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③佐藤だからって、それは安易じゃない?

マイペース投稿

ま、仕事もぼちぼち忙しくなりました・・・・。

なんといも言えない気分で放課後を迎えた。

訪れる先生は皆もれなく、「佐藤が6人鈴木が5人か、3組は・・・。」と言う。

皆さんが決めたんですよね?退屈なオリエンテーションが続く授業。俺は貴の背中ごしにけいの背中をみた。

けいは俺たち以外のクラスメートともたちまち仲良くなっていた。陽キャで誰にでも話しかけられる、いい奴。オタクにも優しいギャルっという感じだ。だから、物静か?大人しい?るみも一緒にいられるんだろう。


そそくさと帰り支度をしていると、貴が振り向き

「今日はどっか寄ってくだろう?」と声をかけてきた。

「ああ、そうだな。今日の感想を話したいな。」

「じゃあ、Aサブ(地下鉄駅)のワックなんてどう?」

「ああ、そう・・」

「楽しそうな話してんじゃん?」けいが唐突に話に入ってきた。

「いやいや、そんな楽しい話じゃないよ」貴は穏やかに言った。

「うちらも、寄り道するつもり~、一緒に行こ?」

『は、』俺たち2人は声をあげた。女子から、しかも見るからに今どきのギャル系女子に「一緒に行こう」などと言われたことは今までに全くない。

「いやいや、俺たちと来てもおもしろくないよ。なあ、貴」慌てて早口気味にいうと、

うなずく貴。

「けいさんたちはもっと違う人の方が・・・」と言って、貴はいかにもな陽キャとギャルの一団に目線をやった。

「どこいく~」「ロウワンいこーぜ」「さんせー」放課後は彼らの独壇場だ。ここまで声が聞こえるくらいはしゃいでいる。

するとけいは陽キャたちから目線をはずし、こちらを見据えて言った。

「何言ってんだか。せっかく同じ『佐藤』が集まったんだから、楽しくいこうぜー!」

「ははは!そうだぞ登!」

「お、ほら、ゆういっちゃんも行く気満々だし~」

「お前誘われてないだろ。」

「あ、仲間外れはいけないんだ~。」

けいはいたずらっぽく笑う。

そして、けいは今まさに後ろのドアからこそこそ教室を出ようしていた亮に、

「にげるなぁ~、あんたも来るんだよ、りょー」

びくっとした亮は

「いや、ぼくはちょっと・・・」

「何もないでしょう?行くよ。」

「・・・・・え、え、・・・・はい。」

「るみももちろん行くよね。」

「う、うん。」おどおどした様子でうなずくるみ。


「さぁ。オール『佐藤』でゴー!」

俺たちの様子などお構いなしに、けいは楽しそうだ。


そんな俺たちを鈴木が見つめていることに、俺たちは誰も気づいていなかった。



 俺たち6人は教室をでて、学校からバス停をめざした。道中はけいのおしゃべりタイムだ。いろいろな質問を全員にしていく。

「一年ときは何組?」「え、生徒会なんだ」「え、男子は誰も部活してないの?」「私もバスケ部やめた!帰宅部!あ、るみもだよ。」



 4時をまわったワックはとてもすいていた。とはいえ、俺たちは6人だ。

座席や椅子を集めて、半ば無理やり6人で固まって座った。


「さあ、『佐藤』に乾杯だー!」テンションアゲアゲのけいは言った。

『かんぱーい』やけくそ気味に俺たちは乾杯した。


「う、うーん。」わざとらしい咳払いをして、かしこまったけいは言った。

「私たちこれから2年間同じクラスで過ごすでしょう。高校生活の大切な2年間を」

「ふぉん、しょうだね。」

貴はバニラシェイクをすすりながら言った。

「おう、それで、けいさんはなにが相談したいんだ?」

と祐一がハンバーガーにかぶりついた。

声、でかいっての。

「相談?みんなでダラダラして、恋バナとかして時間をつぶしたいんじゃなかったのか?」

亮は陽キャへの偏見が激しい。

「相談でもなければ、僕たちに声なんかかけないよ。」

貴は冷静に言った。

「まあ、そうだよなー。俺たち地味だもんな。」

すかさずおれは言う。

「こら、自分で地味とか言わないの。私は、残りの高校生活を楽しみたいの。」

唐突にけいは切り出した。


『はい?』

俺たち男子の佐藤はそろって声をあげた。


