108 奥地(札幌)の風はつめたいか・・・・?
修学旅行は終わりました。
ようやく・・・。
あ、東北いかなかった・・・。
すったもんだしたあげく、元のさやに納まるように俺は札幌に向かった。帰りの特急の車内は、疲れ切っていたのだろう。静かなもんだった。皆寝ている。長期欠席していた俺は、不安が大きく、寝れないまま車窓を眺めていた。平日の車内は空いていて、みな、席をボックス型にして、座っている。俺の隣の貴は静かに寝息を立てている。対面には・・・・御厨先生が一人で座っている。
「帰りずらそうね・・・・」
目をつぶったまま、先生は話しかけてきた。
「寝てなかったんですね・・・」
「ええ・・・」
そう言うと、先生は、すっと、目を開けた。
「まあ、2か月以上も欠席、いえ、不登校だったら、学校に戻るのは不安でしょうね・・・。」
「・・・そりゃそうでしょう・・・学校には、佐藤と鈴木以外もたくさんいますから・・・変な目で見られるに決まってる・・・」
「それだけ?」
先生は、やさしいがそれでいて、なにかを決意しているような目を俺に向けたのだ。
「いや・・・もちろん・・・それ以外もあるけどさ。」
「そう・・・。じゃあ、こんどは、間違えないでね。」
先生は目をつむる。
「え、何を?」
「自分の気持ちを。」
「・・・はい・・・・」
と答えたが・・なにか違和感が・・・。ふと周りを見ると、みな、俺の方を薄目や片目で見ているのだ。
席の遠い奴に至っては、席から少し腰を浮かし、背中合わせに座るあんは、席と席のすきまからじっと見ている始末だ。俺が見回すと、全員狸寝入りを決め込んだ。
「・・・証人がたくさんできちまったな・・・・」
とつぶやくと。
「ぶふぉ・・・」
と隣の貴がふきだした。
おめ、最初から、きいてたな・・・。
久々に帰ったが、叔母も、おじも、常と変わらぬ様子で俺を出迎えてくれた。リビングではまつりも待っていた。
「修学旅行どうだった?」
まつりは何もなかったかのように俺に聞いてきた。
「ああ、楽しかった。これ土産だ。」
そういって、紙袋から少し大きめの包みをわたした。
「・・・トラピストクッキー・・・今さら・・・・これか・・・・」
包みを開けたまつりがすこし呆れ気味に言う。
「あ、でも、おめ、これ好きだったべ?」
「・・・そうだけども・・・まあ、ええわ・・・あんがと・・」
なにか言いたげだったが、長方形の缶を受け取ると、2階に上がっていった。
「疲れただろう。夕飯食べたら、すぐ風呂にして、早く寝なさい。」
おじさんは俺からのお土産を受け取りながらそう言ってくれた。
「お兄!おにい!」
はっとして、目を開けた。
「時間だよ。起きて・・・」
目をこすりながら体を起こす。
疲れていたのだろう・・・。夢も見ずに寝ていたようだ。さっきベッドに入ったような錯覚がおそう。
「朝か・・・・。」
とつぶやくと、
「早くご飯食べてって、おばさんが・・・」
いいながら、まつりは部屋を出ていった。
着替えをすませ、階段を下りリビングへ。
「おはよう・・・・・のぼるちゃん・・・・」
心なしかおばさんの声がう上ずっている。普通に起きてきて、普通に通学することが、信じられないようだ。動揺が声にあらわれていた。
「いってきます。」
リビングを出るとき、いつものように声をかける。
「はい、いって・・・らっしゃい。」
おばさんのつくり笑顔が心に痛い。目が潤んでるのがわかるだけに・・・。
地下鉄をおり、いつものようにバスへ。バス停では、見知った顔がちらほらあった。彼ら彼女らは、チラチラ俺を見て、ひそひそ話している。まあ、予想通りだ。バスをおり、通学路を歩くと、周囲はさらに騒がしくなった。いや大きな声は出さないが、明らかにこちらを窺い、何事かを話している。なんか、学校が近づくにつれ、目線が突きささる。
「おはよう、登!」
校門の近くで貴と合流した。
「ああ、おはよう。」
常と変わらぬ挨拶を僕らはした。
