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勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~  作者: 竹間単
【第四章】 腹筋が割れてた方がモテそう、とあいつが言っていた

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●89


 しばらくして『鋼鉄の筋肉』が町へ帰ろうとしたところで、木の上から魔王リディアがぴょんと飛び降りてきた。


「リディアさん、いたんですね」


「いるに決まっておるじゃろう。ショーンたちが遅いから、久しぶりに魔物と親交を深めてしまったぞ」


 魔王リディアの言葉に合わせたように、木の上から鳥のような魔物が飛び去って行った。


「しかもダンジョンを攻略したと思ったら今度はショーンの治療が始まるから、妾は待ちくたびれてしまったのじゃ」


「俺の治療が終わるまで待っててくれたんですね」


「そうじゃ。妾は回復魔法が苦手じゃからのう」


「へ? 苦手なんですか?」


 少し意外な気がした。

 回復魔法はそれほど難しい魔法ではない。

 自身の姿すら魔法で変えることの出来る魔王リディアともあろう人が、苦手な魔法に回復魔法を挙げるのは違和感がある。


「妾は強すぎて怪我をしないからのう。回復魔法を練習する機会が無いのじゃ。そもそも使う予定も無いしのう」


 確かに。

 これまでの旅で、魔王リディアが小さな傷すら作っているところを見たことがない。

 俺はこの町ですでに二度も死にかけたというのに。


「はあ。やっとショーンの治療が終わったと思ったらギルド内で喧嘩が始まり、出て行くタイミングを逃してしまった。無駄な時間を過ごしたのじゃ」


 そうだった。

 『鋼鉄の筋肉』は、マーティンとルースは、決別してしまった。


「……俺のせいです」


「あの喧嘩がか?」


 魔王リディアは片眉を上げた。


「はい。俺がユニークスキルを使ったせいで、こんな結果になってしまいました」


「……あの様子なら、遅かれ早かれこうなっておったじゃろう。ショーンのせいではない」


 魔王リディアは俺を励ましているのではなく、ただ事実を告げているだけのように見えた。

 それでも。

 今回のことが決別の時期を早めてしまったことには違いない。


 もしも俺が別の未来を掴み取っていたら、こうはならなかったはずだ。

 そもそもユニークスキルを使わなければ、この未来にはたどり着かなかったかもしれない。

 たとえば、あのときマーティンを含めた全員で逃げていたら……。


「もしもの話は意味がないのじゃ。未来は一つしか選べんのじゃから」


 ……その通りだ。

 いくら俺がもしもの可能性を考えたところで、今から「現実」を「選ばなかった未来」に変えることは出来ない。


「マーティンさんも、ルースさんも、お互いのことを仲間として信頼していたのに……どうしてこうなっちゃったんでしょうね」


「価値観が違えば決別することもある」


「それはそうですが……価値観が違っても、一緒にいることは出来たはずです」


 魔王リディアは俺を諭すように、それこそ長く生きた老人のように、ゆっくりと言葉を紡いだ。


「人生における時間は限られておる。時として、取捨選択をしなければならんものじゃ」


 人生における時間。

 人間の寿命は、長いようで短い。

 取捨選択しなければ、大切なものを取りこぼしてしまうほどに。


「マーティンさんはギルドのために時間を使うことを、ルースさんは家族のために時間を使うことを、選んだんですね」


 俺の言葉を聞いた魔王リディアは、柔らかく微笑んだ。


「どちらも間違いではない。ただ、大切にするものが違っただけじゃ」


 それなら……彼らはきっと分かり合える。

 今は喧嘩のようになったとしても、これから別々の道を歩もうとも、最後にはきっと。


 おじいちゃんになった二人が陽の当たる縁側で笑い合う。あのときはお互いに若かった、と。

 今日の決別がそんな未来に繋がることを、切に願う。


「……そういえば。このダンジョン内の呪いのアイテムは何じゃった?」


 俺がしみじみとしていると、魔王リディアが悪戯っぽく聞いてきた。


「呪いのゴーグルでした。異性にモテなくなるアイテムらしいです」


 呪いのゴーグルの実物を見せようとしたが、どうやら俺はゴーグルを装着していないようだった。

 俺の治療をする際に『鋼鉄の筋肉』の誰かが外したのだろう。


「ダンジョン内にあった呪いのアイテムは一つじゃったから、このダンジョンも空振りじゃのう」


「そうですね……」


「辛気臭い顔をするでない。そうじゃ、空腹ゆえに暗くなるのじゃ。こんなときは、ゴング豚を食べに行こうではないか。今度は一人で豚一匹を平らげて、フードファイターの底力を見せつけてやるのじゃ!」


「俺はフードファイターじゃありませんよ……」


 魔王リディアは俺を励ますように、背中をバシッと叩いた。





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