51帰省・寄生・既成 その13
ええ、だらだら続いた帰省編も佳境です。
でもよく考えたら、まだ夏休み序盤ですね。
「いくぞ!!」
「いいわ、元プロの力、見せてあげるわ!!」
昼のジンギスカンパーティーが終わり、みな思い思いの過ごし方している。ここ久世道場では、裕一とゆりねえのプロレスが始まった。床には合宿時に使われる、マットレスが敷かれている。俺はまつりとこの勝負を何となく見学していた。
「うわ!」
ゆりねえの華麗なドロップキックが裕一の胸を捉えた。たまらず倒れる裕一。
「あら、素人にきつかったかしら?」
「いやいや、おれも格闘技を志してる者。素人ではない!!」
と勢い良く立ち上がった。
「なら、手加減はいらないわね!」
後始末を終えて、まったりしているこの時間。窓から入る風が冷たくなってきた。Hkは周囲が海なので、夕方になってくると涼しい風が抜けていく。窓の外に目をやると、空がオレンジ色になりつつあった。
「なぁ、お兄、どうすんのさ?」
俺の横で足のばして座りこんでいるまつりがぽつりと言う。
「あ、夕飯はここで食うことになるべな・・・」
「いや、夕飯のことでねぇ。あの4人のこと。」
「・・・・」
「だまんなや。おめのことだべさ・・・」
じろりと俺の方を見るまつり。
「・・・うん・・・どうにかする・・・でも、今はその時じゃねー・・・」
「は?」
まつりは呆れかえった顔で俺の横顔をみる。
「お兄、あの4人をキープする気か?」
「・・・んなわけね。俺がそんな器用なマネできるわけねーべ?」
「そういうけどさ、お兄のやってることってそうじゃない?」
「・・・・・」
「お兄がモテるのはなんか嬉しいけどさ・・・、なんか同じ女子としては気の毒になるよ・・・」
「ああ・・・そうだよな。でも・・・こえーんだ・・・」
「こえぇ?」
「ああ、こえぇー」
「・・・・じゃ、しかたね。・・・しばらく待つわ・・・」
「そうしてけれ・・・」
「のぼる、まつりちゃん、」
御厨先生が奥からやってきた。
「あんな、おめたち、客じゃねーからな、夕飯の支度さ手伝え。」
「おう、わかった。」
俺とまつりは立ち上がると、
「あ、申し訳ないかので、わたしたちなんでも手伝いますよ!」
「あ、もちろんわたしたちも!」
聞きつけたけいと洋子がありがたいことを言ってくれる。
『さあ、仕事だよ!集合!!』
「SugarBabes!」
「SuperBells!」
鶴の一声。リーダーの招集に全員集まってきた。
裕一もプロレスを投げだして来た。
ゆりねえは目をぱちくりして俺たちを見ていた。
「・・・・・いや、こんなに人数はいらないんだけど・・・、じゃあ、カレーにするので、2,3人調理を手伝って。残りの人は庭のかたづけと、道場の片付けと掃除を・・・・。あ、食後に花火をするから、誰か買ってきてくれる?」
「あ、じゃあ、おれが花火買いにいくべ。道わかんねーべ、他のもんは。」
「あ、じゃあ、わたしも・・・」
と、るみが手を挙げる。
「そうね。したら二人にたのむわ。」
だが、その時、他の3人から殺気が走ったのに九十九先輩が気付いた。
「あ、2人じゃ手が足りないっしょ?わたしも!ね、ねえ先生!!」
ここで御厨先生はピンときたようだった。
「そ、そうよね、そうしてね、九十九さん・・・」
苦笑いをしながら、答えていた。
「まったく、少しは察しをよくせねば、2人とも!」
コンビニへの道中、先輩からの説教が始まった。
「え、俺も?」
「当たりめーだべさ!!」
「先輩、なして、邪魔する・・」
「もう、だから、来たっしょ!!」
「っち!」
わ、舌打ちしたよこの子は・・・。
「おめが、ふらふらしてるから、このざまよ!」
「したけど、先輩、うちの味方じゃ・・・・」
「いま、味方になれるわけないっしょ!!みな殺気だってるし。あー、あずましくねーなぁ・・・」
商店。コンビニじゃない。商店。俺たち3人は、ちょっとかび臭い店内に入る。
「あ、花火けっこうあるべ」
「んだな、どれくらいかえばいいべな?」
「したら、買えるだけ買っちゃいましょうか」
