②佐藤さん、はい!
マイペース更新・・・・
ガララァ
教室のドアを開ける。にやにやしている貴の顔。
年度当初の席だから、50音順。当たり前だが俺の前の席が貴だ。
「いや~どうだった。感想は?」
「最悪だ。この学校の教師は頭が悪いのか?」
「まあ、進路希望をもとに決めているんだからしょうがないさ。」
「お前も文系志望だったのか。情報処理同好会なのに」
「趣味と進路は別だよ。」
「君たちも『佐藤さん』だよね?」
後ろの席から声がした。
見ると、眼鏡をかけて真面目そうなそうで毅然とした態度の高校生が目に入った。
「僕は亮だ。これからよろしく。」
自信に満ちた、いかにも優等生然とした口調で彼は話した。
「俺は登。これからよろしく。」
「僕は貴です。よろしく。」
「ふふ、苗字を言わずに自己紹介できるのは『佐藤』どうしのいいところかな」
眼鏡をくいっとあげてながら亮は言った。
「そんなメリットいらないなぁ~。」
俺はため息をついた。
「いいじゃないか。さっそく知り合いが増えてさ。」
貴はにこっとして言った。
「同じクラスになったなぁ、登!」
クラスに入ってくるなり、その男子高校生は張りのある大きい声で言った。
俺たち3人は教室後ろの入口から入ってくる男子高校生を見た。
「不本意ながら・・・」俺はげんなりとして答えた。
「何言ってんだ、これはラッキーっていうんだよ。はは。」
『君、だれ?』俺以外の佐藤2人は声をそろえていった。
「おれは、祐一。佐藤祐一。登とは高1の時からの友だちさ。」
大きなガタイ通りの大きな声で祐一は話す。
「いや、図書館で時たま顔会わすだけだろう?」
「何をいう、図書館で濃厚な時間を過ごしただろう?」
「誤解を招くいいかたするなよ。一緒に自習したり、お勧めの本を紹介しあったりしただけだろう。」
「登って、そんなことしてたんだ。知らなかった」貴が目を丸くして言う。
「ネカフェとか金かかるだろう。図書館はタダだパソコンも持ち込める。土日よく行くんだよ。」
「そう、そこで・・・出会ったんだよ、俺たち・・・」
やたらしんみりとした声。
「・・・なんか誤解を与えるので言い方、気をつけてくれ、祐一」
「はは、気にするなよ。登」
声がでかい。祐一の声のせいで司書に何度も注意され、危うく出禁をくらうところだった。
でも祐一は悪い奴じゃない。ガタイはまるでラグビーのフォワードのようだが、趣味は読書だ。
中学までは体格を買われて柔道部にいたそうだ。だが彼は本当は・・・ただの帰宅部だ。
「ふーん、きみたちが男子の「佐藤」なんだ。」
突然貴の背中越しから声がした。振り返って見ると髪を茶色に染め、制服を少し着くずした、いかにも今どきの女子高生が立っていた。そしてその後ろには正反対の長い黒髪の大人しそうな女子がいた。
「あたしたちは女子の『佐藤』。あたしが「けい」。こっちは「るみ」っていうの。よろしく!」
「・・・・ああ、よ、よろしく。亮です。」
このタイプが苦手なんだろう。(俺もだけど)若干顔をひきつらせて答えた。
「よろしく!祐一だ。」
だから声でかいっての
「よろしくね。けいさん、るみさん。貴です。」
「あ、これからよろしく、登です。」
あ、ってなんだよ俺。女子に緊張するなよ俺。
「ほぉら、るみも」
「あ、よ、よろしく。佐藤るみです。」
るみさんは消え入りそうな声で言った。
あれ、何だろう。この感じ。るみ?あったことあるような・・・・。
気のせいか。
ガラー!
ふいに教室のドアがひらいた。
「はい、皆さん席について。」
「皆さん進級おめでとう。私が3組担任の御厨京子よ。」
おそらく30代、妙齢の女教師が入って来た。
忘れてた。このクラスの担任は御厨先生だった。
御厨という羨ましい苗字の上に、いろいろあって苦手なんだよこの先生。
「あ、佐藤さんもこのクラスなんだねえ。」
『はい(!)(!!)(?)(↘)(↗)(-)』ニュアンスはそれぞれちがうが俺たちは全員声をあげた。
一列全部『佐藤』。何人いても、みんな『佐藤』。
まあ、趣味で続けているので・・・・
更新は気まぐれです