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勇者パーティーから追放されたけど、最強のラッキーメイカーがいなくて本当に大丈夫?~じゃあ美少女と旅をします~  作者: 竹間単
【第七章】 この世界は黒と白のどっちだと思う?と同胞が言っていた

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●144


 俺は短剣片手にボスモンスターに向かって行った。

 攻撃が目的ではないため、近付きつつも攻撃の回避に集中する。


 炎攻撃をかいくぐってボスモンスターに近付くと、今度は噛みつき攻撃が襲ってくる。

 ボスモンスターが巨大なせいで迫力があるが、ただの噛みつき攻撃だ。

 落ち着いて対処すれば避けることが出来る。


 数の減ってしまったドロシーの毒蜂も、ボスモンスターの周りを飛び回ってかく乱している。

 毒蜂がボスモンスターに攻撃を与えることは難しいようだが、ボスモンスターは毒蜂を鬱陶しそうにしている。

 その隙にヴァネッサがボスモンスターの背後に回った。


「よし、タイミングを見計らって…………え?」


 ヴァネッサがいい位置取りになったところで、ボスモンスターが姿を消した。

 全身が透明になってしまったのだ。


「うわあ、透明になれるモンスターみたいです。一緒に町へ行けますよ!? 私、ますますキツネくんが欲しいです!」


「それどころじゃないわよ!?」


 そう、それどころではない。

 姿が見えないのでは、不意打ち攻撃を食らってしまう。


「俺が攻撃を続けて注意を引きつけます。あとは作戦通りに。自分の身は自分で守ってくださいね!」


「ショーンくんが自分の身は自分で守れと言うんですね」


 確かに先程助けられたくせにどの口が言うんだって感じだが。

 でもまあ、回避を頑張ってほしい。


「俺が攻撃を続けることで、ボスモンスターの輪郭が分かるはずです。砂埃に注目してください」


「毒蜂さんたちも飛び回らせますね。何かにぶつかったら、それがキツネくんです」


「なるほど。任せて!」


「しつこいようですが、尻尾に注意してくださいね」


 ここまでボスモンスターは尻尾での攻撃はしていない。

 それでもあの尻尾が危険なことは分かる。


 この間も俺は攻撃を続けているが、ボスモンスターは俺に対して攻撃を仕掛けてはこない。

 きっと何らかの制約があるのだろう。

 たとえば透明になっている間は炎を出すことが出来ないとか、噛みつく際には姿を現す必要があるとか。

 いや、実はそう思わせることが目的で、透明なままでも攻撃が可能かもしれない。


 どちらにしても、俺は攻撃を続けるまでだ。

 ボスモンスターには結構な確率で俺の攻撃を避けられているが、気にする必要は無い。

 動き回って砂埃を立てながら、囮としてボスモンスターの怒りを買い続ける。

 これが今の俺に求められている動きだ。


「…………ここだっ!」


 そのとき、ヴァネッサがボスモンスターに長剣を振り下ろした。

 攻撃を受けたボスモンスターが姿を現す。

 ボスモンスターは身体をひねり、尻尾をヴァネッサに当てようとした。


「尻尾に注意!」


 ヴァネッサが飛び退いて尻尾攻撃を避けた。

 ボスモンスターは一撃で倒れることは無かったが、かなり深い傷を負っている。

 もう透明になることは出来ない……と信じたい。


「ごめん! 仕留めそこなったわ」


「大丈夫です。怪我を負ったおかげでボスモンスターの動きが遅くなりました。ドロシーさん、また毒蜂だけで時間稼ぎをお願いします」


「任されました!」


 ボスモンスターの周りを飛んでいた毒蜂が、ボスモンスターの目を狙って集中攻撃を始めた。

 ボスモンスターは目を刺されてはたまらないと、毒蜂を燃やしている。


 この隙に俺はヴァネッサに近付くと、持っていた短剣を渡した。


「え、なに……?」


「武器を交換しましょう」


 そして驚いているヴァネッサから長剣を受け取ると、ボスモンスターの背中に飛び乗り、後ろから首に長剣を突き刺した。

 確かな手応えを感じた後、首から長剣を引き抜くと、ボスモンスターから大量の血が吹き出した。

 すぐにボスモンスターの背中から飛び降りたが、吹き出した血が顔についてしまった。

 袖口でごしごしと顔を拭う。


 一方、喉を貫いたためボスモンスターは叫ぶこともなく倒れた。

 そして、動かなくなった。





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