㉙密談?
学校祭が終わって、代休日の話です。
平日休みの昼下がりです。
たまには、男抜きの話を・・・・・。
学校祭が終わり、月曜と火曜は代休日だった。火曜日、10時ごろ目を覚ました私はベッドからのそのそ起き上がり這いずるようにクローゼットへ行く。クローゼットを開けると古汚い、剣道の防具入れと、もう使わない児童用の竹刀が目の隅に止まる。もう捨ててもいいのだけど、あの二人との思い出があり、どうしても捨てられない。
・・・・久世つばさ。一歳年上だが、幼いころ一緒に過ごした。稽古がある日は何時間も前に行き、3人で遊んだ。稽古が終わっても暗くなるまで、いや暗くなっても遊んだ。日曜日は朝からつばさの家に行き、時には彼と一緒につばさの家にお泊りした。私のかけがえのない幸せな思い出だ。港まつりといえば3人でいき、ふ頭で花火を見た。つばさはそのころからとてもかわいくて、道行く人の目を引いていた。わたしと彼は周りからはよく兄弟と間違われたものだった。
物思いにふけりながら着替えを終える。今日は夏らしく袖のない水色のワンピーズ。スカート部分はちょっと長めだが、清楚な感じでそれがいい。小学生のころには絶対着なかったであろう、女子力高めの服。腰部分にはベルトのように白い布を巻く。後ろでリボンを作る。スタイルが強調される。でも、それくらい武装していかないと、あの二人とは話せる気がしない。JKの防具はこれなのだ。おしゃれや服装、髪型、メイク。防具をしっかり使いこなせないと、試合では痛い目を見る。そう、今日は試合なのだ。先日のかなとの1回戦は引き分けだろう。でも、今日は鼎戦。三つ巴だ。女子の戦は出会った瞬間から始まる。
部屋を出て、一階に降りると、母がソファーに座ってテレビを見ていた。
「るみ、今起きたのかい?朝ごはんは?」
「いらね。友だちと昼たべるから、昼もいらね。」
「んだか。」
家の中はHkのころと何ら変わらない。標準語で話そうという気はうちの家族にはね。洗面所で顔を洗い、髪を整える。長い前髪。「その前髪、じゃまだべさ。きらねぇのか?」と家族に言われるが、切らずに過ごしてきた。きって、顔があらわになってしまったら、私が「るい」だと気付かれると思ったからだ。あの「るい」だと気付かれれば、「清楚系かわいい女子」から「昔、男だと思っていた幼馴染」になる。幼馴染は、恋愛には・・・条件がよくない。・・・に違いない。そう思っていたけど・・・・。先日のつばさとの一件でばれてしまった。計画ではもう少し「女子」として意識させてから「実は私・・・」とネタばらしするつもりだったのだが・・・。
つばの広い夏らしい帽子をかぶり、
「したら、いってくるからあ」
と母に告げ、家を出た。地下鉄駅まで徒歩15分くらい。18J駅につき、カードで改札を通る。平日の11時過ぎ。ホームの人はまばらだ。それでも、少し離れた所に立つサラリーマン風の男の人はチラチラこちらを見てくる。「こっちさみるなや、バレバレだで?はんかくせーなー。」そう思っても顔にはおくびにも出さない。だって清楚系かわいい女子だもの。
チ、チ、チュチュチュン チュチュン。
雀のさえずるような音がし(札幌の地下鉄は車両が近づくとそういう音がする。)
「まもなく、ASBu行きの・・・」
地下鉄到着のアナウンスが流れる。
10分もせずにASBu駅につく。地下鉄から降り、エスカレーターで改札まで上がる。改札を出ると待ち合わせのアイゼリヤへ向かう。駅隣接のEONに入り、再びエスカレーター。一階から、外へ出ると・・・・。すぐ前にある、アイゼの前に、目立つ二人が立っている。1人は赤の巻髪。白いミニスカートで、紫のカットソーのギャル。もう一人はゆったりとした白いブラウスに長めのライトグリーンのフレアスカート。ゆるふわ系だ。でも目立つ。その、むねが・・・。私は振り返り、EONのガラス戸に映る自分を見なおした。「うん、よし、負けてね!」そう言い聞かせて、2人のもとへ歩みを進めた。
