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勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~  作者: 竹間単
【第三章】 困っている女の子は助けるべし、と誰かが言っていた

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 魔王リディアは、まだ町の入り口にはいなかった。

 いつ帰って来るかも分からないので、俺とヴァネッサは先に冒険者ギルドへ行くことにした。


 ヴァネッサが冒険者ギルドにやってきたのを確認したギルド受付の女性は、ホッと胸を撫で下ろしていた。

 本気で俺のことを、女冒険者を弄ぶクズだと思っていたらしい。


「おかえりなさい。早かったですね」


「ただいま。これ、巨大グモの目玉よ」


 ヴァネッサに促されて、俺は背負っていた巨大グモの目玉を受付の机の上に置いた。

 六個の目玉がごろんと飛び出す。


「すごい。綺麗な状態の目玉ですね!」


 さすがはギルドの受付。

 目玉を気持ち悪がるどころか、嬉しそうな声を上げた。


「大抵は戦闘の際に傷が付いてしまって、全部は引き取れないんですよ……うん、うん、これも綺麗な状態ですね」


 ギルド受付の女性は目玉を一つずつ、様々な角度から観察していく。

 そのたびに巨大グモの目玉と目が合って変な感じだ。


「はい。六個すべて引き取ります。クエストおつかれさまでした!」


 すべての目玉を確認したギルド受付の女性は、俺とヴァネッサに向けて満点の営業スマイルを見せた。


「あとこれ、クエストのついでに手に入ったんだけど……引き取ってくれるかしら?」


 ヴァネッサが袋に入れていた毒蜂の針を取り出した。

 ギルド受付の女性は、すぐにこれも状態の確認をした。


「毒蜂の針ですね。はい、引き取ります」


 そして毒蜂の針を専用の袋に入れながら世間話を始めた。


「最近、町の近くに毒蜂が出て困ってたんですよ。一匹減らしてくださって助かりました」


「毒蜂退治クエストは出てないの?」


「出ているには出ているのですが……まだ毒蜂の巣がどこにあるか分からないので、巣を探すところからになっちゃうんですよね。そうなると割が悪いので、誰も受けてくれなくて……」


 強い冒険者なら毒蜂の巣退治はすぐに出来るが、巣を探し出すとなると、どうしても時間がかかる。

 それならば誰でも、別のクエストを短時間で済ませることを選ぶだろう。


「町の人が危ないっていうのに、誰もクエストを受けてくれないなんて」


「冒険者にも生活がありますからね。それはヴァネッサさんが一番よく理解しているじゃないですか」


「それはそうだけど……ううん、その通りね。誰だって生活費を稼いで生きていかないといけないもの。確実にお金が手に入るクエストを選ぶのは仕方がないわ」


 会話をしながらもギルド受付の女性は換金を済ませたらしく、机の上にはクエスト報酬が置かれていた。



   *   *   *



「わあっ、こんなにクエスト報酬をもらったの初めて!」


 報酬を受け取ったヴァネッサは、子どものように報酬の入った袋を抱きしめてスキップをしている。


「良かったですね」


「うん! ……でも、なんだかあたしが三分の一も報酬をもらうのは悪いような気がしてきたわ」


 巨大グモの目玉を六個も綺麗な状態で引き取ってもらえ、その上毒蜂の針の売却額も上乗せされたため、クエスト報酬は当初の予想よりも高いものとなった。

 金額が大きいこともあって、ヴァネッサは報酬をもらうことを躊躇しているのだろう。


「ヴァネッサさんが言ったんですよ。正当な報酬は受け取れって」


「そうだったわね……でもあたし、何もしてなくない?」


「道案内をしてくれたじゃないですか」


「そう……ね?」


 ヴァネッサはイマイチ納得していないようだったが、俺だって約束以上の金額をもらうつもりはない。

 きっと魔王リディアも同じことを言うだろう。


 冒険者ギルドでクエスト報酬をもらった俺たちが町の入り口に戻ると、そこにはすでに魔王リディアがいた。


「やっと戻ってきたか」


「リディアさん、おかえりなさい。野暮用はもう終わったんですか?」


「当然であろう。妾を誰だと思っておる」


 魔王リディアに近付くと、彼女の後ろには大きな袋が置かれていた。


「しかし、荷物を運び出すのに時間がかかってしまった」


「ちなみにリディアさんの野暮用って何だったんですか?」


「ちょっくら近くのダンジョンに潜ってきた」


 そうだったのか。

 魔王リディアはちょっくらダンジョンに潜ってきたのか。


「ダンジョンはちょっくらで行くものじゃないわよ!?」


 俺が納得している横で、ヴァネッサが驚きの声を上げた。

 確かにダンジョンは一人でふらっと潜るものではない。

 しかし、ここにいるのは魔王リディアだ。

 「普通」は通用しない。

 というか。


「近くにダンジョンがあったんですか?」


「あんたもあんたで平然と受け入れ過ぎよ!?」


 ヴァネッサが、魔王リディアのめちゃくちゃ具合に慣れてしまった俺にツッコんだ。

 しかしこの場にいるのは、魔王リディアと、彼女に慣れた俺だ。

 よって、ヴァネッサのツッコミを肯定する人物はいない。


「ダンジョンはあったぞ。ただし呪いのアイテムが無いようだったからスルーしておった」


「それなら俺は用のないダンジョンですね」


「そうであろう?」


 俺たちの旅は、呪いのアイテム探しの旅だ。

 そのため呪いのアイテムが置かれていないダンジョンに用は無い……はずなのに、どうして魔王リディアはダンジョンに潜ったのだろうか。


「ダンジョンにあったアイテムと、ボスモンスターを倒した討伐報酬じゃ」


「気軽にダンジョンに潜っただけじゃなくて、クリアしてきたのね……たった一人で……」


「妾は魔王じゃからな」


 ヴァネッサはツッコむのをやめて、頭を抱えることにしたらしい。

 魔王リディアを見ながら、片手を自身の頭に当てている。


「もしかしてリディアって……本物の魔王なの?」


「最初からそう言っているであろう」


 ヴァネッサは天を仰ぎ見た。

 そして空に向かって諦めと疲れの入り混じった溜息を吐いた。


「リディアがめちゃくちゃ過ぎて、すべてを受け入れてしまいたくなるショーンの気持ちが分かったかもしれないわ」


「剣に防具に、アイテムも色々ありますね。さすがはリディアさんです」


「それにしたって、あんたは受け入れ過ぎよ!?」


 大きな袋を漁って、魔王リディアがダンジョンから持って帰ってきたアイテムを確認する俺の肩を、ヴァネッサが叩いた。





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