貴と一緒になったせいか、昇降口につくころには、周りの目線も気にならなくなった。
廊下から階段を上り、3階へ。
だが、3階につく。空気が変わるのがわかる。
何とも言えない、雰囲気が俺の周りにただよう。
「はれものか・・・」
「ま、最初だけだよきっと。さあ、行こう。」
貴について歩く。見慣れた教室表示が目に入ってきた。「2-3」。いよいよだ。
真冬とのため、教室ドアはしっかりしまっている。
貴がドアの取っ手に手をかける。
ちらりと俺を見る。
貴の目を見て、小さく頷く。
カラララ。
上品に静かにドアを開いていく。
「おはよう。」
いつものように貴は挨拶し入っていく。
「おはよう・・・」
ちょっと遠慮がちだが・・・俺も挨拶をして入った。
瞬間。
一斉にクラスメートたちが、俺を見る。
「・・・おい、登きたぞ・・・」「まじか・・・大丈夫なのかな・・・」「ねえ、登くんだよ・・・」「え、転校じゃなかったんだ・・・」「え~!だ、大丈夫だったのかなぁ~」
と何かを話あっている。男女とも久々に登校してきた人間に、興味津々なのはわかるのだが・・・。居心地の悪さは否めない。
「お~、おっはよー、のぼる!」
と、ひときわ目立つ声。
佐藤けい。われらがリーダーだ。
「待ってたよ~どう?久しぶりの学校!」
リーダーは遠慮がない。ま、その方がいいけど。
「ああ、なんか安心したよ。けいの声聞いてさ。」
「え、まじ?なに?そんなにあたしのこと慕ってくれてたの?いやーまいったなー。でも私、もう彼氏いるんで!」
「うん、知ってる。だから、そーゆーんじゃない。」
「知ってる!」
と言って、にこりと笑う。
ああ、佐藤けいは、確かに俺たちのリーダーだ、気後れしている口火を切って話しかけてくれた。
「仲間が増えて、浮かれてんの?けい。元に戻っただけでしょ?」
と洋子が口を挟んできた。
「あ、なに洋子?佐藤の話に入ってこないでよ?」
「いーでしょ。クラスメートなんだから。」
腕組みして片目だけで俺をみる洋子。
洋子もやはり鈴木のリーダーだ。俺に気を使ってくれているのだろう。
そうこうしているうちに、佐藤と鈴木が俺の周りに集まってきた。
みな、俺が居心地悪くないように、疎外感を持たないよう、いろいろ話かけてけてくる。あんや真一まで。だが、なんだろう、それ以外のクラスメートが何か冷ややかな目をしている気がするのだが・・・。
HRで、御厨先生は一言
「今日から佐藤登さんが登校することになりました。」
とだけ言って終わった。
授業もつつがなく進んだ。ただ、2カ月ブランクはけっこうシンドイ。わからないところも多い。それでもSugar BabesとSuper Bellsの面々が手助けしてくれた。ただ、やはり、それ以外のクラスメートは、ほとん話しかけてこなかった。何かひそひそと話してる様子ばかりが目につく。まあ、2カ月ぶりに登校すれば、初日はこんなもんだろう。
放課後を迎えた。
部室に行こうと席を立とうとした時だった。
「あ、登くん・・・」
伊藤さんが話しかけてきた。
「え、なに?」
決まづい顔をする伊藤さん(双子のどっちかはわからないが・・・)
「ちょっと、話したいことが・・・」
と言いかけたところで
「佐藤ーのぼるくーん・・」
と聞きなれた声出呼ばれた。大下先生が3組の教室までやってきていた。
「え、あ、はい?大下先生?」
「あーきみはー、今日からー、放課後ー補習だからねー。生徒指導室にーすぐ来てねー。」
「え!」俺は声をあげて、フリーズした。
「とうぜんだろー・・長期欠席ーだったんだからー・・・留年、したくはーないだろー?」
「・・・・」
「あ、じゃあ、ま、またこんどね・・・」
そう言って伊藤さんは小走りに去っていった。
伊藤さんの話が・・・この時聞けてれば・・・。
補習に落胆していた俺には、それどころではなかったが。
真冬の修学旅行ってありなのか?
で、もうすぐ、卒業式だ。
卒業イベントは・・・考えていない。