昼時のアイゼは混み始めていた。それでもすぐに席へ案内された。わたしたち3人が通ると、男女問わずちらりと見てくる。それくらい目立つ3人だ。
「ね、ね、あの3人・・・」「うわー、かわいいねー高校生かな?」「すっげーな、アイドルグループみたいだな」「・・・おまえ、声かけてこいよ・・」ひそひそと周りの声が聞こえてくる。でも、そんないい集まりじゃない・・・。案内されたボックス席。かなとりおは示し合わせたように、2人で座る。私は1人。孤独な戦い。でも負けるつもりは全くない。
3人でタブレットPCを見つめる。
「なにたべる~。」
妙に明るい声色で、りおはオーダーを進めてきた。
「えっと、・・・先に・・・決めていいよ・・・」
まだ、標準語で話そうとすると、間が開いてしまう。
「じゃ、かなは?」
「そうね。パスタにするわ。」
「ふーん、あ、ね、ね、るみっち~、お互いに違うピザたのんでシェアしない?」
「あ、え、と・・・・いいですね・・・」
「あら、りおさん、そういうことですか?」
「なに~?そんな警戒しないでよ~。かなっち。せっかくだから楽しく食べようよ。」
「ま、そうね。せっかくだし。じゃ、私もピザ頼むわ。みんなでシェアしましょう。」
ピザと飲み物を注文する。
「で、るみっち、「るい」のころから好きだったの?」
「りおさん、ストレートね。」
「え、だってわかりやすいっしょ。この方が。」
「・・・えっと、まあ、す、すきでした・・・」
顔が赤くなるのがわかる。がんばれ私。
「私が聞くのも何ですけど・・・どこがよかったの?」
かなはなんだか複雑な顔。うん、わたしもあなたに聞きたいは。それ。あのエピソードで惚れたんなら…チョロい女だもん。
それにしても「どこがすき」は一番聞かれたくないところ。幼馴染にとって、どこがといわれるのが、一番困る。だって、なぜか好きになる、のだからだ。あえて言えば過ごした時間。一緒に過ごした時間の積み重ねこそがその理由だろう。
「あ、えっと、・・・・いつも・・・いっしょにいた、・・・から・・・・かな」
『わ!』
二人は声をそろえて、忌々しいという顔をした。
「でた~、幼馴染の必殺技!」
「こう、それを言われると、わたしたち何も言えないでしょ・・・・」
『ふ~』二人はため息をつく。
「でもさ・・・」
りおはこちらをいたずらっぽい笑顔を向けてきた。
「何か、ドキッとするようなぁ~、決定的な出来事ってあったでしょ?」
それは今だよ。いま。いまドキッとしてるよ・・・・。どうする。あの小5の話するべきか・・・。登にその気はないとしても(そもそも女子と思ってなかった。)・・・後ろから抱きしめられて、あまつさえ一応胸(全くなかったが・・・)をさわられてどきどきしてしまったこと・・・・。でも、それをいうのは・・・どうも・・・。
「・・・・どうやら、「何か」はあったみたいね・・・「るい」さん」
いじわるそうにこちらをみてくる。かなには察せられたようだ。
ごまかすのは、かえって失礼か・・・。かなは正直に話してくれたし。
『えー、ま、まじ!』
私は、進路指導室で話した、小5での話を二人に聞かせた。
二人はかなり興奮している。
「のぼるっちがそんなキザな台詞を!」
「え、小5だよね・・・さわったって・・・ちょっとやばいんじゃ・・・」
かなは若干引き気味だ。
「あ、でも、その時のわたしは、・・・その・・・こんな感じなので・・・・」
と、私は小5時代の自分の写真をスマホで見せた。
『・・・・・・・』
なしてだ。なして、ちゃんこいころの写真さ見たら、みんなだまるんだべ?
