうところでは、偽装という言い訳がなくなるので、気持ちの高揚が半端ない。
かなは会うと、必ず口づけを求めてくる。毎回だ。
まるで何かを確かめるように・・・。
すっと手を放して、
「さあ、歌いましょう!」
微笑むかな。
そうだな、歌おうぜ・・・・。
駅に向かう。
ほんとは一緒に地下鉄でもいいのだが、俺はJRを使う。二人そろって帰ると、目撃される可能性が高くなる。
改札に向かうかなは
「今日は楽しかった!佐藤君!!」
と振り返る。
「ああ。おれも鈴木さん。」
と軽く手を挙げて答えた。
足早に改札へ向かうかなの後姿を眺める。
文句なく可愛いい。俺にはほんと、もったいない。そう思う。
でも・・・・。改札を通ったかなはもう一度振り返り、手を振ってきた。
俺もそれにまた答えた。
「・・・ただいま・・・」
なんとなく大人しく帰宅する。
「あ、お兄、待っててたよ。」
「え、なんかあったか?」
靴を脱ぎながら俺は答えた。
「あ、えっとお客さんきてるの」
「へ、だれ?」
そういいながら、リビングへ向かう。
カチャ
「あ」
待っていたのは・・・。
一応、この話、題名は「俺たちに明日はない」からいただいてます。
だから、Bonnie andClydeなんですよね。
まあ、サイテーカップルだよね。
互いにエゴしかないもんな。(じゃ、書くなって・・・)
でも、当初からこの展開でした。
じゃ、この後どうするかなっと・・・。




