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㊱リーダー洋子

えーと、因縁話です。

リーダー同士の。

まあ、そういうことで、張り合ってます。


 むしゃくしゃした気持ちは二晩たっても晴れなかった。とうとう2日もさぼってしまった。カーテンを開けると、はじめの部屋の窓が見える。はじめの部屋に人の気配はしない。もう、出かけたのだろう。鈴木同士がお隣どうしということで、うちとはじめは赤ちゃんの頃から一緒だった。物心つく頃には常に隣にはじめがいた。中学生になるまで、登下校はいつも一緒だった。

「付き合ってんだろう~」

と、からかう輩もいたけど、全く気にせずにいた。

 はじめはとてもまじめだ。はじめの家に遊びに行くのが小学校のころの日課だった。一緒にゲームをしたり、宿題したり(主に私は写していたが)するのが日常だ。

 ああ、そうだよ。私には友だちがいない。この性格がわざわいして、女子の友だちはほとんどいなかった。自分がリーダーじゃないと気が済まない。でも、実力はからっきし。だから、はじめを必ず引き込む。実務派のはじめがいれば安心だった。けいがいても、はじめと組んでれば負けなかった。

 

 でも・・・。


 クラスの女子はけいの味方をする。私とよく似ているけど、けいの方がコミュ力が上だった。気配りも。なんというか女子としてのスキルが私より上みたい。だからクラスの女子は、けいと仲良かった。だから余計、私はけいに負けたくなかった。


 10時を回った時計に一瞥して、一階に降りる。家族は誰もいない。みんな出かけたようだ。ダイニングテーブルに「朝食食べてね。」と書置きがあった。

 なにもする気持ちにならない。用意された朝食を見ても全く食べたいとは思わない。リビングのソファーに体を横たえた。

「・・・また、嫌われたかな・・・。」

 自業自得。頭の中に四文字熟語が響き渡る。いつも、こうして友達を失っていく。幼馴染のはじめだけがいつも隣にいた。でも今日は・・・。はじめもいない。はじめにも愛想をつかされたかな・・・。  

 そう思うと、背筋が凍る。本当に一人ぼっち。視界が滲んでくる。


ピンポーン

 

呼び鈴がなる。平日の10時過ぎ。こんな時間に尋ねてくる人がいるかしら・・・・。おそるおそる玄関モニターを見る。


「え、ど、どうして・・・・・」


写っていたのは、予想外の2人。


複雑な気持ちを抱えて、玄関に向かう。おずおずとドアノブに手をかけ、ゆっくりとドアを開けた。


「あ、やっぱいた・・・」

「おっはよー」


予想外の2人の訪問に、心中穏やかでない私。

「あ、お、おはよう。どうしたの2人そろって・・・」


「・・・・」

けいは気まずそうに黙っている。

「うーん、もう、けい、ちゃんと話しなよ。」

赤っぽく染められた髪が印象深いギャル。たしか・・・たしか、りおって名前だったかな。

「ねえ、なに。二人とも。何か用・・・・わ、わたし、忙しいの!」

小さく吐き捨てるように私はいった。とたんに、けいはキッと私を睨んで・・・あれ?こない・・・・?

「ねえ、洋子さん、でいいんだよね?わたしりお。何度かあってるけどほとんど初めまして、だよね。同中だよね。話したことないけどさ。でも、けいから名前は聞いてたよ。ね、ちょっと私も入れて3人で話そうよ。」

りおは陽キャ全快の笑顔を見せてきた。

「・・・・・だめかな・・・」

けいは神妙な顔。

「・・・・・・うん・・・・」

それしか私は言えなかった。


 3人並んで近くの公園に行くことにした。私を挟んで右にけい。左にりお。北海道とは思えない暑さ。最近の夏は、本当に暑い。この暑い中、佐藤達とはじめ達は出店の準備をしているんだろう。罪悪感が半端ない。

 ちらっとけいを見る。神妙な顔でうつむきかげんに歩いている。きっと同じ気持ちなんだろう。

「洋子ってさ、」

あ、さん付けじゃない。もう友だち認定されてる。ギャルすごい。この調子で登にぐいぐい迫ってるんだろうな。

「友達少ないでしょ。」

ズキッ。一番聞かれたくないことを・・・・。

「・・・・え、っと・・・うん・・・・」

赤い髪のギャルはこっちみて、にこりと微笑んだ。

「そういうところも、けいに似てるね!」

「え・・・・」

私は目を丸くして、けいをみた。けいは気まずそうにうつむいていた。

k公園が見えてきた。

小さいころはじめとよく遊んだ公園。中学生になってもたまにはじめと来ていた。学校で何があってもはじめは私の隣に来てくれた。私をほっておいて、他の友だちを選ぶのは・・・・初めて。