『ぶ ひゃ、ひゃひゃひゃ!』
大笑いする二人。
「いやー、サイコー、るみっち!こりゃ「るい」だわ~」
りおは涙を浮かべて笑ってる。
「くっくっくくく、いや本人の前で失礼だけど・・・・こりゃ、元気な男の子だわ。」
一応、かなは・・・気を使っているけど・・・笑いをかみ殺してる。
わかってるけどさ・・・・、。ちいせーころは、おなごらしさゼロだ、ってことは。
でも、さすがに・・・面と向かってそういう態度を取られると・・・。りおは何度も私のスマホをみて、笑いが止まらないようだ。かなはちらっと見ては、クスクス笑う。さすがに・・・腹が立ってきた・・・
「うるせーど、おめら!」
店内に響く方言。客が一斉にこちらを見てくる。
『あ、ごめんなさい・・・』
わかればいい。今は、十分女らしいべ!おめたちに負けてねーべ。
「じゃ、本題に行きましょうか。」かなは真剣な眼差しで私を見てくる。
「そうね~。まず、ロリータ爆弾娘の許嫁の件から。」
まあ、そーだべな~。
「いいけど、長ーくなる。ええか?」
うなずく二人。
「久世の家も佐藤も、もとは山形、庄内藩の出だ・・・」
キョトンとする二人。
「えっと、そんな・・・」
「ところから?」
「んだ。したから、長くなるっていたったべ?」
ちょっとうんざりした顔。まあ、そうだべなー。でも話さねば。
久世も佐藤も山形庄内藩の出自。戊辰戦争で庄内藩は降伏したけども、久世も佐藤も函館さ来て、旧幕府軍に合流したそうだ。そんで、函館戦争に参戦。でも、まあ、負け戦。降伏した後函館さそのまま住んだそうだ。んで、久世の家は函館で剣術道場開いたんだ。なんでも、榎本軍にいたころ、伊庭八郎とか、新選組とかからも剣術習ったんだそうだ。佐藤も習ってたそうだが、剣術の方はやらんかったんだと。でも、同郷で戦友。家族ぐるみで助け合ってたみたいだど。んで、函館大火のとき、久世の家が燃えちまったんだと。お互い親類縁者もいない土地だ。佐藤の家が助けてやったんだと。道場再建した後、久世の家が、うちに娘が生まれたらおめん家さ嫁がせて、ちゃんと親戚になるべ、とその時の久世の当主がいったんだと。
「はぁ~なるほど。でそれっていつのこと?」
「まあ、4代前だから、源じいのお爺さんってきいてるど。」
「え、じゃあ、なんで今頃その話が・・・」
ま、そうだ思うべな、100年前のはなしだもんな・・・。
「・・・それがな、久世の家に女わらす、生まれなかったんだと。」
「え、じゃあ、男ばっかり!」
「んだ。」
「じゃあ、あの、爆弾ロリ娘が・・・」
「久世の初めての女の子?」
「んださ。久世の家では、はー、佐藤の家に嫁っこやるって、生まれた時から張り切ってたみてーだど。源じい、こないだ来たじい様な、久世源三郎っていうんだけども、まあ、喜んで喜んで、御厨先生の姉さんの久子師範なんか、女わらしさ生んでけれたって、今じゃ久世家のNo2だ。久世の家では誰も頭あがんね。だから、御厨先生のお願いを源じいはきくのさ。」
『・・・・・』
二人は黙り込んだ。思ったより因縁がある話だからだろ。Hkは北海道では古い町、本州に近いので奥地(札幌など)の人にはわからね話が結構ある。
「でも、佐藤の家ではどう思ってるのそれ・・・」
するどいなーかなは。まあ、きになるべな。
「あのな、佐藤の家はもう古い話だで、当人どうしの好きにさせるべ、っていったんだ。でも、源じいは「いや、先々代から遺言だで、ぜひ」ってことだそうだ。」
「すげー、ドラマみたい~」
りおは興味深々。
「だもんで、つっちゃんは、こまいときから(小さいころ)から「おめは登の嫁っこになるんだぞ」って言い聞かされて育ったの。もう、小学校さ上がるときにはもう、嫁気取りだったさ。」
『へー』
「登に近づく女の子は片っ端からつぶしてった。いやぶったり、たたいたりはしねけど。でも木刀もっておどしたらたいていのおなごは・・・」
『・・・・・』
「高学年になったらもっとわやで。」
