⑬きくのはちょっと、憚られること。
ギャルの生態がよくわからん。
誰か教えてください。
大野りお。赤髪ギャルのフルネーム。この名前が心にうかぶ。「りおでいい!」「迷惑じゃない!」このセリフの意味を何度も考え、寝付けなかった。極度の寝不足だ。いつもの通学路で、なんども欠伸をしながら、やっぱり考えるのはりおのこと。俺ってやっぱ、チョロいDTやろうなのかな。
「おはよう。登。」
「え、あ、おはよう。貴」
「朝から・・・・何、にやけてんだい?」
しげしげとおれを眺める貴。
「は、いや、眠いだけだよ。寝不足で・・・・」
「え・・・・登、昨日は遅かったのか?」
「え、まあ、いつもよりは・・・・いや、結構おそかったわ、(寝付くのは。)」
「・・・・・・・そ、そうか・・・・」
その時の貴は何とも言えない困った顔でおれをみてきた。
「え?なんだ?」
「いや、なんでもない・・・。ところで、今日から、実行委員会だね。」
「ああ、そうだった・・・。ち、めんどくせー。あ、でも、かなさんとだから、まあ、いいか。」
ドサッ、
貴が持っていたカバンを落とした。そして、信じられんという顔で、おれを見つめる。
「え、お前どうしたんだ?」
「え、いや、登・・・お前って実は・・・」
「え、なに?」
「いや・・・・なんでもない。」
そのあと貴は、黙ってしまった。正確には、何か小声でぶつぶつ呟いていた。
「・・・どうする・・・。・・・・・いや、しかし・・・・」
昇降口までその調子だったので
「何か、困りごとか?相談に乗るよ、俺。」
「はぁ?誰のせいだと・・・・あ、いや、大丈夫だから・・・・」
貴は静かにうつむいて教室まで沈黙していた。
放課後。
「登さん。行きましょうか。」
かなは登の手を取った。
「あ、は、はい。」
ちらりとるみの方を見るかな。
「・・・・ち、早速、行動開始か・・・」
「だ、だいじょうぶよ、るみ。実委には、亮もいるし、心配しなくても。」
「あれで・・・・?」
にやつく登の顔が、るみには腹が立って仕方がなかった・・・・。しかし、今は、なすすべなく、2人を見送るしかない、るみは、悔しさで肩をふるわせていた。
「あ、あ、とりあえず、部室行こう。部室。」
ガラッ
「すいません佐藤さんいますか~?」
突然ドアが開くと、見知らぬ女子生徒が叫んだ。
『はい!』
俺たち6人は返事をした。
「え、えー?」
女子生徒は目を丸くしている
「え、と・・・男子の佐藤さんを・・・」
『はい』すると4人が返事する。
「あ、えーと、そのー」
俺以外の男子佐藤は立ち上がって
「どの男子佐藤ですか?私は亮です。」
「僕は貴」
「俺は祐一」
おれは手を取られてなかったみぎてを恐る恐るあげた。
「おれ、登・・・・」
「さあ、どの佐藤に用事ですか?」
亮が尋ねると。
「あうーんと、先生なんて言ってたかな?・・・・あ、そうだ」
「こないだ他校のギャルにお持ち帰りされてた佐藤!」
教室に声が響いた瞬間、クラス中の目線が俺に集まった。
「は、は、はは・・・・お、俺だね・・・」
ふとかなの方を見ると、にっこり笑て、でも目は笑っていない。
「あら、登さん、仕方ないですね。先に行ってますから。」
そう言って手を放すと、一顧だにせず、教室を出て行ってしまった。
Sugar Babesの連中は、「また、お前かよ・・・」という目と同時に
男子佐藤3人からは「女?女がらみだろ?この野郎~」という、嫉妬もやっかみともとれる
ありがたいお顔を頂戴した。
「あ、君なんだ、御厨先生が来てほしいって。」
ふむ、一応女がらみか・・・・。俺は教室を出て職員室へ向かった。
ICT研究部部室。
貴と祐一、そして九十九先輩。亮は生徒会として、学校祭実行委員会に出席。
「・・・・え、ま!・・・」
「ばかばか、声がデカい。祐一。」
「だっって・・・」
貴は九十九先輩にちらっと目線を送る。
「・・・・う、うん・・・・」
そして2人はこそこそ話を進める。
「・・・・でも、・・・・」
「うん、うん・・・・・」
「・・・いや、おれは・・・・・」
「・・・ぼくだって・・・だろ」
たえれないように
「仲間外れは傷つくわ。」
としずかに九十九先輩が話しかけた。
「え、いや、そんなわけでは・・・ないんですが・・・」
「えあ、えーそうです、先輩。」
2人は取り繕おうとしたのだが、
「なにかしら。女子に聞かせられない話かしら?」
「え、なんで、わかるんで・・・」
あわててた貴は祐一の口をふさいだ。
「な、なんでもないです。先輩・・・。」
「なんでもなくない態度ね、貴君。女性のいる密室で、いかがわしい話をするのは、感心しないわね。」
「いや、そのー、いかがわしいのか?貴?」
