⑭御厨先生は教師の鏡?
「登くん、待ってたわよ。」
御厨先生の顔はいつものように温和な笑みを浮かべていた。しかし、心なしか声に緊張感が漂っている。
「ちょっと場所をかえて、話しましょうか。ついてきて。」
先生の後をついて職員室を出る。廊下の突き当りにある進路指導室。そこで話すつもりらしい。
進路指導室はPC準備室よりさらに狭い。ちょうど半分くらいだ。壁にある本棚には大学の情報誌や過去問題集、そして、大学のパンフレット等が詰まっている。そして、狭いスペースには2人掛けのソファーが2つ、ちょっと立派なテーブルを挟んでおいてあった。
「すわって。」
「はい」
俺は促されるまま、入ってすぐのドア側のソファーに座った。先生は窓を背にして、対面に座った。
「ちょっとききたいんだけど。何のことかわかるでしょ?」
「いえ、かいもく・・・」
「ふーん。あなたはいつからチャラい男になったのかしら?」
「へ?」
「昨日の件よ。校内は、今、そのうわさで持ちきりよ。」
「あ、あー・・・・りおさんのことですか。」
「ええ、そうよ。あなたね、九十九さんとも、こないだ噂になってたでしょ。」
先生は俺をキッと見つめてきた。
「いや、あれは、その、 部活の一環というか、学校祭に向けての練習というか・・・・」
女子に慣れるミッションとはいえないよな。俺は言葉を濁した。
「じゃあ、昨日のあれも部活動なの?ギャルと放課後デートが活動内容なんて、聞いていないわ!」
御厨先生の口調がきつくなってきた。
「去年もいったでしょ?あなたの場合、下手をすれば退学よって。他の生徒なら許されることでも、あなたの場合はちがうのよ。何かのきっかけで、過去のことが知られれば・・・・」
「あ、はい。で、でも、友だちと遊ぶくらいは・・・・」
「男女2人きりはまずいわ。九十九さんの件もあって目立ちすぎよ。あなたの過去が露見してしまったら・・・・。」
「・・・・・はい、わかっています。そのことは重々。・・・・」
「いい、私はできる限り力は貸すわ。九十九さんにも頼んであるわ。」
「え、先輩にも?」
「そう。九十九さんはね、私の協力者。どんなことがあってもあなたの味方をしてくれるわ。」
「え、それじゃ、やっぱり・・・・」
「そうこの学校の生徒で、あなたの過去を唯一しってる。」
「やっぱり・・・」
「いわれたのね?」
「いえ、ただ、親戚がHk市にいると・・・」
「そう、そうなのね。それとなく知らせておきたかったんでしょうね。」
「ところで、るみさん。」
「え」
「るみさんはどう?」
「どう、と言われても・・・」
「彼女もHkからの転校生よね」
御厨先生は本棚のある方を向いてつぶやくように話す。
「あの子、気になるのよね。なにか知ってるんじゃないかって・・・・」
「おれの過去を知ってることですか?」
「わからないわ。」
「・・・まさか・・・」
「なにか話した?」
「いえ。でも、Hk市のことなんかははなしました。」
「・・・気を付けてね、何か聞き出そうとしているのかも」
「あ、はい。」
先生はこちらに顔を向け、
「じゃあ、先生の話はここまでね。実行委員会がんばってね」
そう言うと、いつもの柔和な笑みを見せてくれた。
「はい」
そういって立ち上がりドアにむかった。
ドアノブに手をかけたとき、俺は
「先生はなぜ、こんなに親切なんですか?」
振り返らずに言った。
「・・・先生だからよ。生徒が困らないように導くのが仕事よ・・・・」
「・・・・はい・・・・」
女子と2人であってただけでこれか。なんでこんなに…。高2になって2カ月。やっぱり部活動、Sugar Babesに入ったのは間違いだったのかな。
俺は進路指導室を出て、実行委員会の会場、会議室へ向かった。




