99 修学旅行④
ようやく、お迎えです。
長かった・・・・。
「ただいま~」
16時。つばさが帰宅。
「ああ、お帰り。」
居候として、俺は玄関に出迎える。そして、彼女の荷物を受け取る。
「ありがと、登。」
と言って、にこりと微笑む。正直、かなり可愛い。ドキッとする。
この家に来て、もうすぐ1カ月が過ぎようとしている。
「じゃ、着替えてくるわー。」
靴を脱いで、玄関の脇にそろえたつばさは、鞄を俺から受け取り、玄関からすぐの階段を登っていった。
「さて、夕飯の支度でもするか・・・・」
居候の俺は家事をしている。これも修行だそうだ。
「ああ、登、つばささ、帰ってきたのか?」
リビングに戻ると源じいがソファーに座ったまま、俺にいった。
「んだ、つばさ、帰ってきた。」
「そうか・・・・今日は、つばさがわらすども(子ども)に稽古さつける日だったな」
「んだ、んだ。」
「登も手伝うんだべ?」
「んだぁ。いま、夕飯のしたくさ、すませたら、道場さ行って、準備するわ~。」
「したら、頼むで。」
そうして、おれは台所に向かう。久世の台所はかなり広い。大人数の調理もするから、ちょっとした飲食店と変らない。
「さてと、今日は久子さんは、尚成さんは出張でいないから、4人分か・・・何にするかな?・・・」
と冷蔵庫を開けて食材を確かめる。
「登~、あたしも、手伝う。」
着替えたつばさが台所にきた。
「いんや、いいで。俺、ひとりで」
ピンポーン
「あ、わたし、でるわ、」
ぱたぱたぱた・・・・。軽い足取りでつばさは玄関へと向かった。
野菜室の中を確かめる。玉ねぎに、にんじん・・・とキャベツはもう、かけらしか残ってないのか・・・・。買い物して来た方がいいかな・・・・。
「登」
と、源じいが台所に顔を出してきた。
「ん、なんだべ?」
「なんか、玄関でもめてっぞ」
「えぇ?なんだべな?でも、まあ、つばさならすぐ追い返せえるべ・・・・」
俺は首をひねった。
「登、ちょっとみてきてくれや・・・」
「ん、わかったで」
冷蔵庫を閉め、台所からリビング、そして廊下へ。なるほど、なんか言い争うような声が聞こえる。
廊下に出るとそれが少しずつ、はっきり聞こえる。
「だから・・そんなやつ、いねって!」「いますよね・・」「いね、いても、おめ達さあわす理由ね!!」「ああ、いるんですね。」
なんだべ?人違いか?
と、玄関が見えてくる。
玄関口には、見知った顔がのぞいていた。
思わず俺は立ち止まってしまった。
なんで・・・。佐藤でも鈴木でもないこの人たちが・・・・。
「だから、けえれっての!」
「そうはいきません。こちらははるばる札幌から来てるんですから。手ぶらでは帰れません。さあ・・・・・あ、あぁ~。ほら、いるじゃん!」
玄関口の顔を見せていた・・・柳川さんと目が合ってしまった・・・・。
「あ、ばか!なんで来たの!!」
つばさは振り返ると俺をたしなめた。
「あ、ご、ごめん・・・でも、なんで柳川さんたちが・・・・」
「え、なんで?決まってるじゃない・・・責任とってもらうためよ!」
目を細めて俺を睨みつける柳川さん。
「せ、責任?な、なんの・・・」
ふ~・・・・
柳川さんは息を一回吐き出す。
「ここじゃ、ちょっと・・・言いにくいわ・・・」
「え、なに?君たちに、メイワクかけるようなことは・・なにも・・・」
「しらばっくれるのね・・・・心当たりあるでしょ?」、
俺と柳川さんの間にいるつばさは、俺たちの顔を交互に見る。会話から、ただなることがあるのを察したのであろう、みるみる、不安げな表情になる。
「のぼる・・・なんか、したのか、この子に・・・・」
「え、いや、いろいろあったけど・・・もう、すんだことだし・・・ちゃんと解決してきたよ。」
「・・・いろいろ・・・あった・・・・・て、それ・・・・なに・・・・」
「え、っと、その・・・一言じゃ・・・長くなるからさ、あとで話すよ。」
すると、つばさは俺の方へ詰め寄ってきた。土足のまま・・・・。
「いま・・・・今、話して・・・」
「え、ほんとに長いよ、今度にするべ?な、な、」
すると柳川さんたち3人はこの隙に玄関のたたきまで入ってきた。
「・・・・ずるいのね・・・登さんは・・・いいわ、私が話すわ・・・」
それを聞いた五十鈴会長は玄関の引き戸を閉めた。
「あなた、許婚のつばさちゃんよね?なら、知っておいた方がいいわ・・・」
意味深に笑みを浮かべる柳川さん・・・・。
ことの顛末をしってるんだな・・・・。それをぶちまけに来たのか・・・・。なんで?何のために?
