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㊴帰省・寄生・既成 その1



 「さあ、仕切りなおしよ!」

 祭りの後始末の後、けいは高らかに宣言した。

 「あんたの好きにはさせないよ!!」

 洋子もつづく。

 公園で解散した後、亮とはじめは俺に一瞥をくれ、さっさと帰っていった。

 そしてかなとるみは・・・全くこちらを見ようともせず、ひそひそ話ながら連れだって去っていった。

「・・・ま、いろいろ・・たいへんだったね・・・またね~!」

りおはひきつった笑顔を見せて帰った。

他のメンバーは、横目でちらっと俺を見て、ため息をついてから帰路へとついて行った・・・。

俺もすごすごと帰宅の途に就く。公園を出るとさすがに人影はまばらだった。コツコツコツと自分の足音を聞きながら考える。・・・・・・あれ?・・・・なんか俺が悪いことになってるけど・・・。みんな俺に何とかしろっていったよな~?!俺、何とかしたよな~?いや・・したのはりおなのか?おれは結果オーライだっただけ?いやいや、ダブル伊藤を入れて人間関係リセットさせたのは俺の計画だよな~・・・・。ま、仲間外れにしたといえばしたが・・・。俺はがんばったと思うんだけどなぁ~・・・・。まあ、いいや。なんかいい感じになったと思・・・・・わない!


なぜだ!


なぜだ!!


俺がこんな思いをしなきゃならん!!!

おめたち、なんなんだべ!わのおかげで、まとまったんでねっか!!

くそ、おもしくね!!

なんだぁ~?たかだか、おなご2人にキスされただけでねか。はじめも亮も、みんなも、腹立てるんだら、最初におめたちがなんとかせー!!!

 腹を立てながら帰宅し、ふて寝を決め込んだ。

 

 次の日目を覚ますとすでに昼近かった。学校で片付けの続きをすることになっていたが・・・・俺はいかなかった。誰からも連絡は来なかった・・・・。だらだらとベッドから這い上がり、寝ぼけ眼で階段を下りる。リビングに入る。当然だが誰もいな・・・あれ、キッチンに誰かいる。

「あ、お兄。起きたか?昼食う?」

妹のまつりが台所でなにか作っていた。

「ああ、なに作ってる?」

「そうめん」

「ああ、したら、食べるわ。」

「んだか。ちょっと、まっててけれ」

おれはリビングのソファーに腰を落ち着けて、つけっぱなしのテレビを見た。平日の昼時のテレビ番組はひどくつまらなかった。芸能人の誰それが結婚したとかわかれたとか、有名人に第一子が誕生。そして、政治家の不作為がいかにひどいかをことさら強調している。それらを、俺はぼんやりと眺めていた。脳裏には昨日のことが浮かんでは消え、消えては浮かんできた。

おれは悪くない!

そのたびに自分自身に言い聞かせていた。

「はい、できたよ!」

どんとリビングのテーブルに山盛りのそうめんが置かれた。

「ああ、サンキュー。いただきます。」

ずるずると二人でそうめんをすする。

「お兄、なんかあった?昨日。」

唐突にまつりは俺になげかけてきた。

「いや・・・特になんも・・・・」

「ふーん、ならいーけどさ。めずらしく昼近くまでいたからさ。最近9時前には出かけてたべさ。」

「いや、もう祭りは終わったし。なんもねーんだ。」

「んだか。でも、誰からも連絡ねーのめずらしいんでないかい?」

「そうだべか?」

「んだ。」

「ま、もう全部終わったんだー。これであずましく夏休み過ごせるべ」

「・・・ま、お兄がそれでえーなら・・」

俺はそうめんを素早く飲み込む。

「なんも、心配ねーぞ。」

「したら、帰省どうする?」

「帰省?」

「んだ、Hkさ帰るべ?」

「ああ、んだなぁ~・・・・」

「だってここはうちじゃねーべ?」

「たしかになぁ~。」

 そうここは俺の家ではない。ここは俺の母の姉、すなわち叔母の家だ。叔母は結婚しているが子どもはいない。だから叔母夫婦は俺たち兄妹のことを実の子のようにかわいがってくれた。俺が札幌に進学したい旨を伝えると2つ返事で下宿を引き受けてくれた。「お兄だけずるい!わたしも!!」となぜか妹のまつりも札幌に行くことになったが、むしろ大歓迎という感じで受け入れてくれた。父母はかなり複雑な顔をしていたが・・・。しかし、我々の将来を考えると、札幌行きはプラスと考えたのか、妹が行くのも認めていた。Hkはしょせん田舎だ。

「したら、帰省はいつにする?お兄。」

そうめんを咀嚼しながら、俺は考えた。なんか面白くないから明日にも帰省してもいいが・・・・。爆弾が・・・白い爆弾が・・・「久世つばさ」が・・・恐ろしい・・・。つばさのことだ・・・俺が帰省したらすぐにかぎつけるだろう・・・。そうなれば・・帰省中はずっと・・・ずっと寄生されるに違いない。学祭の時の剣幕から考えて・・・・・四六時中俺に付きまとうはずだ!そうなれば・・・最悪、久世家に拉致監禁といことも考えられる・・・・。どうする、帰省するか?

「・・・・自分ちさ帰るのに、なして、そんなに考え込まねばなんねんだ?」

のど越しのよくそうめんを飲み込んだ、まつりが怪訝そうに聞いてきた。

「・・・・・(んぐ)・・・それもそうだな!」

そうだよ。自分の家に帰るのに何をあれこれ考える必要があるんだ!

つばさが付きまとってきたら、親に相談すればいい。もしくは源じい、御厨の家を頼ってもいいだろう。


きっと何とかなるさ!


「じゃあ、明日にでも行くか?」

ぶふぉ!祭りはそうめんを吐き出しそうになった。

「え、明日?えらい早いな。そんなに帰りたかったんだ?お兄」

「ああ、けえりてーな~」

おれは遠い目をして呟いた。

そんな兄を妹はお化けでも見たかのようにボー然とした顔で見つめていた。

「・・・・・うん。そうしよう。・・・明日帰ろう。」

あれ、いやに聞き分けいいな。ま、いいや

「じゃあ、切符とるわ。」

「うん。まかせる。」

そうめんをすべて平らげると、俺は片付けに着手した。2人分の食器と、そうめんの大皿をシンクに持っていく。軽く水で流していると、リビングのソファでスマホをポチポチとさわるまつりが目に入った。

「あ、切符さ取ってけるのか?」

するとまつりはビクッとして背筋を伸ばした。

「あ、いや、切符はお兄が予約して・・・。あ、わたし、と、友だちに明日から帰省するから、って連絡しないとならないから・・・・。」

とぎこちない笑みをこちらに向けてきた。

「いや、なんか予定あんのか?あるんなら、別に明日じゃなく」

「いや、明日するべ!」

なぜか食い気味に決意表明された。

「わかった。切符とるわ。」

スポンジに洗剤を含ませながら、まつりから目を話した。


この決定が、ドタバタ劇の始まりとは、この時は思わなかった。

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