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勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~  作者: 竹間単
【第二章】 美少女と、善人の村で愛を知る

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●28


 俺たちはダンジョンを進んでは、宝箱を開けていった。

 中には当たりと呼んで良いアイテムもあったが、残念ながら俺たちが探しているのは、呪いのアイテムだ。

 それに、こんなに簡単にダンジョンを進んでいるのに当たりアイテムを持って行ってしまうのは、今後このダンジョンにやってくる冒険者に悪いような気がしたため、遠慮しておいた。


「ショーンは、魔物と人間の和解が可能だと思うか?」


 ふいに投げられたこの質問が、魔王リディアがダンジョンの中でしたかった話だと直感で分かった。


「……難しいと思います。人間は魔物を殲滅しようとしていて、魔物は人間を殲滅しようとしてますからね」


「妾も難しいと思っておる」


 和解が可能なら、とっくの昔にしていたはずだ。

 過去には平和主義者を中心として、人間と魔物が和解をしようとした動きもあったようだが、そのすべてが失敗に終わっている。


「しかし個人間で考えた場合、和解……共存は可能だと思うか?」


 人間と魔物の戦いは、どちらかが滅ばないと終わらない気がする。

 状況はもう、そこまで進んでしまっているのだ。


「種全体としての共存は無理でしょうが……個人間なら、可能な場合もあり得ると思います。それでもすごく難しいとは思いますが」


 何しろ人間にとって魔物は、幼い頃から敵だと教わってきた相手だ。

 きっと魔物側もそうだろう。

 そうやって長年敵だと教わってきた相手、しかも現在も種全体で敵だと認識している相手との、共存。


 かなり難しいことだと思う。


 しかし、どこにでも例外はいるものだ。

 だから共存している人間と魔物も、この世界のどこかにはいるかもしれない。

 例えば……俺と魔王リディアのように。


「では、魔物と人間の間に愛は芽生えると思うか?」


 愛は……どうだろう。

 人間と魔物では、種族が違う。

 しかし他族種に恋をする性癖があるという話も聞いたことがある。

 恋が先にあり、恋をした相手が他種族だった場合もあるだろう。


「リディアさんは人間の男に恋をしたことがあるんですか?」


「妾の話ではない」


「じゃあ誰の……もしかして」


 話の流れがイマイチ掴めなかったが、そうか、ここに繋がるのか。

 俺は納得しながらも、確認のために答えを魔王リディアに託した。


「半年前に連れ去られた村娘が今も元気に生きておるのなら、その可能性はあるじゃろう」


 魔王リディアが話題にしているのは、俺たちが救出する予定の村娘ヘイリーの話だ。


「それならそうと、家族に話せば……」


「自分の娘を魔物にくれてやろうと考える親は、果たしてどれだけ存在するかのう」


 それはそうだ。

 人間と魔物の共存がいかに難しいか、再確認したばかりだ。


「さらに小さなコミュニティで暮らしている状態で、魔物と結婚するという、いわば禁忌を冒したら……その者の家族はどうなる」


「…………村八分ですかね」


「あの小さな村で村八分になるということは、死を意味するとは思わぬか」


「そう、ですね」


 ほぼ自給自足で暮らしているあの村で村八分にされたら、食べ物を得ることすら難しいだろう。

 土地持ちの村人に山の所有権を主張されて、山に入らせてもらえないかもしれない。

 森にも入らせてもらえないかもしれない。

 入手した肉や農作物に関しても、分けてくれないどころか売ってもくれないかもしれない。

 自分の畑だって、夜のうちに村の誰かに滅茶苦茶にされてしまうかもしれない。


 そうなった場合、村を出るしか生き延びる方法はない。

 しかし一般人がいきなり旅に出て、無事でいられる確率はかなり低い。


「つまり妾は、あの二人は駆け落ちをしたのだと考えておる」


 ヘイリーが魔物と駆け落ちをした場合、その事実を村人に知られるとヘイリーの家族が村八分にされる可能性が高い。

 それを防ぐためにヘイリーの父親は、娘は魔物に連れ去られた、と嘘を吐いている。

 ヘイリーの父親は愛妻家でもあるらしいから、妻を守るための行動だと考えると、ない話ではない……とは思うが、引っ掛かるのは昨日のあの態度だ。


「あのお父さんは、本気で娘のことを心配してるように見えましたよ?」


「敵を騙すには味方から、と言うであろう」


 ……確かに。

 あの人に演技が出来るとは思えない。

 それならいっそ本当に魔物に連れ去られたと思い込ませた方が、家族を村八分の危機から守れるかもしれない。


「それにあの父親なら、駆け落ちの計画が分かった段階で、娘を自分の監視下に置くとは思わんか?」


「ああ……あのお父さん、娘のことを溺愛してましたもんね」


「誰しも愛が絡むと何をするか分からぬものじゃ。あの父親も、娘も」


 魔王リディアは物知り顔で頷いている。

 しかしこの考察には、どうしても気になることがある。


「駆け落ちなら、普通もっと村から離れませんか?」


「その辺の事情は妾にも分からぬ。本人たちに聞いてみないことには、な」


 そうだった。

 ダンジョンで呪いのアイテムを見つけたら、本人たちのところへ話を聞きに行かないといけないのだ。

 村を出たとき以上に、気が重い。





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