『・・・・』
「登ってなんか分けんわかんねけど、おなごのうけいいべ」
うなずく二人。
「だもんだから、ちょっといい感じになりそうな子とか、登が好きになりそうな子とか・・・見つけ出して、脅すのさ。木刀もって「うちの許嫁だ、近づくな」って。だから、登の周りはいつも男ばっか。おなごさなれてねのはそのせいさ。」
「はあ、どっちもこじらせてんな~」
「でもあの事件のせいで、さすがに佐藤の家もこまってまってな。なんせ、告白しにくるギャルとか勝負しに来るヤンキーがくるようになっちまたからな。んで、なら、ほとぼり冷めるまで、奥地(札幌)さやるかってはなしになったの。それで許嫁の話がうやむやになれば、佐藤の家としては一石二鳥だからな。登はそのまま奥地で進学して、奥地に住みついてもええと思ってるみてーだど」
『え、じゃあ・・・・』
「んだな。札幌のおなごといいふうになれば、佐藤の家は万々歳だべ」
みるみる明るくなる二人の顔。
「・・・このあいだまではな。ほとぼりさ冷ますのに、御厨でも久世でも佐藤でも登の行先はトップシークレットだったんだ。とくにつばさには。でもな、ばれっちまった。」
『・・・・』
「つばさはこのままではすまさねーべ。なんせ「白い爆弾」だ。ばれちまったから源じいも、「しかたねー、話さ進めるか」とおもってんでねっか。」
二人は暗い顔になっていく。
「確かにねー。で、るい、じゃないるみはどうすんの?」
「え、」
「そうだよー。るみっちは、登あきらめるの~?だって、初恋の人で、初めて抱かれた人なんでしょ?」
顔が熱くなってくる。ギャルって遠慮ねーな。
「・・・あきらめるわけねーべ!・・・何年待ってた思うんだ!うちの初めての・・・」
「ちょ、シー、二人とも大きな声でいわないで!・・・周りに誤解されるでしょ・・・・」
かなに止められて周囲を見ると・・・・みなあっけにとられてこちらを見ている。顔が尋常ないくらい熱くなってくる。「はじめてって」「いや、だいたんね」「さいきんの高校生は・・・・」「あんな大人しそうな子が、もう・・・」とひそひそ話している。
「お、お待たせしました。」
げ、しかも店員さんが・・・近くに来てた・・・・。赤い顔をして、私の方をチラチラ見ている。いや、私、その、そんなことしてませんからね・・・。
「うん、じゃあ、た、食べようか・・・はははは。」
りおがカラ元気を出して空気をかえようとしてる。でも、おめのせいだぞ!もう・・・・。
「ま、とにかく許嫁の件とるみさんの気持ちはわかったわ。まあ、3人はライバルってことでいいかしら。」
「ま、そーだね。」
「う・・・うん。」
「じゃ、今日は、るみさんの分は私とりおさんのおごりね。」
「え、ちょっと、なにそれ、聞いてないよ。」
「それくらいの価値ある話ではなかったかしら?」
「・・・うん、ま、そーね。るみさんがいなければ、爆弾娘のなれそめとか聞けなかったものね。いいよ、そうしよう!」
「じゃあ、るみ、遠慮なく食べて。」
「え、あ、ありがとう。」
「なんもなんも。」
にっこり笑うりおさん。すごいかわいいな。えがお。
「あ、かなっち、るみっち、食べたらどうする?せっかくだから3人で遊ぼない。」
「いいわね。何する?」
「ボーリングとかどう?ASBuだし。それからカラオケ行こう!」
「う、うん。」
勝負のつもりで来たけど・・・。女子高生どうしだとこんな感じなのかな?おかしいな。争う3人なのに。気合入れて来たけど、互いの気持ちを確かめあうだけ。でも、それでいいのかも。だってこれから長いんだし。Sugar babesだけじゃない友だちができたんだ。ライバルだけど、こういうのっていいかもしれない。
でも、どっちかに登を取られたら・・・。
そしたら・・・。
学校祭が終わって一区切り。閑話休題ってことで、
るみ目線で書いてみました。
次回からは、夏休み編がスタートする?予定?です。




