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勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~  作者: 竹間単
【第七章】 この世界は黒と白のどっちだと思う?と同胞が言っていた

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●145


「倒したんですか……?」


「なによそれ。最初からショーンが長剣で戦えば良かったじゃない……」


 長剣を振ってボスモンスターの血を払い落とすと、呆けるヴァネッサに長剣を返した。


「最初からは無理ですよ。ヴァネッサさんの攻撃で怪我をする前はボスモンスターの動きが早かったので」


「キツネくーーーんっ!!」


 大声に驚いて振り向くと、ドロシーが嬉しそうにボスモンスターを抱き締めていた。


「これからは私と一緒に旅をしましょうね! でもキツネくんは毒蜂さんたちを燃やした悪い子でもあるので、反省の意味も込めてしっかり働いてもらいますよ」


 ふと拍手の音が響いてきた。

 戦闘を見守っていたリディアだ。


「まさか大した怪我もせずにボスモンスターを倒すとは思わなかったのじゃ。怪我はボスモンスターの攻撃を避けた際に、ショーンとヴァネッサが擦りむいた程度か?」


「あっ、ヴァネッサさんすみません。俺のせいで怪我を……」


「いいえ。ショーンのおかげで大怪我をしなかったわ。あの尻尾に当たっていたら擦り傷どころじゃすまなかった。だから擦り傷に関してはチャラよ」


 ヴァネッサはピースサインをしながら俺の失態を許してくれた。


「ところでショーンよ。尻尾うんぬんは、どうしてそう思ったのじゃ?」


 リディアに問われて、首を傾げる。

 どうしてと言われても理由はない。

 強いて言うなら、勇者パーティーでの経験からくる勘だろうか。


「一応ダンジョン経験は豊富なので、危険なものは察知できるんです」


「えっ!? ショーンってダンジョン経験豊富だったの!? 通りで強いわけね……」


 俺が荷物持ちをやっていたことを知らないヴァネッサが誤解をしたようなので、慌てて否定する。


「ダンジョン経験豊富と言っても、俺は荷物を持って歩いていただけです。荷物持ちだったので戦闘には加わっていません。だからこの勘は、生き延びるための危機察知能力のようなものです」


「あたしからしたら、荷物持ちでもすごいわよ。ダンジョンに潜る時点で上澄みの冒険者だわ」


「そう……なんですか?」


「自分の身を守れない冒険者はダンジョンから帰って来られないでしょ。ダンジョンには潜らず地上でクエストを受注するだけの冒険者の方がずっと多いわ」


 今までずっと勇者パーティーにいたこともあって、他の冒険者がどういった行動をとるのかは知らなかった。

 ヴァネッサによると、ダンジョンに潜る冒険者は少数派らしい。

 考えてみると『鋼鉄の筋肉』のような巨大ギルドに所属している場合は、安全にダンジョンに潜る機会もあるだろうが、数人の冒険者パーティーで潜るにはダンジョンは危険すぎる。

 ……最近は隣にリディアがいるため忘れていたが、ダンジョン内にはボスモンスターがうじゃうじゃいるのだから。


 今思うと、勇者パーティーは強かったのだろう。

 ダンジョン内をサクサクと進んでいた。


 因果の世界で視た勇者パーティーがボスモンスターに負ける未来は、どれも過信による油断が原因だった。

 俺と決別した後に勇者と出会ったダンジョンでは、強いボスモンスター相手にろくな装備やアイテムを揃えずに挑んだことが敗因だ。


 勇者たちは俺と別れる際に、余分なアイテムはいらないと俺に持たせて別れた。

 予備のアイテムはいくらあっても困ることはないのに。

 これまで負けた経験が無かったせいで、率直に言うなら、彼らは調子に乗ってしまっていた。


「あの経験がいい薬になっておると良いのう」


「え? ……あ、はい」


 リディアに心を読まれるのは久しぶりな気がする。

 ……口に出していないだけで、頻繁に読まれている可能性もあるが。


 何はともあれ、ボスモンスターを倒したからダンジョンはクリアだ。

 ちなみにダンジョン内で見つけた呪いのアイテムは、ハズレだった。


 だから俺は……一旦横に置いていた問題と向き合わなければならない。

 被検体Xと研究所の問題に。


「リディアさん。お願いがあります」


「また変装か? それとも魔物化か?」


「いいえ。俺は自分の目で確かめたい……確かめないといけないものがあります。だからリディアさんに連れて行ってほしい場所があるんです」


 俺は、被検体Xの研究が行なわれていた現場に行かなければいけない気がする。

 すでに研究所が全焼していたとしても。


「残念じゃが、妾は一度行ったことのある場所にしか転移できん」


「また嘘でしょう?」


「さて、どうじゃろうな」


 俺とリディアはしばらく無言で見つめ合っていたが、やがてリディアがフッと息を吐いた。


「そう怖い顔をするでない。次の目的地をショーンの希望する場所に設定すること自体は構わん。みんなで歩いて行こうではないか」


 俺は、ボスモンスターとモフモフと戯れるヴァネッサとドロシーを見た。

 俺の問題に二人を巻き込んでもいいものだろうか。


「妾の見解じゃが、ヴァネッサもドロシーも、嫌なものは嫌だと言えるタイプじゃと思うぞ」


 全焼した研究所に危険は無いはずだ。

 その代わり、ヴァネッサとドロシーが得るものも無い。

 このまま二人と一緒に行動する場合、二人には何も無い場所へと足を運ばせることになってしまう。


「……それでもいいか、聞いてみましょうかね」


 俺はヴァネッサとドロシーの元へと向かうと、一緒になってボスモンスターをモフモフと触ってみた。

 気付くと隣でリディアもモフモフしていた。


 このまま四人で旅を続けることが出来たら楽しいだろうなあ。と、つい呑気なことを考えてしまった。





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