やばい、泣けてきた。視界がうるんでる。

「ねえ、あそこに座ろうよ。」

小さな東屋に座る。私の向かい側にりおとけいは座った。

「ねえ、これから、SK中央公園にいかない」

唐突にりおはいった。

「え、・・・・どうして・・・」

そういうのが精いっぱい。

「の、登に会いに行くなら・・・・1人で行って・・・・」

消え入りそうな声でいうと、

「いや~、会いに行くことはいくんだけどさ、実は手伝い頼まれちゃって。」

「え・・・・」

「うん。夏祭りの店の手伝い。なんか手が足りなくなったんだって~」

と言いながら、私とけいと交互に見るギャル。

「だ、だから・・・いかないって言ってるでしょ・・・」

けいが声をあげた。

「ふーん。じゃあ、あの人たち、私が全部もらうね。登はもちろん、亮やはじめ、かなっちにるみっち。ライバルでも、友だちだからね。」

心に悪寒が走る。そう、はじめの名前が出たところから・・・・。

けいはだまって東屋の床を睨んでいる。

「楽しいだろうーなあー。登もいるし。恋敵だけど友だちになれた、かなっちにるみっち。イケメンの貴もいるし、ノリがいいあんも真一も。あ、ガタイのいいゆういっちゃんも。男子も女子も関係なく、あんなに楽しめるメンバーきっともうそろわないよ。私のまわりはいつもギャルとチャラ男ばかりだったし。」

『・・・・・・』

私もけいも黙って聞いていた。

「じゃあ、あんたたちがほしかったもの、それから、あなたたちが手に入れたかった「これから」も・・・私が全部もらうね!」

すっと立ち上がったりおは、わたしたちを見下すようにじっと見据えてきた。

「ほんとは、登さえもらえればよかったけど・・・気が変わったわ。あんな楽しい人たち、1人も渡さないわ」

そういうとりおは踵を返し東屋を後にしようとした。赤っぽく染められた髪がなびいて美しかった。そして、その神々しいばかりの後ろ姿に私は見ほれていた。彼女の姿が夏の陽光の中に飛び込もうとした時だった。

「・・・・・だめ。・・・だめよ!」

けいは叫んだ。

「あの「佐藤」は私の仲間なのよ!「佐藤」じゃなきゃだめなの!あんたは佐藤じゃないでしょ!大野でしょ!!」

あ、大野りおっていうんだ・・・。いやそんなことどうでもいい。

りおは顔だけ振り返る。

「どうでもいいじゃん!そんなこと。佐藤だろうと大野だろうと。」

私も飛び上がるようにたち上がった。

「どうでもよくない・・・・。わたしたちがここまで育てたチームよ。仲間よ!!おいしくなってきてから・・・・他人に渡さないわよ!!!」

私はりおを睨みつけた。そう、いつもけいにしているように。

ふっと、りおが笑みを浮かべた。

「・・・そうでしょう。あなたたちが作って育てたチームでしょ。仲間でしょ。もう、友だちって言葉じゃたりないくらいの。・・・・・じゃ、あーしは登に手伝い頼まれたから中央公園に行くけど。あんたらはどーすんの?」

最後は嫌味ぽく聞かれた。

「いくに・・・・」けいはぽつりというのを聞いて

『きまってるじゃん!』

息ぴったりに私はたちは叫んだ。


カツカツカツ。3人分の足音が道路に響く。地下鉄駅へ向かう道中。3人共無言。カツカツカツ。ジャリジャリ。

地下鉄駅の入口。階段を降りながら、ふいにけいは口を開いた。

「わたしさ、洋子が羨ましかった。」

「は?私のどこが?」

「はじめっていう幼馴染がいつもいて。」

「・・・え、何言ってるのけいの周りにはいつも友だちがあふれてたじゃない。」

「・・・・え、じゃあ、・・・・さっきのK公園で、私が友だちと遊んでるところ見たことある・・・・」

はっとした。確かにそうだ。あの公園は子どもたちの社交場。私ははじめとしかいかないけど。でも、けいが遊びに来ているのを・・・・見たことはない。

「みんな、学校では仲良くしてくれる。いや仲のいいふりかな。でも、放課後は誰も遊びに誘ってくれなかった。みんな、表面だけ。友人のふり。いや知り合いのふり。はじめっていう、無二の存在がいる、洋子、あんたがとっても羨ましかった・・・・」

けいはうつむきながら涙声で告白した。

「いいじゃん。昔のことはさ。大事なのは今とこれからでしょ~」

りおが明るい調子で声をあげた。

「中2であーしとゆみに出会えたからよかったでしょう?」

「・・・」

けいは黙り込んでうつむいたまま、たどたどしく足をすすめる。

あ、そうか。私は恵まれてたんだ。ぼっちじゃなかったから・・・・。けいはみんなから慕われていたけど、それは・・・みんなの佐藤けいとしてなんだ。友だちとしてのけいじゃなかったんだ。だれも友だちとしてのけいを求めなかった・・・。

恵まれてたのは・・・・・私だったんだ・・・・。

はい、りおは「大野りお」です。

彼女は佐藤でも鈴木でもない。

そういうう役どころです。

と、いうことにしておいてください。


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