久世家へ向かう道中、3人でHKの思い出話をしあった。立待岬、亀田八幡のお祭りに行ったこと、函館山を登山したことなど。
久世家の門へ着く。
「あ、るみさん、ちょっと先に入っててて、飲み物買い忘れたわ。」
「え?」
「うん頼まれてたの、忘れててわ。登さん、荷物持ちお願いね。」
ちらりと横目で俺を見る。
「あ、うんはい。」
「え、じゃあ、わたしも・・・・」
「ううん、花火先にやってて。」
「で、でも・・・」
「いいよ、俺たちふたりで、まにあうから・・・」
後ろ髪をひかれるようにしながら、るみは門をくぐっていった。
るみが入るのを見届けると、先輩と俺はもと来た道を引き返す。
コ、コ、コ。靴音だけが聞こえる。
『・・・・・』
九十九先輩は黙っている。端正な横顔。きれいだ。素直にそう思う。少し微笑むような顔をしてまっすぐ目を見据えて歩く先輩。何かを決心している。そう思わせるには十分だ。道の半ばに来たころ、先輩はおもむろに立ち止まった。
「登さん。どうするつもり?」
まっすぐ道の行き先を見据えたまま、そう告げてきた。
「どうって・・・・」
俺は思わず地面に目を落とした。
「わたしね、少し怒っててるの。つーちゃんのことはもちろん、他の3人のことも含めて。」
「・・・・」
「あなたはいいわよね。好意を持ってくれてる子が、4人もいて。どの子もかわいいし。どの子にもいい顔したくなるわよね。」
「いやそんないい顔なんてしてないっしょ・・・」
言ってて自覚してしまう。俺はごまかしている。
「そう。じゃあ、あなたはやっぱりとんでもない女ったらしね。無意識にやってるなら、なおさらタチがわるいわ。」
「・・・・そんなことねーべや・・・」
「ふーん。あなたさ、自分の行動が、やさしさだと思ってるの?」
「・・・え・・・」
「あなたのやってることは、やさしさでも何でもないないのよ。」
語気が強くなってくる。
「優しいふりをした、女ったらし!クズ!!女に寄生する最低野郎よ!!!」
「・・・・・・・」
「なんでわたしたちが来たと思う?りおとるみはけいに、かなは洋子に連絡をくれたからよ。3人共同じことを連絡してきたそうよ。・・・・登はつばさを選ぶんじゃないかって。」
「・・・・・・」
「・・・登さん・・・、もし、あの3人から付き合って言われた、決められた?」
「・・・それは・・・・」
そうだ、うすうす感じていた。札駅のホームであの3人を見かけたときから。Hkでけりをつけようとしてるんじゃないかと。Hkなら、当事者だけで話がつけられるから・・・・。みんなの目がない所で本音をぶつけあえるから。でも、先輩の言う通りだ。きっと、おれはつばさがいるから、と3人共断るだろう。もし、るみと付き合ったら・・・せっかく仲良くなったかなや鈴木の奴らとは距離をとるるようになるだろう。そして、かなと付き合えばその逆だ。そして、りおとつけきあえば、佐藤、鈴木両方から離れざる負えない。皆が丸く収まるのは、許婚としてつばさを迎えいれることだ。そうすれば、少なくとも佐藤と鈴木は守られる。俺を除いて。でも、この楽しい学校生活を続けることはできる。佐藤と鈴木で張り合いながら、卒業まで毎日楽しく過ごせるに違いない。ぼっちでいることはないはずだ。
「ほんと顔にでるのね。・・・・おめさ!おなごはな、中途半端に優しくなんてしてほしくねんだ!そんなことなら、しっかり傷さつけてもらいてんだ!!」
「・・・・・」
「・・・・・好きでもねーのに・・・優しくしすぎんな、おめ・・・」
「・・・・・・・でも、おれは・・・今が一番居心地、えーんだ・・・」
「・・・そうね・・・それもわかるわ・・・だから・・・おめさが決めねばなんねんだ・・・」
「・・・・どっしたらいいか・・・・わかんね・・・」
「この・・・ほんずなし・・・」
パチン
こっちを向いた先輩は、俺の頬を平手でたたいた。
「・・・ありがとうせんぱい・・・」
先輩と俺はさっきの商店へ足早に無言で歩いた。
その時は気付かなかった、こっそりつけられていたことに。
さあ、登くんは誰かを選ぶんでしょうか?
誰か選べるほど決断力あるかな・・・・