「・・・・この男はね・・・・」
ごくり。俺は目をつぶって生唾を飲み込んだ。俺の卑怯な振る舞い。わかっていても。他人から話されるのは・・・覚悟がいる・・・・。
「・・・・わたしの、いえ、わたしたちの弱みを握って・・・・その・・・・・」
と涙ぐむ柳川さん。
「・・・言いにくいのね・・・やなちゃん・・続きは私が・・・・」
来島さんが言葉を続けた。
「弱みをエサに、わたしたちを無理やり・・・ああ、もうそれ以上は察して・・・・ください・・・」
おれは目を見開いた。なんか違うぞ?そうじゃないよね?そういう話じゃ・・・・。
「の、のぼる・・・嘘だよね・・・・このおなごたちさ、言ってること嘘だべ?」
信じられないという顔をわかりやすくするつばさ。
「う、嘘じゃないわ・・・私たち二人を、一度に・・・いやだって・・・いったのに・・・この男は・・・」
柳川さんは、涙交じりに訴える。
「・・・え、一度に2人を・・・3人でってこと・・・ねえ、登。・・・・嘘だべ、いくら何でも・・・」
あれ?この二人、嘘は言ってない・・・確かに、弱みを握って、言いなりにした。そこはあってる・・・。
「なんで・・・なんで・・・だまってる!登!!」
あ、やべい爆弾爆発する。
「あ、いや、つばさ、確かに2人とは、いろいろあったけど、お前が考えてるようなことはない!大丈夫だ!!」
するとつばさは俺の襟を両手で捕まえ。めいっぱい目を開き、終え瞳を見つめた。
「あたしの考えてるようなこと、ってなんだ?なんだべ?言ってみてけれ・・・」
「え、っと・・・それは・・・その・・・ちょっとここでは言えないかな・・・ははは・・・」
襟をつかむ手に力入り始める。
「お、おめ、し、した・・・」
「ちょっといいかしら?」
すると2人の後ろに控えていた五十鈴会長が前へ出てきた。
「はじめましてね?つばささん。私はSK高生徒会長五十鈴まどか。じつはこの二人から相談されまして。」
俺の襟をつかんだまま、つばさは振り返る。
「だから、なんだべ、いま取り込み中だべ、おめたち、出直してきてくれねっか。」
「そーは、いきません。今聞いたことが事実なら・・・由々しきことです。生徒会長として見過ごせませんわ。こちらに引き渡してもらいましょう。いいですね。」
ぱっ・・・襟から手を放すつばさ。そして、五十鈴と相対す。
「こっちは、許婚だ。婚約者だ。おめ達こそ、けえれ。」
きっぱりと言い放った。
見た目はそっくりなつばさとまどか。背格好といい、とげのある美少女っぷりもそっくりだ。ついでに、平らなところも・・・。
にらみ合う2人。固唾を飲む俺と柳川さんと来島さん。
「いったでしょ・・・責任とってもらうって・・・それだけのことをしたのよ、かれは・・・・」
「そうはいかね。うちも、許婚だ。責任とってもらわねば・・・」
「あら、そういうことがあなたち2人に間に・・・あったのかしら?」
「っぐ・・・・」
「あら、感心感心。ふしだら関係じゃ無いようね・・・・じゃあ・・・・いいでしょ?」
と、その時だ柳川さんは、靴を脱ぎ捨てると、
「あ、えっ・・・」
俺の方へと歩み寄り、抱き着いてきた。
「じゃあ、まだ、遅くないわよね、私と、いえ、私たちとやり直しましょう!」
と言いながら・・・・。
「は、やり直す?何を?え?」
と言うやいなや、来島さんも靴を脱ぎ捨て、かけよってくる。
「そうよ、一人のものにならないで!私たち3人でまた・・・ね?」
とすがってきた。
目を見開き、ボー然とその様をつばさは見ている。
「わかったでしょ・・・?彼には責任とってもらわなきゃ。」
と腕組みして五十鈴はつばさに告げる。
「・・・・いんや・・・わたさね・・・何かあったか知んねけど・・・お、おわったことだべ!い、いま!いま!うちにいてくれてんだから!!」
顔を真っ赤にして言い返すつばさ。
「あら、それじゃなおのこと、すっきりさせてからのほうが、いいのでは?ねえ?」
「・・・・・・」
つばさは二の句がつけられない。
ガラガラララ!
その時、突然玄関の引き戸が開け放たれた・・・・。
さあ、けーるべ。
なあ、早くけーるべや。
凍れるし。