「あ、いや~、その、実は、登のことなんですが・・・・」
恐る恐る貴は言った。
「ああ、登君の・・・・今話題の人だものね。」
「ええ、先輩もご存じでしたか?」
「玄関であれだけ目立つことをしたら、噂になるに決まってるでしょ。なんでも美少女ギャルに腕を組まれてお持ち帰りされたとか。」
「いや、その通りです。羨ましい」
祐一は素直に答えた。
「おかげで私の噂が再燃したじゃない。」
『はい?』
「九十九いいのか?」「お前のペットだろ?とられちまうぞ?」などなど、いろいろ言われたわ・・・」
「すいません・・・」
貴は自分の招いたことなので、心底すまなそうにしていた。
「で、ですね・・・・、これ、るみには黙っておいてくれますか?」
「はぁーん、そういうこと。」
「え、先輩、知ってたんですか?その、るみが登を・・・・」
「なんとなくわね。で、登と美少女ギャルがどうしたの?」
気まずい顔をしながら2人は顔を見合わせた。
「貴、説明・・・」
「あ、うん、その-、どうも登はそのギャルと・・・・」
「え、まさか、付き合うことになったの?」
「どうも、その・・・・既成事実ができたようで。」
「はぁー、まさか、その、そういう関係が・・・・」
「いや、どうも、そうじゃないかなって・・・・」
「え、本人が言ってたの?」
「いや、はっきりとは・・・・」
「まずい、まずいわよ・・・。」
「いやでも、まあ高校生ならなくはない話ですよね?」
「うん、まあ、おれは羨ましい!」
祐一は常に正直である。
「あなたたちならね。妊娠でもさせなきゃ、別にいいわよ。」
『はい?』二人は目を丸くした。
「でも、登君はまずいの、絶対に!転校どころか、退学よ。」
「付き合っただけで?」
不思議そうに祐一は尋ねた。
「油断したわ。その手の問題は起きないと思っていたのに。あんであんたたちは、登の尾行しなかったの!」
「いや先輩しないですよね普通」
あまりの剣幕に貴が言い訳のように言う。
「でも、るみさんの気持ち、うすうすしってたんでしょ?仲間なんだからそれくらい・・・・」
ドサ、かばんを落とす音がする。
ドアに目をやると・・・少しだけ開いたドアの向こうに、るみとけいが立っていた。二人ともこの世の終わりのような顔をして。
「あ、あ、るみさんにけいさん・・・お、おそかったのね?」
「う、うん、うん、いまその、祐一の恋バナを・・・・」
貴は祐一に縋りつくような目線を送る。
「ああ、そう、俺・・・・す、好きな子が・・・・いて、相談に乗ってもらってたんだ!」
祐一の大声がむなしくPC準備室に響く。
「・・・・へー・・・祐一の・・・好きな子も・・・るみって・・・言うんだ!」
前髪越しに見えるるみの目線は刺すようだった。
けいは項垂れたまま、むりむりというように右手をふっていた。
九十九は精一杯の作り笑いを浮かべ、
「え、と、るみさん、どのあたりからきいてたのかな?」
「・・・付き合うことになったの・・・・あたりから・・・・」
『・・・・・・・・・・・・』
沈黙が部室を包む。
「いや、まだ、本人に聞いたわけではないからね、ね、ね、ね」
貴は祐一、九十九、けいに目くばせした。
「そう、そうよ、るみさん、登に限ってそんな過ちを・・・・」
「でも・・・あいつ・・・女に弱いし・・・・」
「いや、そんことないぞ。あいつはきちんとわきまえるやつだ!」
「羨ましいと・・・と言ってる人に・・・いわれても・・・・」
アチャー失敗したと祐一の作り笑いは崩れてしまった。
「え、っと、じゃあ、き、聞いてみる?その、りおに・・・・」
『え、な、なにを?』みな息ぴったりに声をあげた。
「え、昨日のことをさぁ~・・・・・」
「女子トークってそこまで、きけるものなのか?」
「女子会やべー」
「わ、わたしだったらきけないわよ。やったの?なんて!」
思わずみんな九十九の顔を見つめた。
「いや、もう少し、そのぼかしてきくと思いますけど・・・・」
九十九の顔は真っ赤に染まっていった。
「しかし、もし、そうとわかったら・・・・」
貴は、るみをの方をうかがいながら慎重に言葉を選んだ。
「ど、どうするつもり・・・る、るみ・・・」
「・・・・う、う、うわー・・・・」
るみのつんざくような泣き声がPC準備室に響く。そして、るみはとびだしていった。泣き声が遠ざかっていくのがわかった。
「あ、まって、るみさん」
九十九が後を追った。
「あ、わたしも!」
「だめよ!原因を作ったあなたがいっても。私に任せて。」
けいは力なく廊下に立ちすくんだ。るみと九十九が遠ざかっていくのをただ眺めていた。
既成事実って響きが好きです。
なんか取り返しつかない感じが・・・・