「そこで、楽しく充実した学校生活を送るために、グループを作ろうと思うの。」


『はあ?』

佐藤男子はあっけにとられた。


「えーと、互いに力を貸しあって、助け合うみたいな。」

けいはまじめな顔で言った。

「ああ、互助会みたいな?」俺はぼそっと声をだした。

「そうそう。」

「それが相談。せっかくみんな「佐藤」なんだから、私たちでグループを作ろうよ。」


『はーぁ↘』

4人の佐藤は思わず声をそろえた。


でも、存外しっかりした提案だな。たしかに、このメンツは同じ『佐藤』だが、個性豊かだ。俺を除いて。

イケメンインドア派の貴

生徒会副会長で優等生の亮

ごつい体に似合わない読書家の祐一

陽キャなリーダー(もうリーダーと認識した)けい

そして・・・?

多分まじめで清楚系のるみ


この6人で助け合えば、今後、高校生活で直面するであろう困難や課題に何とか対処できるだろう。


「ねぇ、どうどう、ドーオー?」

その聞き方は、みんな賛成でしょう? という脅迫だろう。


「いいんじゃない。俺は賛成だよ。いろいろメリットありそうだし。」

真っ先に俺は賛成した。

「へー、登は嫌がるかと思ったよ。ならぼくも。」

「おう、もちろんおれもだー!」

一応公共の場なのでそんな声でいうなよう・・・。

「うん、それは魅力的な提案だよ。ぼくも賛成だ。」眼鏡をくいっと上げながら亮はいった。

「るみもでしょ?」

「え、うん。こんなに仲間がいると心強いもの・・・・。」

「そうだね。るみさんは転校してきて間もないしね。」

「え、亮、るみさんは転校生なのか?」と俺。

「ああ、1月に前のクラスに転校してきたんだ。」

「うん。・・・そう・・・なの。」

「ほお、けいとずっと友だちなのかと思った。」と祐一がいうやいなや

「ううん。るみとは春休み中に知り合ったの。」


それであの距離感。陽キャ恐るべし。


「ね、るみさんは、」貴がいうと

「るみで・・・いいよ。」

「あ、じゃあるみ、どこから転校してきたの?」

「・・・Hk市。」

 俺はその市の耳にした瞬間、もっていたフライドポテトを落とした。俺もよく知っている、そして・・・

聞きたくない、思い出したくない市の名前だったからだ。


「へー、いいところから来たんだね。」

「いえ、何もない辺鄙な観光だけが売りの町です・・・」

るみはなぜか俺の方をちらっと見ながら言った。


「さあて、記念すべき第一回の大佐藤会議の議題は・・・・チーム名を決めます。」けいは高らかに宣言した。

『は?』

って、小会議もあるのかよ。てか、チーム名ってなんだ?いらないだろうそんなもの。


「登くーん。「いらないだろう、そんなもの」って思っているでしょう?」

げ、陽キャって、エスパーなのニュータイプなの。

「チーム名は大事だよ。ライングループの名前にもするし。」

「それじゃ、シンキングタイム~。」

しばらくして、しずかに手を挙げた亮は言った。

「チーム佐藤でいいのでは。」

「生徒会の組織じゃないんだから、もっとくだけた感じで~。」とけいは苦笑いした。

「うーん、皆「佐藤」なんだから佐藤にちなんだ名前がいいかな」頭にこぶしを当てながら貴は言った。

「よーし、おれが考えよう。佐藤は砂糖、Sugar'sでいいだろう。」声が大きいなぁ。

「祐一、安易すぎるだろう。」

「そ、そういえば、・・・昔・・・Sugarなんたらってバンドあったよね・・・。」

ぼそぼそとるみはつぶやいた。

「ああ、Sugar Babe?山下達郎がいた。」

「登、よく知ってるな」と貴

「古いバンドが好きなんだ。」

「あ、それいい!」

けいはなぜか食いついてきた。

「いや、でも・・・・」

「でもいいじゃん。」

なぜかけいにお気に召したらしい。

「しかも、単数だし。」

「じゃ、複数形にしちゃおう。Sugar Babes」

「はい、じゃあ、今日から私たちは『Sugar babes』!」


佐藤は砂糖。

佐藤だからって、それは安易すぎじゃない?


次回の投稿は、いつになるかな・・・

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